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「必殺の一太刀」

 「ガンツゥウ!!」


 続いてキシリトが前に出て魔法攻撃を全力で放つ。雷電属性と嵐属性の魔法攻撃を交互に放つ。


 「調子に乗るなァ!!」


 迫りくる雷電魔法に、扇のように広げた両手を構えて、そこから鋭い爪の形をした黒炎の刃をいくつも放った。


 「あの扇のような形は、下にいた豹男の……!?」


 ガンツのフォームを目にしたキシリト・ソーンは少し前に戦ったジャギーの技を思い返す。「芭蕉爪」だ。


 「部下どもの得意技くらい、俺にだって出来るわァ!!」


 そう叫んで雷電魔法を打ち破る。その威力はジャギーの数倍に及ぶ。

 続いて嵐魔法もガンツを飲み込もうとするが、彼は目をギラつかせながら次の格闘術を繰り出す。


 “暗黒虎武羅”


 腕に膨大な闇の炎が渦巻いて巨大な魔力の拳をつくりあげる。その両腕を上体ごと大きく回転させて嵐攻撃を抉って消滅させた。


 「テメー程度の魔法攻撃で俺がやられるかよ!!」

 「これならどうだ!?」


 キシリトは負けじと次の魔法攻撃を放つ。暗黒魔法で発生したキシリトの姿をとった無数の影が出現し、一斉にガンツにとびかかる。ガンツは炎を吐いて影たちを一掃していくが、時間が経つに連れて炎の勢いが弱まってしまう。


 「ガ…!?俺は炎の勢いを弱めてねェぞ!?」

 「知らないんだな?進化した吸血鬼は実体化させた属性魔力を媒体にして相手の魔力を“吸血ドレイン”することが出来るんだ!俺の場合は闇属性が適正みたいだ」


 驚愕するガンツに隙を与える暇もなく、さらなる数の影たちを炎にぶつけさせて、炎をかき消していった。さらにガンツ本体に直接影が当たった瞬間―――


 「体が怠く…!?テメー俺の体力を吸い取ったのか!?」

 「実体化した闇属性の魔力・魔法攻撃が相手のそれらに触れれば魔力を吸収し、人体に触れればそいつの体力を削り、吸い取る!

 ここにきて新たに完成させた暗黒魔法『吸血侵食きゅうけつしんしょく』だ!!」

 「こ、の……くそったれェ!!(甘く見ていた、吸血鬼がこれ程の進化を遂げていたとは……ッ)」


 影たちに体力を吸い取られたことでガンツは膝を地につける。その直後にキシリトの両側を、スーロンとソーンが駆け抜けていく。


 「兄ちゃんも私と同じ“吸血”できたんだ!」

 「お前がさっきの戦いで見せてくれたお陰だ!妹が出来たんだ、兄も出来なきゃカッコ悪いだろ?」


 キシリトの活躍にソーンは嬉しそうに笑う。しかしガンツに接近するとその顔を般若の如く変貌させる。そしてスーロンと同時に強力な拳闘武術をぶつける。


 “銅鑼撃どらげき

 “瞬突しゅんとつ


 スーロンの「金剛力」を発動した状態からの鬼族拳闘術の溜め大技の一撃が、ソーンの「金剛力」と「神速」を合わせて放った全力の拳打が、ガンツの右胸・左胸を正確に打ち抜いた。

 骨を砕く音が響いてガンツは血を吐くが、倒れることはなかった。


 “獣王武神じゅうおうむじん


 ドギャッッッ 「「…………!!」」


 両腕と両脚と尻尾を高速で振るった全身運動による強烈な乱打がスーロンとソーンを滅多打ちにして地に這いつくばらせる。

 止めを刺そうとしたところにセンがスーロンを、ギルスがソーンを担いでその場から全速力で離れる。

 そしてキシリトが立ち塞がって全力の嵐魔法を撃ち放った。


圧縮風砲ブロックエアロ


突き出した片手から圧縮した濃密の風の塊を飛ばす。その風には斬撃効果も含まれている。ガードとしてクロスしたガンツの両腕にいくつもの裂傷ダメージを与えた。


 「効か、ねェなァ……カスどもが!!」


 そう言いながらもガンツの呼吸は荒く、苦しそうにしている。血を多く流し、骨も数か所折れている。追い詰められているのは確かだが、ここに来てガンツの獣人族の国王としてのプライドが彼に弱みを見せることを許さなかった。


 キシリトはそこから「魔力光線」をいくつも撃ち放つがガンツの「魔力光線」や黒炎を纏った格闘術に負けてしまい、ついには魔力切れになって「限定進化」が解けてしまった。


 「ここ、までか………っ」


 ぜぇぜぇと息を荒げて悔しそうに呻く。好機とみたガンツがキシリトに攻撃を仕掛けるが、拳を振り上げた状態のまま体が縫い付けられたかのように停止する。


 「ンだ、こりゃ………!?」


 大口を開けたまま固まったガンツが震える声を出すとその体が宙へ浮き上がる。倒れたキシリトの隣に立ったのは、甚大な魔力の放出で長い黒髪を逆立てて、尋常じゃないプレッシャーを放ち続けるルマンドだった。


