「けっ。女二人が相手かよ。まあいい。そこそこやれるようだしな。おら、下へ行くぞ。そこでてめぇらを斬り殺す」
そう言ってから階下へ消えていくハンネルの後をクィンたちが追う。
「クィンさん、縁佳ちゃんのこと頼みます!縁佳ちゃん、必ず無事で帰ってきてね!」
「「はいっ!!」」
美羽の言葉に二人とも力強く返事して下へ消えた。
「さて……。俺は残りのこの3人というわけだが……」
ロンブスは美羽を睨んで思案する。
(あの人族の魔術師?女……人族にしては強力な戦気を放ってやがる。どこの大国の戦士だ?)
美羽に警戒心を抱いたロンブスは、彼女に狙いを定めて「魔力光線」を撃ち放つ。対する美羽は「魔力防障壁」で防ごうとしたが、
「“バラせ”!」
「っ!?」
障壁に激突する寸前で光線が分散して障壁を飛び越えて美羽に降り注ごうとする。ギルスとガーデルが焦る中、美羽だけは……
「ふっっ!!」
冷静に対応した。魔法杖から強烈な光の幕が彼女を包み込んで、光線を防いでみせた。
「何だと?」
ロンブスが眉を顰める中、今度は美羽が攻撃を仕掛ける。
“聖水の槍”
魔法杖から青い魔力が槍を形作り、高速で放たれる。ギリギリのところで躱したロンブスだったが、
「っ!?ぐあああ!?」
掠めた左腕を押さえて苦悶の声を上げた。
「槍の先端には“聖水”を含ませてたの。モンストールの力を取り込んだあなたには掠めただけでも大ダメージよ」
美羽は確信した様子でそう言ってみせる。
「ミワ、あなたのその力は……!」
ガーデルは美羽の魔法杖を見て少し目をきらつかせる。
「水魔法と光魔法を掛け合わせた私のオリジナル魔法なんだけど、この力は不死とそれに近い存在の生物に特効なんだって。モンストールや魔人族が良い例よ」
あと……甲斐田君にもね、という言葉は心の中で呟いた。ギルスもすげーと関心を向けている。
「まだ行きます! “
追撃として魔法杖から「聖水」を帯びた光の弾丸が無数に放たれる。これもモロにくらえば致死レベルの傷を負うことになるロンブスは、
「やられるか!! “魔力連弾”」
闇の魔力を纏った「魔力弾」を無数に撃ち放ってこれらを相殺する。
「あの虎獣人もやるけど、ミワだって全然負けてないわ」
「ああ。彼女がここまで強くなっていたなんて」
ガーデルとギルスは美羽の急成長を認識して、心強く感じた。そんな二人に、美羽はこんな提案をした。
「ガーデルちゃん、ギルス君。あの獣人の相手は私一人に任せて、二人ともアレンちゃんたちのところへ行きなさい」
この提案に二人とも思わず反発する。
「それは無茶にも程があるわ!あいつの戦力はSランクモンストール一体レベルはあるみたいだし、ミワ一人じゃ務まらないわ!」
「いくらあいつに凄く効く強い切り札があるとはいえ、奴の実力はまだ未知数だ!」
二人は美羽の提案を止めようとするが、彼女は真っすぐな目を向けて大丈夫と宣言する。
「心配しないで。強がりを言ってるわけじゃないの。相手を舐めてもいないわ。今のやり取りで確信したの。あの獣人には私一人で勝てるってこと」
「「…………!」」
美羽が錯乱したわけではないと、彼女の目を見て理解する。
「お願い。ここは私を信じてほしい。絶対に勝ってみせるわ」
「ミワ……」
「それにあなたたちも気になってるんでしょ?仲間たちのこと。私に向けられた最初の攻撃にすぐ反応出来なかったのもそのせいなんだよね」
美羽の指摘に二人とも無言で頷く。美羽は優しい笑みを浮かべる。
「行ってあげて。獣人族の国王はとても強いんだと思う。戦うことになった場合、先に行ったあの3人だけでもまだ厳しいと思うわ。だからあなたたちが力になってあげてほしい」
美羽の説得にガーデルが分かったと応じる。
「信じるわ。ミワならきっと勝てる。ギルス、行くわよ」
「もしヤバくなったら逃げろよ。死ぬのはダメだからな」
「ええ、任せて!」
そう言葉をかけあってから、ガーデルとギルスは美羽を置いて先へ進んだ。
「ああ?お前一人で俺と戦う気か?」
「そうよ。私があなたをここで止める……いえ、倒します!」
「舐められたものだ。その妙な水魔法ごと消し去ってやろう…!」
美羽とロンブスによる一対一の戦闘が始まった。