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「vs序列2位 ジャギー」

 カイドウ王国王宮 上層の最上階近くのフロア

 スーロン・キシリト・ソーンvsジャギー


 3対1の戦いはすぐに終わらせられると、最初はそう考えていた。


 (とんだ思い違いだったわ。“序列2位”を名乗るだけあって、強い……!)

 (私たちが本気で一斉にかかってもまだ手こずるなんて……っ)

 (甘くみていたな、ガンツのところへ急ぐことを意識し過ぎていた。

 だけど、相手も俺たちのことを侮っていたようだな)


 「限定進化」を発動して全力を発揮しているスーロン・ソーン・キシリトは目の前にいる一人の敵に意識を集中させいる。

 彼らの敵、黒のドレッドヘアをしている豹の獣人…ジャギーも、「限定進化」を発動した姿(体長が進化前の倍になり、四足形態となっている)となり全力で迎撃している。


 (まさかこの俺がここまで追い詰められるなんて!こいつら一人一人は俺に劣る戦闘力だというのに、恐ろしいくらいの完璧な連携で、俺と互角…いやそれ以上の力を発揮してやがる……っ)


 ジャギーの体のいたるところから裂傷などによる血が流れ、無数の打撃痕が刻まれている。骨が数か所砕かれ、魔法攻撃による火傷をいくつも負い、満身創痍に近い状態だ。


 「お前ら三人同時じゃなく、一人ずつを各個撃破するべきだったな……。お前らの連携を甘く見積もっていた…!」


 “芭蕉爪ばしょうつめ


 嵐の魔力を纏った両の前足を扇のように広げて、そこから鋭い爪の形をした嵐の刃を放つ。


 「いくぞソーン!」

 「うん!」


 キシリトとソーンが前に出て、二人の炎熱(火)魔法を掛け合わせた合体魔法攻撃を撃つ。


 “劫火炎却ごうかえんきゃく


 嵐の刃よりもはるかに大きな炎砲が二つの刃を飲み込み焼き尽くそうとする。


 ズバッ「っゔ…!」


 しかし僅かな残滓が抜け出て、キシリトの腹をやや深く裂いた。腹部から血が噴き出すが彼は怯まなかった。


 「兄ちゃん…!」

 「心配するな。吸血鬼はこれくらいの傷では動じない、死にもしない!」


 軽く吐血しながらもキシリトは笑って応じ、さらに炎熱魔法を放つ。


 “陽炎かげろう


 しかしそれは攻撃よりも目くらましが目的の魔法攻撃で、ジャギーの目を眩ませる。


 “砂塵の霧ダストカーテン


 キシリトの意図を察したスーロンがさらなる目くらまし攻撃を重ねる。これによりジャギーの視界は暗闇同然と化した。


 「そんなもので……!」


 ここにきて妨害攻撃をされたことに憤ったジャギーは嵐の魔力の塊を投げて爆散させて炎と砂塵を一気に吹き飛ばした。


 「どこだ―――」


 ジャギーが言葉を発した直後、彼の首筋に二本の長い牙が突き刺されていた。


 “吸血きゅうけつ


 キシリトによる奇襲だ。彼は発達した八重歯をジャギーの首に突き刺し、そこから血液を採取する。

 吸血鬼のみが持つ特殊技能「吸血」はただ血液を奪うのではなく、


 「ぐ、おおぉ……!(これは、体力と魔力までもが!)」


 血中に含まれる魔力と体力そのものも奪い取るのだ。


 「さっき受けた傷は、これで癒えた」


 キシリトの腹部にあった裂傷は消えていた。「吸血」で回復したのだ。


 「この、蝙蝠鬼がアアア!!」


 激怒したジャギーが離れようとするキシリトを追ってその爪で引き裂こうとするが、


 “瞬突”


 ズドォン! 「か……っは!」


 背後からソーンによる神速の金剛拳打が背骨を撃ち抜いた。


 “砕撃”


