夥しい血溜まりの中に骨の断面が見える腕や脚が散らばり、内臓がはみ出た胴体が転がっている。
その胴体の先にある首の先を目にしたアレンたちは驚愕と強烈な生理的嫌悪をもよおす。
「こいつ……首の断面から頭部が生えようとしてやがる!?」
「弱体化したと言っても、特殊技能“不死レベル”はそのままだったようね。生命力が通常の何倍にも跳ね上がってるんだわ。胴を斬り離しても首を刎ねても死ななかったのはこれまでの戦いで分かっていたけど……」
「このクズは頭を破壊してもまだ……死んでなかったなんて…っ」
鬼たち全員がおぞましいものを見る目でガンツの頭部が再生する様子を見下ろす。
「でも当然というか、戦気はとても弱ってるね。生気もほとんど感じられない」
「この再生速度なら、頭部が復活する前に絶命すると思うぜ。
というわけで、どうするアレン?」
キシリトが先程から無言のままでいるアレンに尋ねる。その時ガンツの首部分がピクリと動く。そして頭部が再生されて顔が形成される。
「く、そ………っ 俺…様、が………テメーら
ガンツは苦痛に耐えながら言葉を紡ぐ。そんなガンツの胸倉をアレンは無言のまま掴んで目線を合わせる。
「クズはどっち?どう考えても、お前がクズだ」
「なん…………だと―――」
「私たち鬼族は………私たちの親世代の戦士たちは!争いで領地を奪ったりはしたけど、お前たちと違って人を無駄に殺したり尊厳を奪うことまでははしなかった!」
ドギャ! 「~~~~~~~~!!」
再生されたばかりのガンツの頭を地面に思い切り叩きつける。耐久力がほとんど失ってしまったガンツにとって、これだけでも大きなダメージとなっている。
「お前ら鬼どもを捕虜にしたり食糧にしたりしなかった!必要のない犠牲を出すことはしなかった…!
お父さんもお母さんもそうはしなかったし、仲間たちにもそうさせなかった。昔からみんなは、魔族間の争いを鎮めて、不戦の契りをして平和な暮らしを望んでいた!」
グサッッ 「ギェアアッッ」
研ぎ澄ました雷の爪でバラバラになった腕や脚を深く突き刺す。バラバラになっても感覚は繋がっていることを知ったアレンは容赦無く他の箇所に攻撃しはじめる。
「なのにお前ら獣人族は………里を滅ぼされて弱った状態で逃げてきた仲間たちを見て、助けるどころか捕まえて奴隷にして、理不尽に虐げたり殺したりした!」
ドスッ ドスッッ 「ご………っぷォ―――」
腹に
「戦争で殺されるのは仕方ない。その中でみんなが殺されいても私は復讐しようとは考えなかった。相手が竜人族でも同じだった。
だけど―――魔人族やお前ら獣人族は、ロクな理由も無く私たちを攻撃してたくさん殺して、私たち鬼族を絶滅に追い込んだ!」
片手で首を掴んでギリギリ締めつける。ガンツの口から苦悶の掠れた声が漏れる。
「特にお前は仲間たちに何をした?無理矢理働かせたり理不尽に虐げたり、さらには辱めて!挙句に殺した……!!
