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「ウィンダムの野望」2

 「あっははははははは!本当に面白いよカイダコウガ君、キミはぁ!!ただ大きな力を得ただけの未熟な子どもかと思っていたけど、そうか……キミは僕が思っていた以上のレベルに達してるんだね?分裂体ザイート様を退け、ミノウを討ったのも納得がいくよ」

 「まだ俺のことを見くびってたのかよ」

 「多少はね。だから少し謝らせてほしい」

 「別に。見くびったまま死んでもらったら良かったなって思っただけだし」

 「フフフ…。ところでキミに聞きたかったことがあったんだ。キミはこの世界でいったい何を成そうとしてるんだい?」

 「は?何だよ急に」

 「まあ良いじゃないか。小休止がてら少し話をしようじゃないか。言ったよね、僕はキミに興味があるんだ!」

 「だったら、地面に這いつくばりながら聞いてろ」


 駆け出してオリジナルの武術の他、鬼族や竜人族の拳闘術(格闘術)を混ぜて繰り出す。ウィンダムは俺から距離をとって魔法攻撃で俺の接近を阻止してくる。


 「俺がこの世界で成したいこと?先に言っとくけど俺はこんな世界で永住する気は微塵もねーよ!半年くらいで異世界転移系の魔術を完成させて俺が元いた世界へ帰るんだよ!」


 のしかかってくる強烈な重力攻撃を力技で強引にぶち破る。迫りくる無数の黒炎の砲弾も拳で全て打ち落とす。


 「そういえば!キミは別の世界から召喚された人族なんだったね!?百数年前にもキミと同じような経緯で現れた人族がいたよ!」

 「テメーらはそいつらに負けたんだっけな」

 「まあね。あの頃の僕はまだ幼く、力もなかったから大戦には参加出来なかったんだ。代わりに先代の魔人たちが殺されたけれど」


 飛んでくる無数の嵐の斬撃を武装した日本刀で斬り捨てる。「魔力光線」が間髪入れずに飛んできたのでこっちも「魔力光線」を撃つ。


 「で、帰りたいだけのキミが何故こんなところまで来たんだい?帰ることと獣人族の国とは関係無いんじゃないのかな」

 「依頼された任務だからだ!この国の実態を暴き、獣人族とテメーを消せば任務達成。その報酬にサント王国が俺の帰還に本格的に協力してもらう話だったからな!

 あとは、鬼族の味方だからだ!」

 「へぇ?色々面白い理由で動いてるんだ」


 光線の撃ち合いから今度は魔法攻撃合戦へと変わる。炎・光と水・闇、雷・嵐と大地・闇といった様々な複合魔法が飛び交う。


 「地上でも言ったけどな、俺の目的の障害となる敵は全員殺すって決めてんだ!テメーが立ち塞がってきたからこうして戦って殺そうとしている。テメーら魔人族が何もしないってんならこうして戦うこともしてなかっただろーよ!」

 「僕たちが何もしてこなかったら、ねぇ?」

 「けどテメーらは近々この世界を滅ぼそうとか、ロクでもねーことを企んでるんだよな!?いずれ俺や俺の仲間たち、さらには協力相手のサント王国にも危害を加え、消そうとしてるんだよな!?だったら俺はテメーらを皆殺しにしてやる!戦う理由はそんなところだ!」


 跳び上がって急降下からの下段突きを叩き込もうとするが炎の壁と合わさった「魔力防障壁」に阻まれて失敗に終わる。


 「………そういえば、テメーはいったい何でをやってんだ?獣人族を滅ぼさずにテメーの駒として利用して、あいつらを強くさせてまでもする。テメーはいったい何がしてーんだ?」

 「ふふふ、そう聞いてくれて嬉しいよ。簡単な答えだよ、僕の野望の為さ」

 「その野望の為ってのは地上でも言ってたな?何だよテメーの野望って」

 「よ・く・聞いてくれたねぇ!それはぁ―――」


 少し間を空けてから奴はとびきりの邪悪あふれる満面の笑みを浮かべて答えた。


 「あの獣人族どもを魔人族のさらなる戦力として捧げて僕の力と功績を認めてもらいそして!

 僕は “序列”を持った魔人になるんだ!!

 それが僕が掲げている野望!この僕もこの世界を支配する魔人族の礎となる!ザイート様に認められて高い“序列”を与えられてこそ、僕の価値はさらに高まる!!」


 狂気すら感じられるその様子に俺はどん引きする。つーか……


 「“序列”持ちだぁ?テメーはその為だけに、一つの魔族丸ごとを支配して化け物に変えて、この大陸を滅ぼそうとまでしてるのかよ」

 「僕にとっては大きなことなのさ!それが全てなのさ!!」


 それを聞いた俺は……呆れてしまった。どんな大層な目的があるのかと思えば、数少ない魔人族中で地位を得ること、それだけだった。

 なんとも俺……俺たちにとってしょうもない野望だ…。


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