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「鬼たちと獅子との死闘」

 カイドウ王国王城 最上階大部屋


 (ククククク……!あの忌まわしくて目障りだった鬼どもが、この俺に追い詰められてやがる!奴らはボロボロで消耗している一方、俺は傷がほとんど無く体力もあり余っていてまだまだ余裕だ!)


 獣人族の国王、「百獣の王」ガンツは邪悪な笑みを浮かべて悦に浸る。彼に相対するのは鬼族の8人。

 アレン、セン、ガーデル、ギルス、ルマンド。さらに少し前に合流したスーロン、キシリト、ソーン。

 3人が加わった状態からでも鬼族の劣勢は変わらなかった。モンストールの力を取り込んだガンツの戦力はアレンたちの想像をはるかに上回るもので、彼女たちが必死に攻撃を仕掛けるも、強靭過ぎる肉体の前には為す術がなかった。


 「オラァ!!」


 ガッッ 「―――っ!」


 「ズアァ!!」


 ザシュ 「………!!」


 「ゲハハハァ!!」


 ドギャ……ッ 「っっ……!!」


 ガンツが爪を立てた腕・脚を振るう度に、アレンたちは骨や内臓に大ダメージを負い、吹き飛ばされる。炎と闇二つの属性魔力の鎧で武装してからの格闘術の威力は凄まじく、アレンやルマンドでさえも追い詰められていた。


 「ぐ………!強い。こんな奴にここまでの力が……っ」

 「“神通力”を何度ぶつけても倒れない…。こっちの魔力の残量がピンチだわ…」


 完全に攻めあぐねてしまった鬼族にガンツは嬉々として自身の爪や拳、蹴り技を打ち込む。


 (そうだ、俺は絶対的に強い!こんな鬼どもなんざカスに思える程だ!やはり魔人族に従ったのは間違いじゃなかった!こんな絶大的な力を得られたのだからな!圧倒的な力と不死に近い超頑丈な肉体。これらを兼ね備えたこのガンツは、鬼族などとうに超えている!いずれは竜人族も超えて、魔人族を除く最強の魔族になってやる!

 その後は、人族を滅ぼすのも良いな。魔人族と一緒にこの世界を支配するんだ……!!)


 邪悪な野望を思い浮かべながらあり余ってる力を存分に振るって鬼たちを痛めつけていく。あえて一気に殺さないのは、彼自身が鬼族を存分に痛めつけて苦しめて、自分に敵わないことを思い知らせて屈辱を与えて、心を折る為だ。


 (そろそろ誰かの腕や脚の一本くらい欠損させてやろうか。やっぱり脚が良いなァ、人は足を失って地にまともに立てなくなるだけで心が折れるからなァ!そろそろこいつらの絶望した面が見たくなってきたところだ、誰から行こうか―――)


 残酷な考えを浮かべたガンツが炎と闇を纏った爪をギラつかせて標的を選ぼうとした――――


 その時だった――――


 「―――――ッ!?!?」


 ガンツの体に異変が生じる。体から噴き出ていた瘴気が薄まり、プレッシャーも小さくなっていった。


 「グ、ゴオオオオォアアアア……!?」

 「「「「「……!?」」」」」


 突然苦しみだしたガンツを見た鬼たちは戸惑い、様子を観察する。ガンツは胸や首を掻き毟って奇声を上げ続けたのち、口から黒い何かを空中へ吐き出した。


 「ゲ、ェエエエエエッ」

 「何か吐き出したぞ?」

 「よく分からないけど、きっと良くないものだわ」

 「見て、吐き出されたアレ、消えていくわ!」


 謎の黒い物質は空中に出てすぐに霧となって消え失せた。同時に、ガンツの体型が少し変化する。さっきよりも痩せていったのだ。それでも筋骨隆々の巨漢であることに変わりはないが、明らかに肉体に変化が生じていた。


 「痩せた……?」

 「それだけじゃないわ………これって戦気や魔力までもが弱くなってる!?」

 「ええ。それもかなり…!」


 センの指摘にルマンドも同意する。実際ガンツのステータスには弱体化が起こっている。


 「そ、、んな………バカなァ!?まさか、まさかまさかマサカ!?奴が、死んだとでもいうのか!?」


 未だに続いている体の異変に苦しみながらガンツは思わず叫んでしまう。


 「ウ、ウィンダム!?テメーが………魔人族であるテメーが敗けたというのか!?あんな、何も感じられない人族のクソガキ相手に……!

 なぜだ!?なぜだなぜだ、なぜ敗れたァアアアアア!?!?」


 膝を地につけてさらに苦しむ。彼の体から瘴気や邪悪なオーラが抜けていく。


 「オォオオオォオ………この、絶大な力、がァア……ッ」


 明らかに弱体化したガンツと彼が叫んだ内容で、アレンは一つの可能性に思い立った。


 「コウガが、あの魔人族を討伐したんだ……!」


 アレンの言葉に鬼たちは彼女を一斉に見る。


 「もしかして………魔人族を殺したことで、モンストールの力を取り込んでいる獣人どもが弱体化したってこと?」

 「あの魔人も、あいつ自身の力でモンストールの肉による拒絶反応を抑えたとか言ってたしな。あいつが死んだことでその力を失ったこいつはそれで苦しんでるのかも」

 「いずれにしても……これで勝機が見えてきた!!」


 全員が強く頷く。その目には光が灯っていた。同時にガンツに対する怒りや憎しみも再燃させる。


 「いくよ、みんな!!」


 アレンの掛け声に全員おう!と返事してガンツに攻めにかかる。


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