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1章7 誘い

 リオンが『ニルヴァーナ』学園に転校して、5日が過ぎていた。


すっかり彼はクラスメイト達と慣れ、友達も出来ていた。尤もリオンに友達が出来たのは、私が協力したからだった。

積極的にリオンを連れて、男子生徒達に話しかけて友達作りのきっかけを作ってあげた。

私は魔力がゼロでも、話術は心得ている。

前世ではイベント会場でアルバイトをしていたので、コミュニケーション能力に私は長けていたのだ。




――放課後


「リオン、もうすっかり学校に慣れたみたいね」


帰り支度をしているリオンに話しかけた。


「うん、そうだね。ユニスのおかげだよ、ありがとう。友達なんて、必要ないと思っていたけど……やっぱりいると、いいものだね」


リオンが笑顔を見せる。


「そうでしょう? やっぱり友達は必要よ」


ゲーム中のリオンはいつも孤独で1人だった。けれど、今の彼には友人たちがいる。

これだけでも大分、彼の闇落ちを防げるのではないだろうか?


「ところでユニス。明日、僕の家に来ない? 是非、招待したいんだ」


「リオンの家に?」


「うん、母様がユニスに会ってみたいって言ってるんだ。だから遊びに来てもらいたいんだよ」


ゲーム中では、リオンの母親は病弱だった。

この世界にはヒロインのように神聖魔法を使える者がいた。けれども、その人数は希少で万能では無かった。


当然リオンの母親も病を診てもらっていたけれども、ただ命を長らえるだけで健康状態は良くならず、1年の半分は療養生活をしていた。


屋敷が火事になった際は、もう自分の力では歩くことが出来無いほど弱っており、車椅子生活をしていた。

使用人によって、母親は命が助かったけれども夫はリオンを助けるために死んでしまう。愛する夫を失った母親は、醜い火傷を負ったリオンを酷く憎み……彼が14歳の時に病が悪化して亡くなる……そんな気の毒な女性だった。


リオンの母親が亡くなった数年後に、この病の原因が分かり治療方法も見つかったのだが今は不治の病とされていた。


そして、その病とは……。


「な、何? ユニス」


不意に名前を呼ばれて、ハッとなった。どうやら、リオンを見つめたまま考え事をしてしまっていたようだ。

私があまりにもじっと見つめていたからだろう。

リオンの顔には戸惑いが浮かんでいる。


「どうしたの? さっきからぼ〜っとしているようだけど……」


「あ、ごめんなさい。ちょっと考え事をしていたから。明日よね? もちろん大丈夫よ。伺わせてもらうわ」


「本当? きっと母様、喜ぶよ。実は僕の母様ってあまり身体が丈夫じゃなくて、滅多外に出ることも出来ないんだ。だからお客様が来てくれることが、すごく嬉しいみたいなんだよ」


「私も楽しみだわ。今からなにかお見舞いの品を考えておかなくちゃ」


そうだ、リオンを救うには……彼の母親からまず、救わなくては。


だって私は、リオンの母親を救う方法を知っているのだから――

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