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1章3 転校生

 私は現在、初等科の4年生で3組に所属している。


いつものように教室に向かって歩いていると、背後から声をかけられた。


「おはよう、ユニス」


「うん、おはよう」


立ち止まって振り向くと、友達のエイダ・モールスが笑顔で私を見つめていた。

彼女はダークブロンドのストレートヘアに緑の瞳が特徴的な愛らしい少女だった。

前世の記憶が戻った今、こんなモブ令嬢の私と友達になってくれて本当に感謝している。


「一緒に教室まで行きましょう」


「ええ、そうね」


一緒に並んで歩き始めると、つい感極まってしまった。


「ねぇ、エイダ」


「何? ユニス」


「私と友達になってくれて、本当にありがとう」


「え!? どうしたの? 突然そんなこと言って」


エイダは余程驚いたのか、目を丸くして私を見る。


「うん。色々あったから、ちょっとね」


「色々って……一体何があったの?」


まさか前世の記憶が蘇ったことや、ここが乙女ゲームの世界などと言うことは口に出来ない。

いくら相手がまだ10歳の少女だったとしても、変に思われるに決まっている。


「実はね、週末にお父様からある人を紹介されたのよ」


「ある人? 一体誰なの?」


「あのね、驚かないって約束してくれる?」


「……うん、努力してみるわ」


即答しないエイダは、子供ながらしっかりしている。


「私の婚約者になる男の子を紹介されたのよ」


「ええっ!? そうなの!? あ、いけない。驚いちゃったわ」


エイダは慌てたように両手で口を押さえた。でも驚くのも無理はない。

何しろ、私達はまだ10歳。

この年齢で婚約者がいる子供たちはまだまだ少ないからだ。


「それで? 一体どんな子だった? 私達と同じ年齢なの?」


エイダは好奇心一杯の目で尋ねてきた。


「年齢は同じ10歳よ。それに今日からこの学園に転入してくるんですって」


「そうだったの? それは本当に驚きの話ね。それで? 格好いい人なの?」


「う〜ん……可愛いい? あどけない少年って感じかな?」


以前のユニスなら、格好いいと思っただろう。けれど、前世の記憶が戻ってしまった私の精神年齢は立派な成人女性、10歳の少年にトキメキを感じるはずもない。


「ええ? ユニス……何だか、随分お姉さんみたいな言い方ね」


「アハハハ……そ、そう? お姉さんみたいだったかしら?」


「うん。実は朝会ったときから感じていたの。何だか雰囲気が変わった気がするって」


「そうね、この間10歳になったから大人にならなきゃって思ったの。それだけの話しよ」


さすがは親友、中々感が鋭い。


「なるほどね」


その後も私とエイダは会話を交わしながら教室へ向かった――



****



 私とエイダは同じクラスメイトだった。


2人で教室へ入り、他のクラスメイトたちとも話していると教室に予鈴のチャイムが鳴り響く。


そこで、それぞれの席へ戻って着席すると隣に座る男子生徒が話しかけてきた。


「知ってるか? ユニス。今日、この学校に転校生が来たらしいぞ」


勿論、その話は知っている。


「うん、そうみたいね」


「そうか、知っていたのか。でも、珍しいよな。こんな中途半端な時期に転校なんて」


「何か深い事情でもあったんじゃない?」


「あんまり、興味なさそうだな」


「そんなことないけど」


そこまで話した時、扉が開かれて担任の男性教師が教室に現れた。

その途端、クラスがざわめく。


え……? まさか……?


私は目を見開いた。

何と、先生の後からリオンが教室に入って来たのだった――


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