 「か………み、き……ッ」

 「セン、ガーデル、ギルス、スーロン、ソーン、そしてキシリト。ありがとう。あなたたちが前に出て応戦してくれたお陰で、私とに全力の大技を撃つ為の時間が出来たわ」


 ルマンドは後ろを一瞥する。そこには―――全神経を研ぎ澄ませて、次の一撃に全ての力と気力を注ぎ込む準備をしていたアレンが、右腕のみに「雷電鎧」を集中的に纏わせた状態で構えていた。


 (ありがとうみんな…。この時間は絶対に無駄にはしないから。

 思い浮かべるのは、コウガに少し教えてもらった“必殺技”―――)


 アレンの頭の中では何度もシミュレーションを重ねていた。リスクが大きい分その一撃が決まれば敵を必ず討ちとることが出来る。

 その一撃必殺技を伝授したのは誰であろう、皇雅だった。


 「もういいみたいね。じゃあまずは私から―――」


 最大出力 “超神通力”


 ルマンドは自身の体に渦巻いていた高魔力を全て稼働させて、超強力な「神通力」としてガンツに攻撃した。


 「グ、アアァアアアァア……!!」


 全身を焼くような、捻じ切られるような、引き千切られるような超能力攻撃がガンツを死へといざなおうとする。


 「俺、が………ここで、オ”ワレ”ル”かア”ア”ア”ア”ア”!!!」


 獣人族格闘術 最終奥義 “獣王獅子武神じゅうおうししむじん


 敗北を認めいないガンツは最後の魔力と力を全て熾して振り絞り、全身から極大の赤黒い属性魔力を噴き出す。そして全てをかなぐり捨てた武撃を繰り出す。その威力は今まででいちばんの火力を発揮して、ルマンドの最大出力による「神通力」を打ち破った。


 「死・ネ・エエエエ”エ”エ”エ”エ”ッッッ!!」

 「腐っても一魔族の族長なだけあって、私の全力を破るなんてね……。

 でも――――勝つのはよ」


 「限定進化」が解けて疲労困憊状態のルマンドは不敵に笑って小さな魔力を発生させる。そんな彼女の真横をアレンが走り抜けようとする。


 「アレン、あなたに全てを託すわ!!」


 そう叫んだルマンドはアレンの背に嵐属性の魔力を込めて、アレンのスピードを倍増させた。それによってアレンは音よりも速く走る。


 (うん………決めてやる!!)


 心の中で叫んだアレンは右腕を水平にして後ろへ大きく引く。腕に纏っている雷の鎧は腕全体を刀のように鋭くさせている。


 「オオオ”オ”オ”オ”オ”!!!」


 怨嗟の絶叫を上げながらガンツがアレン目がけて突進する。アレンはその場で踏み止まり、ガンツの動きをその目で完全に「見切り」つつ、全身から力をパスし始めた。


 (最後に、全ての力・エネルギーを右腕に乗せて―――放つ!!!)


 向かい来るガンツの必殺の拳を紙一重で躱して、がら空きとなったその首に、アレンが今出せる全ての力を込めた右腕を打ち放った―――


 “阿修羅斬あしゅらざん


 ズ――――パッッ


 全ての魔力を熾した雷の鎧で切れ味を増した腕刀による必殺の一太刀。

 それはただ腕だけを振るったものではない。以前皇雅に教えてもらった、力を加速・増加させていくオリジナルの強化攻撃…「連繋稼働」。

 発案者である皇雅ほどの精度までには及ばなかったものの、力の伝達率は凄まじいものだった。左腕から、胴体から、そして下半身から。全ての部分から力をパスして回して、それら全てを力の放出箇所ある右腕に集めて、何乗にも増加させた力を全てガンツにぶつけたのだ。


 「――――――」


 結果、何が起きたのかが分からず呆然とした顔を浮かべたガンツの頭部が、宙を舞い、地面にボトリと落ちた。


 「はあああああ…………ッッ」


 さらにアレンは右腕を刀のように振るい続けて、ガンツの腕・脚・胴体全てをバラバラに切断して、動けないように斬り離した。それによってガンツの「限定進化」も解けたのだった。


 「そ……ン、なァ”………………………」


 掠れた声で呟くガンツの頭部に、アレンは容赦なく拳の雨を浴びせた。無呼吸で延々と拳をぶつけ続けること数分、そこにはミンチ状になったガンツだったモノが残っていた。

 数秒、数分とガンツが動かなくなったのを確認したアレンは、「限定進化」を解いてその場に崩れるように倒れた。息を荒げて滝のように汗を流し、苦しそうにするも、彼女の顔には微かに笑みを浮かべていた。


 「やっと………勝て、た……………」


 途切れ途切れに呟くと、目からスゥ…と涙を流す。そして心の底から言葉に出来ない激情も湧き上がってくるのだった。

 しばらく経ってから傷だらけの仲間たちに立ち上がらせてもらったアレンは、バラバラになったままのガンツの体に目を向けた。

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