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「鬼たちと獅子との死闘」2

 “驟雨しゅうう


 先陣を切ったアレンが態勢を立て直した直後のガンツの全身に拳打の雨あられをくらわせる。全発が人体の急所を正確に打ち抜いた。


 「ゲ、ァガアア!?」

 「さっきよりも手応えある、かなり効いてもいる!」


 ガンツの反応を見たガーデルがそう言って皆の士気を高めていく。


 「やっぱり弱ってるみたいね、邪悪な力に手をつけたことを後悔しろ!!」


 アレンの後ろからセンが全力で走って接近してくる。アレンとすれ違いさまに彼女と手を叩き合って交代を表明する。


 「これから繰り出す技は、鬼族で禁忌とされていた裏の拳闘武術。禁忌だけど、あんたみたいなクズ相手なら遠慮なく使えるわ!!」


 そう言いながら跳び上がってガンツの右目に、広げた自身の手を当てる。そこにもう片方の手を拳にして密着させる―――


 “眼埋突がんまいとつ


 カッッッ


 「ギャアアアアアア!?」


 拳で自身の手越しに相手の眼球を強烈に打撃する。それによって眼球の奥にある薄い膜状の骨―――眼底を破壊して脳に直接ダメージを与える、通称「眼底砕き」。

 「限定進化」しようと眼球や脳の強度は人間と変わらないもので、等しく大ダメージを与えることが出来る。


 「まだよ―――」


 地面に降り立ったセンは続いてガンツの心臓部分めがけて、大きく振りかぶった動作からの掌底を全力で叩き込む。


 “心震波掌しんしんはしょう


 ドゥンンンッ


 「カハ――――ッ」


 ガンツの口・耳・鼻から血が吐き出される。体内の水分を利用した内部への強烈なインパクト拳闘武術だ。ガンツの体内は打ち鳴らされたシンバル状態だ。


 「いくら弱ったとはいえ、獣人族でいちばん強いあんたは、これくらいじゃまだ死なないよね―――」


 再び跳び上がってガンツの頭上に移動、そしてその頭頂部分に嘴状にした手突きをぶち当てる。その直後に鉤爪状にした手を同箇所に叩き込んだ―――


 “滅人武めじんぶ


 ガンツの目・鼻・口から血が噴き出る。最初の手突きで頭蓋の継ぎ目に亀裂を入れて、次の一撃で頭の縫合を外す殺人拳闘武術だ。


 「―――さすがに、私の手が持たなかったわね……」


 ガンツから距離を取ったセンは汗を浮かべて激しく呼吸する。彼女の両手の指はほぼ全て脱臼・骨折していた。


 「カ……ァ」


 それでもガンツは倒れることなく、鬼たちに怒りに満ちた眼を向ける。


 “黒炎獅子”


 全身に炎と闇属性の魔力の鎧を武装して血まみれのままアレンに接近しようとする。


 “篠突しのつき”


 アレンの前に突如現れたガーデルが、突き・爪裂き・突き蹴りを混ぜた連続打撃を繰り出す。


 「ガキ、がアアアッ!!」


 “獅子黒炎刃”


 鎧で武装した爪でガーデルの連続打撃と張り合う。弱体化したとはいえ、ガーデル単独ではガンツの力に敵わず、身を切り裂かれる。


 「バラバラになって死ね……!!」


 倒れかけてしまったガーデルに爪を振り下ろそうとした時―――


 「させるか!!」


 ギルスが武装した闇属性の魔爪悪魔の鬼爪でガンツの攻撃を防ぐ。


 「ガーデルにその汚い爪を立てるなァ!!」


 武装した爪で拳闘術と斬撃飛ばしを繰り出してガンツを後退させる。そして距離がとれた直後、魔力の爪が渦の塊へと変化し、ギルスの両手から一直線に放たれる。


 “紫電放射線ライトニングレーザー


 闇と雷の複合魔法による紫電のレーザーが飛び去ったガンツの腹に命中する。


 「貫通はしないか、弱ってもまだこんなに頑丈なのかよ……!」

 「クソガキ、どもが………!!」


 苦い顔を浮かべるギルスに、激怒したガンツが赤黒い「魔力光線」を口から撃ち放つ。しかしギルスの背後から飛んできた光属性の「魔力光線」に相殺される。


 「今のあなた程度の魔力よりも、私の方が強いわね」


 ルマンドが鋭い眼光をガンツに浴びせてそう告げる。その隙に、アレンが飛び出してガンツの顔面に「雷電鎧」を纏った突き蹴りを打ち込む。


 “雷撃槍”


 「ぬがァアアア!!」


 間一髪で片腕を突き出して直撃を避ける。その腕の骨にひびが入った。


 「俺が……俺様がァ、こんな……こんなことがァ…!!」


 全身に血を流し、今度は疲弊した様子を出しはじめたガンツに、アレンは殺意に満ちた視線を飛ばす。


 「私たちの復讐はまだまだここから!!」

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