 間髪入れずにスーロンが渾身の掌底突きを頭部に叩き込む。頭蓋と脳に衝撃波をとばして大ダメージを与える。


 「「まだまだ!!」」


 攻撃の手を緩めることなく二人は交互にジャギーに拳闘術をくらわせ続けた。怒濤の連続打撃はジャギーを瀕死へと追い込んでいく。


 ドガガガガガガガガッ

 (ま、まずい……さっきのドレイン技で削られたせいで、さっき以上にダメージが入る……)

 「う、オオオオオオオオオ!!」


 「咆哮」を上げると同時に左腕・右脚に風属性の、右腕・左脚に雷属性の魔力を纏い、さらには胴体に闇属性の魔力を鎧のように纏わせて、二人の猛追に対抗する。


 “嵐豹らんぴょう

 “雷豹らいひょう


 三つの属性を纏った状態からの獣人格闘術を繰り出して猛反撃する。その威力は二人の力を凌駕し、スーロンの額に風の衝撃波が、ソーンの胸部・腹部に雷の蹴りが襲い深刻なダメージを負わされ、二人は吹っ飛ばされる。


 “黒豹くろひょう


 そして二人に狙いを定めて、牙に闇の魔力を集中させた必殺のバイティングアタックを仕掛ける。


 「死、ネ……!!」


 「猫脚」で加速しながら二人の命を同時に噛み砕こうとする。あと数メートルの距離にさしかかったところで、スーロンは目を見開いて大地魔法を発動する。


 「っ!?俺のところに足場を!?」


 ジャギーがいた地が盛り上がり上へ打ち上げられる。


 「それがどうした、急降下すれば良いだけのこと!!」

 「いいえ、そこが彼のベストな射程圏内なの」


 そう告げるスーロンたちの真上から、キシリトが現れる。彼の両手には莫大な魔力が込められていた。


 「………!?」

 「俺の全力を受け取れ」


 “極大魔力光線”


 通常の「魔力光線」の数発分にも及ぶ巨大な赤と黒の光線が、ジャギーの全身を貫き、燃やした。


 「ク、オオオオオ……!!ざ、んねんだったな!この程度では俺は殺せない―――」


 “吸血”

 ドスッ 「な……ニ!?」


 ジャギーの背中に、炎で出来た牙が襲い、突き刺した。ソーンによる「吸血」攻撃だ。


 「馬鹿、な……自身の牙でじゃないとドレインできないのでは―――」

 「進化した吸血鬼は、実体化させた魔力・魔法攻撃を媒体にして“吸血ドレイン”することもできるのよ。ちなみに私は火属性が適正みたい」


 胴体から血を流してフラつきながらも、ソーンは勝気な笑みを浮かべてそう説いた。


 「「さすが、天才だ」」


 スーロンとキシリトの声が被り、同時にジャギーから体力と魔力が奪われていく。


 「ク、オアアアアア……!?からだが、崩れていく……!耐えることができない、ばか、なァアアアアア……ッ」


 体力と魔力のさらなる喪失により耐久度が激減したジャギーは、キシリトが放った全力の「魔力光線」に飲まれ、消失した。


 「頭とか、残ってないよね?」

 「ああ。跡形も無く消し飛んだみたいだ。止めを刺すまでもない」

 「時間、思った以上にかかっちゃったね」


 「限定進化」を解除した3人はその場で座り込んで呼吸を整えて体を少し休める。美羽からもらった回復薬を飲み、傷口を包帯などで塞いで応急手当を済ませる。


 「………………よし!行こう、アレンたちのところへ」


 数分後、スーロンの掛け声に二人も頷いて立ち上がり、上へ進んだ。



                 *


ジャギー 53才 猫種(豹) レベル105 

職業 戦士

体力 9100

攻撃 7010

防御 3900

魔力 6070

魔防 3200

速さ 3300

固有技能 獣人格闘術(皆伝) 咆哮 怪力 神速 雷電魔法レベル9 

嵐魔法レベル9 暗黒魔法レベル9 魔力光線(雷 闇)

超生命体力 限定進化 瘴気耐性 不死レベル1

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