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「自分自身の為」2

 理解した俺はさっそくウィンダムの後を追う。今いたところから5㎞程離れたところだ。一瞬でそこまで進んだ奴の身体能力はさすが魔人族か…と思わせる。

 ウィンダムがつくった大穴へ向かう途中、一人の獣人と遭遇する。


 「何だ今の激突音とあの大穴は……?

 っと!お前が侵入者か?一人になって、迷子かなぁ?」


 猫の獣人の男は俺を舐めきった態度で近づいてくる。こいつの実力は………アレンたちがさっき戦った「幹部」と同じレベルか。


 「運が悪いね僕ぅ。“幹部”であり戦士“序列9位”でもあるこのイオサさんと遭遇するなんて!じゃあとりあえずこの爪と牙でズタズタに―――」

 「先を急いでるんで、後にしてくれ」


 ボゴッと猫獣人の顔面にパンチを打ち込んで地面にバウンドさせながらぶっ飛ばす。そのまま進もうとしたのがが、しばらくしてから猫獣人が「限定進化」を発動した姿で追いかけてくる。


 「なん、なんだオメーはぁ!?その力はぁ!?」


 半分キレた様子で駆けて、口から「魔力光線」を撃ってくる。前を向きながらもヒラヒラ落ちる紙のように光線を躱してから、クイックターンを決めて猫獣人に接近する。


 「後でっつったのに。動物の中で猫は好きな方だからあまり殺したくはねーんだけど」


 脳のリミッター100%解除


 「よく見たらテメーはただの化け物だからやっぱり殺すわ」


 “絶拳”

 ドパアァン!


 ワンパンチで猫獣人…イオサとかいった幹部戦士の頭を完全に消し飛ばす。今や100%程度の解除でGランク級の敵を余裕で殺せるようになった。

 とりあえずウォーミングアップにはなれたかと思いながら、ウィンダムを追う。奴がつくった大穴に俺も飛び込んで下へ、下へと突き進む。光はあっという間に無くなり、冷たい空気しかながれなくなる。そして、辺りには例の瘴気が漂う空間となった。

 ようやく地底にたどり着き、着地してウィンダムを捜す。奴はすぐに見つかり、開けた地で待ち構えていた。


 「ようこそ、僕の領地へ」


 言われた気付いたが、この空間はどこか人が暮らしてそうな感じがする。まあ普通の人間がここに来た瞬間、死ぬだろうけど。


 「僕は普段ここで生活をしている。家はここからもう少し離れたところにあるよ」

 「随分陰気くさい空間で暮らしてるんだな。その割にはテメー自身は陽キャ過ぎるようだが」

 「陽キャっていうのは何なのかは分からないけど、褒め言葉として受け取っておくよ」


 相変わらずのニヤニヤした顔で向き合ってくるウィンダム。

 こいつは今までにないキャラの敵だ。得たいが知らなさすぎる。俺に感づかれることなく真横に突然現れたといい、今も見せている気味悪さや狂気。以前戦ったミノウとかいった奴の方がましに思えるくらいだ。

 奴のことを知るべくまずは「鑑定」で――――



ウィンダム 109才 魔人族 レベル277

職業 戦士

体力 553000

攻撃 339000

防御 618000

魔力 689000

魔防 599900

速さ 577900

固有技能 Error



 「何だこりゃ……っ」


 思わぬものが表示されて狼狽してしまう。奴の名前や年齢、レベルに能力値までは見破ることができた。しかし固有技能だけ全く知ることができない。何度発動してもエラーメッセージしか見られない。


 「今、僕のステータスを覗いたよね?その目で。“鑑定”かな」


 ウィンダムが全て見透かしたかのように問いかけてくる。


 「………いったい、何をしやがった?」

 「簡単なことだよ。僕の固有技能“隠蔽”で、僕の固有技能だけを見られないように隠したのさ」


 そんな固有技能も存在するのか。まあ姿や気配を隠す固有技能があるし、ステータスを隠す固有技能も当然あるよな。


 「僕も君のことはまだ知らないことがあるしさ、ここは公平にお互い固有技能が知らない状態で戦わないかい?その方が、面白いだろ?」

 「別にテメーの余興に付き合う気はねーけど、別にいいか。戦いながら知ればいいいし」

 「それがいいよ。ところでカイダコウガ君は、これまで僕と同じ魔人族と三人も戦ったんだよね。一人は分裂体のザイート様。二人目はあの方と一緒にいたランダ。そして最近は…ミノウを殺したそうだね」

 「そうだけど。ザイートはともかく、ランダとかミノウとかいう奴は大したことなかったな。余裕だったぜ」

 「うーん、あの二人は魔石で得た力をまだちゃんと使いこなせてなかったからね。結局未熟だったまま君に殺されたようだね。残念だ」


 全く残念そうじゃなさそうに呟くウィンダムと十分な間合いを取る。そろそろ始めるつもりの俺を察したウィンダムも、俺をしっかり見据えたまま同じく構えを取り始める。


 「話の続きは殺し合いでもしながらゆっくりしようじゃないか!僕たちはもっと知り合うべきだ!」

 「ホント気持ち悪いんだよテメー。さっさとぶっ殺してこんなとこ出てってやるよ」


 ウィンダムの全身から強い魔力が噴き出る。質が非常に高い。こっちも負けてられない。脳のリミッターを早速解除していく。


 「異世界召喚された人間 甲斐田皇雅」

 「魔人族 ウィンダム」


 互いに短く名乗り合った直後、


 一気に間合いを詰めて、全力をぶつけ合った―――


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