「てめぇら随分セコい戦い方しやがって…!弱いからこんなやり方しかできねェんだよなァ、アア!?」
「………その通りです。私の力だけではあなたに勝つことは到底無理でしょう。だからこそ、こうしてタカゾノさんと協力してあなたを追い詰めているわけです」
「俺を追い詰めてる、だァ?その気になってるてめぇらが、それが思い上がりだってことをその身に叩き込んでからぶち殺してやるよォ!!」
“限定進化”
真っ黒い魔力と瘴気がハンネルを包み込むと同時に彼の存在感とオーラも増していく。やがてそこには先程よりも大きくなり、より獣らしさを思わせるハンネルの姿があった。
「ガァルルルル…!」
ぎらついた目で睨まれ思わず身を竦ませるクィン。
「あ、あれが魔族の“限定進化”……?クィンさんが危ない!」
遠くからでもハンネルの危険性を察した縁佳はすぐさまハンネルを狙撃する。
“
狙撃銃による「属性狙撃」を放つ。
ズパン! 「ハッ!さっきよりも正確に察知できるようになったんだ、こんな狙撃がもうくらうかよ!」
さっきよりも早く察したハンネルは余裕もって弾丸を斬り捨てる。続いていくつもの弾丸が不規則な軌道を描いてハンネルを撃ち抜こうとするも、これらも「神速斬り」で斬り捨てられる。
しかし慢心して最後の銃弾を素手で掴んだ結果、
ジュウウウ! 「ぐあああああああ!?何だこの弾は!?」
銃弾を掴んだ瞬間ハンネルの右手が煙を上げて溶け出す。
「あれは……フジワラさんの…!」
クィンはかすかに驚きつつも、チャンスを逃さず「魔法剣」で斬りにかかる。しかし力も剣術も圧倒的に上回るハンネルに反撃され、逆にダメージを負わされる。
「クソ、あれは何だったんだ!毒か!?まあいいこうなったらやはり先に―――」
「やっぱり効いた。美羽先生の切り札…!」
縁佳の手には光輝く水が入った試験管がいくつもある。これらは全て美羽が用意した「聖水」だ。予め彼女からいくつか渡されていたものだ。
「敵があんなに強くなっちゃった以上、出し惜しみはしてられない。次の狙撃もこれを含ませて――」
次弾に「聖水」を込めて装填しようとしたその時、
『聞こえるか狙撃手のガキィ!!』
「………!?」
200mも離れたところからでもはっきり聞こえるハンネルの怒号が響く。「咆哮」によって拡声器のように大きな声を響かせている。
「く、クィンさん……!!」
「鷹の眼」様子を見た縁佳は激しく動揺する。ハンネルの前に血を流してボロボロになったクィンが倒れていたからだ。
「………っ!」
クィンは剣を立てて苦しそうに立ち上がる。
『てめぇがこれ以上こそこそ隠れて狙撃するようなら、この女を今すぐぶち殺す!それが嫌なら俺の前に姿を現せ!出てきやがれ!!』
闇属性の魔力を帯びた剣をクィンに向けて脅しをかける。
(今からの狙撃じゃあ、きっと間に合わない。その前にクィンさんが斬られてしまう…!どうしようも、ない……っ)
万事休すを悟った縁佳は狙撃態勢を解いてクィンたちのところに姿を見せる。
「………………っ」
「よォ、やっとまた会えたな。こそこそ俺を狙い撃ちやがって」
ハンネルの威嚇に縁佳は怯んでしまう。
「大したガキだ。この俺の感知から逃げ続けやがったんだからなァ。隠れる能はあるようだが、所詮は雑魚。俺を殺すには全然足りねぇんだよォ!!」
今度は縁佳に剣を向けるハンネル。
「逃げて、下さい…!」
息を切らしながら逃走を促すクィンだが縁佳は首を横に振って拒否する。
お互いこの窮地をどう切り抜けようかと必死に思案していると――――
“
「あァ?」
縁佳たちとハンネルとの間に大きな壁が突然出現する。
同時に後ろに新たな気配を察した縁佳は後ろを振り返る。そこには――
「縁佳!間に合って良かった!!」
「た、助けにきたよ!」
「美紀ちゃん!?小夜ちゃん!?」
縁佳のクラスメイトであり親しい友でもある二人の少女……曽根美紀と米田小夜の姿があった。
「俺もいるぜぇ!!」
「堂丸君も!?」
少し遅れて同じくクラスメイトの堂丸勇也も現れた。
*
ハンネル 35才 猫種(チーター) レベル103
職業 獣人剣士
体力 8730
攻撃 7590
防御 6200
魔力 3900
魔防 2990
速さ 5790
固有技能 獣人剣術(皆伝) 咆哮 怪力 瞬足 夜目 危機感知 気配感知
嵐魔法レベル9 大地魔法レベル7 暗黒魔法レベル9 魔力光線(闇)
超生命体力 限定進化 瘴気耐性 不死レベル1