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「ここは私に任せて!」

 「ちっ、めんどうだな。下に残っている下っ端戦士どもを全員ここに来させるか。お前らどっちかが、俺と組んで赤い鬼のガキを殺すぞ」

 「てめぇがそう言うのなら、そうするかよ」


 ジャギーたちが何か相談している間に、アレンたちも戦う態勢に入る。しかしそこに美羽が待ったをかける。


 「アレンちゃんたちは、上にいる国王と早く戦って、生き残りの仲間たちを助けたいんだよね」

 「うん、その為にここまで来てる」


 アレンは即答する。それを聞いた美羽はアレンより前へ出る。


 「アレンちゃんは誰か数人を連れて先に行って。私や縁佳ちゃんたちであれと戦うから!」


 そう力強く宣言した美羽に鬼たちが彼女に注目する。


 「縁佳ちゃん。それにクィンさんも。私と一緒に戦ってくれませんか?」

 「は、はい!もちろん!」

 「ええ。一緒に戦います!」


 縁佳もクィンも気後れすることなく応える。


 (ここは自分に任せて先に行け!……って一度は言ってみたかったけど、まさかこんなところで使うことになるなんて)


 発言した美羽本人も実は驚いていた。そしてまんざらでもない様子だ。


 「ミワなら……うん、大丈夫そう。あなたも凄く強くなってるし。それに、コウガの先生だもんね」


 アレンは美羽を見て小さく笑う。そこに彼女への信頼も込められている。


 「とはいっても、あの3人相手だと人族のあなたたちだけだと危険だわ。私も残るわ」


 美羽の隣にスーロンが並ぶ。さらにキシリトとソーンも続く。


 「私たち3人で一人相手するわ。あとは……」


 スーロンがセンたちを見回す。


 「二人残った方がいいわね。ミワと一緒に誰かが……」

 「だったら私とギルスでやるわ!」

 「俺が!?まぁいいけどさ」


 ガーデルとギルスが美羽の傍につく。


 「アレン、セン、そしてルマンド。先に上へ行ってて!あの獣人どもさっさと討ってからすぐに行くから!」

 「分かった……!」


 スーロンの指示にアレンたちは素直に従い、それぞれの編成を完了させる。


 「クィン、ミワ、それにヨリカ。私たちの為にありがとう。私たちの戦いが終わるまでで良いから頑張って。あと、命を優先して」

 「アレンさん。センさんとルマンドさんも。どうかお仲間たちを救い出して下さい」

 「あの3人は私たちで何とかしてみせるわ!あなたたちはあなたたちの戦いに集中しなさい。そして無事に帰ってきてね!」

 「頑張ってください。その、上手くは言えませんが……」


 クィン、美羽、縁佳もアレンに激励の言葉をかける。そしてアレンはセン・ルマンドと共に上の階へ進んだ。


 「大人しく行かせてくれないんじゃなかったの?」

 「馬鹿な奴らだぜ。たった3人で国王様に向かうなんざ。たとえあの赤い鬼だろうと、ガンツ様には敵わない」


 スーロンの挑発にジャギーは余裕の笑みで言い返す。


 「それよかお前らこそ良いのか?あの赤い鬼が抜けたお前らだけなら、この3人で十分蹂躙できるぜ?」


 ロンブスとハンネルも勝利を確信した様子で笑っている。


 「そうかしら?あんたたち一人につき数人でかかれば、どうってことないわ。

 それよりさっさと始めましょう?私たちもアレンたちの後を追わないといけないから」


 自分たちに全く臆しないスーロンたちにジャギーは舌打ちする。その彼にスーロンとキシリトとソーンが進み出る。


 「この豹男の相手は私たちが引き受けるわ」


 スーロンたちはそう宣言すると早速一斉にジャギーに攻撃しにかかる。


 「ふんっ!3人がかりだろうと同じということを思い知らせてやろう!そうだな、上へ案内してやる。そこで皆殺しにしてくれる!」


 スーロンたちの攻撃を躱しながら、ジャギーは3人を上へ誘導して離れていった。


 「俺はそうだなぁ………………決めた。

 オイそこの、剣を持ってる人族の女。てめぇと相手してやる。俺もちょうど剣で戦うタイプだからな」


 ハンネルは自身の剣をクィンに向けて指名する。クィンはその切っ先を睨みつけて剣を構える。


 「お相手しましょう。ハンネルさん、でしたね」

 「ああ?覚えてたのかよ。俺はてめぇの名なんざ知らねぇし興味もねぇがな!」

 「サント王国兵士団副団長、クィン・ローガンです」

 「興味ねぇつってんだろ!さっさとりあうぞ!」


 獲物を見る目をしたハンネルは剣を肩に置いてロンブスに目を向ける。


 「このフロアはてめぇに譲ってやるよロンブス。残りの連中はくれてやらぁ」

 「それはどうも。ところでお前が相手する敵はその女一人だけか?」


 ロンブスに指摘されたハンネルは再度クィンに目を向ける。


 「おおそういえば。てめぇ一人で相手が務まる俺じゃねーぞ?どうすんだよてめぇ」

 「………………」


 沈黙するクィンに声をかけたのは、


 「あの!私がクィンさんと一緒に戦います!」


 縁佳だった。クィンは少し驚いた反応をしたが、すぐに了解の意を見せる。


 「では、よろしくお願いします。あなたを命の危機に晒さないことを誓います!」

 「私も、足手まといにはならないようクィンさんを支えます!」


 二人のやりとりを聞いたハンネルはつまらなそうに息を吐く。

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