だから私は我慢はしない。復讐してやるって決めた。
今度は私がお前を虐げる番!!」
―――ズガァン!! 「~~~~~~~ッッ」
首を掴んだまま頭を再び地面に打ちつける。地面が半分ほど陥没する程の威力で、ガンツの頭蓋にひびが入る。首から手を離した直後、胴体を何度もクローで引き裂く。肉を断つ音が静かな空間に何度も響く。鬼たちはアレンがガンツを痛めつけている光景を黙って見つめている。止める気は微塵も無く、全員ガンツがズタボロになっていくのをその目に焼き付けていた。
「お前が、お前らがやってきたことなんだから、文句は無いよね?私は―――間違ってないよね?」
そう言いながらガンツの上体をセンのところに蹴り転がす。
「私だけ痛めつけるだけじゃ、みんな満足できる?その気があるならみんなもこのクズに同じことしていいよ。嫌なら私が続きを―――」
「やるわ」
「私も」
「この国で死んだ仲間たちの分も」
「俺たちがこいつに全部ぶつける」
「地獄を見せなきゃダメ」
「全然足りない」
鬼たちも憎悪をむき出しにして、代わる代わるガンツへの復讐を始めた。
地面に叩きつける、引き裂く、殴る、蹴る、踏みつけ……色んな攻撃手段を以て動けないガンツを徹底的に痛めつけて虐げている。
「何でお前ら獣人族が滅ぼされずで、俺たちの里が滅ぼされたんだ!!」
「魔人族なんかに尻尾振って服従しやがって!それでも魔族の族長なの!?」
「邪悪に染まったお前なんか人じゃない、ただの外道だ!!」
アレン以外の全員が暴言・恨み言を吐きながら憎しみがこもった拳や蹴り、魔法攻撃などをぶつけまくっている。
「ガッ、ぎゃア!テ、メーら………アア”ッ!!ぐはッッ!この痛みィ、屈辱はァ!ア”ア”ア”!!絶対にィィ!!ガアアア”ア”ア”!!」
これだけやられてもガンツは尚もアレンたちに憎悪に満ちた目を向けていた。恨み言を血とともに吐き出した。
「………それだけの気概や精神力があるのに、どうして魔人族に屈服したの?どうしてそこまで堕ちたの?」
アレンはそう尋ねるがその目は憎しみと侮蔑といった感情しかなかった。
「だ、まれェ!!獣人族を、部下どもを民どもを守る為だった!死を…滅亡を選ぶくらいなら、服従して生きる道を選んだまでだ!
生き残る為ならプライドだって捨ててやるさ………!!」
「…………」
「テメーらはなんだ!?下らないプライドを守って魔人族やモンストールどもに無惨に殺されて、バカな連中だぜ!!命を捨てるバカになるくらいなら―――」
「もういい。黙って」
ごしゃッッ 「かへッ―――」
ガンツの口に蹴りを入れて言葉を途切れさせる。
「お母さんとお父さんたちは私たちと誇りを守ってくれた。そんなみんなを汚すお前たちなんか、早く本物の地獄へ落ちろ」
「言われ、なく………ても、俺はもう……完全に死、ぬ…。
テメーらに、魔人族を滅ぼすこと、など………………」
それからガンツはもう言葉を発することが出来なくなり、鬼たち全員でガンツを攻撃し続ける。やがて呼吸が止まり目に生気が無くなり………
「今度こそ、死んだみたい」
「………そう」
獣人族国王ガンツは、死亡した。
「まずは一人、復讐できた………!!」
絶命を確認したアレンはガンツの死体を蹴り転がして、その肉片を王城から捨て落とした。
「この城にはもう獣人どもはいないんだっけ?」
「戦士級の奴らはほとんど残っていなかったはず。いたとしても全員弱体化してるだろうから問題無いだろう」
スーロンやキシリトが残存している敵のことで話し合い、ギルス・ガーデル・ソーンで何やら会話している。激闘を終えて一息つく鬼族の8人。
しかし暫く経ったところで、アレンの様子が一変する。
「ハァ、ハァ………!………!!」
「アレン?」
唸るような呼吸をするアレンにルマンドが訝しげに声をかける。その体に手を触れると、ルマンドは思わず手を引っ込める。
「あ、熱い!?アレン、大丈夫!?」
「………?何が?でも何でだろ、体が……熱い………………」
ルマンドに心配される中、アレンは顔を赤くさせてボーっとした表情を見せる。そんな彼女の様子に他の仲間たちも心配そうに見てくる。
「……………コウガに、会いたい………っ」
そう言いながらアレンは突然走り出して、王城をかけ降りて行った。
「あ、アレン…!?」
鬼たちは戸惑いながらアレンの後を追って行った。