「藤原と、高園の声…………?まあいい。気にしない!」
地底でも感じた誰かの声援だか何だかの幻聴を気にすることなく、目の前にいる敵に集中する。
リミッターを5000%まで解除して以降、体が少しずつ壊れていくのを感じる。分裂体ザイートとの戦いから少し経って少しは強くなったものの、5000%以上による負荷はまだキツいみたいだ。
(長くは持たない……以前みたいな完全崩壊に陥る前に奴を殺さないと!)
手足に力を込めて駆け出し、ウィンダムに物理攻撃をぶつけようとする。しかしその途中で目の前・真後ろ・真横から同時に魔法攻撃や「魔力光線」がいくつも飛んでくる。
「未来予知」で読んでいたことで「魔力防障壁」を予め体に張り付けていたお陰でダメージを軽減させることに成功する。
「やっぱり強い攻撃じゃないとキミは止まらないか!」
距離を縮めてくるのを目にしてもウィンダムは狼狽えることなく両手から闇・水(氷)、さらには嵐と三つの属性魔力を混ぜた複合魔法を放ってきた。
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初めて目にする三つ属性の複合魔法。闇の魔力を纏った氷の暴風が俺をバラバラにしようとしてくる。
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「連繋稼働」で加速・増加させたパワーを左拳にパスさせ、さらに重力魔法も付与させて、一気に打ち放つ。
強烈な斥力と全力で打った正拳突きが合わさった絶大な物理的一撃が、死の猛吹雪を粉砕していく。氷と嵐の残滓が刃となって俺の全身を切り刻んでいくが大したダメージじゃない。
「三つ属性の複合魔法を破るなんて!」
落胆することなく続けて魔法攻撃を放ってくる。
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俺の周囲にとてつもない電磁力が発生する。通常の何千倍もの重力が俺を圧し潰し、億単位の電圧が俺を破壊しようとする。
「………………っ!!」
超重力で全身の骨が砕かれ、電撃で体が焼き焦げていくが、歯を食いしばって耐え抜き、力を左脚にパスさせて振り上げ、爆破効果がある炎熱属性の魔力を踵に集中させたまま、全力・爆速の踵落としを真下に打ち落とす。
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ズガァンと強烈な衝撃音と爆発音が鳴り響き、周囲の地面が一瞬で無に帰した。踵落としの衝撃で雷と重力の強力な複合魔法を消し去ることに成功する。
穴に落ちないよう別のところへ移動する。ウィンダムは相変わらず動じていない様子だったが、どこか疲労の色が見えないでもなかった。さっきから大技を連発してたんだ、そろそろ体力と魔力も半分くらい削ってるはずだ。
「まだ、まだ……いくよ!」
しかし休むことなく次の魔法攻撃を放ってくる。
“
“
“
俺の頭上から三つの異なる属性魔力で出来た巨大な闇色の槍が3本突然発生し、降り注いでくる。炎・雷・氷の槍にはどれも濃い闇属性の魔力を纏っている。
振り下りてくる巨大な槍を見据えたまま、左手に光属性の高魔力を込めた日本刀(命名:ビームサムライソード)を武装し、脱力して構える。
「斬り捨てる―――」
三つの巨槍が間合いに入った瞬間―――腰に構えておいたビームサーベルをマッハで引き抜いて一閃させる!
ス―――――パ……………ッ
闇を纏った巨大な属性槍は全て両断されて斬り捨てられた。
「やる、ねぇ……!そぉら!!」
残心しているところにウィンダムは空中から巨大な黄色い魔力の塊を生成して、俺目がけて投げつけてくる。
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バチバチと雷魔力が渦巻いた巨大な魔力の雷球が俺目がけて降ってくる。
「大地魔法」+「身体武装硬化」
オリハルコン製の手甲と足甲を装着して武装する。そして間近に迫っていた魔力の雷球に右拳を放つ。
当然この一撃では奴の攻撃は破れない。だからこの一撃を「起点」として、最強のカウンター技を放つんだ!!
俺が編み出したカウンター技は基本、物理攻撃に対してしか作動しなかった。しかし大地魔法で創ったこの魔力手甲越しなら、物理攻撃と同様にカウンター攻撃をかますことができる!
当たった右拳を起点に、前腕→上腕→胸→腹・背→腰→左脚→左足へとダメージエネルギーをパスしていく。
左足に魔力の雷球の威力と自身の力を乗せた、オーバヘッドキックを全力で叩き込む!
“
――――ボッッッッッ
渾身のカウンター蹴りで奴が放った魔力の雷球は跡形も無く消滅した。
「これも、破るなんてね……!」
ウィンダムの額から汗が流れはじめる。動揺というより疲労から発生した汗みたいだ。奴もだいぶ消耗している証拠だ。
一方の俺もけっこう体が壊れてきてる。砕けた骨がなかなか修復しない。体の崩壊が近づいてきてる…!