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「獣人族の正体その2」

 250cm近くの巨躯をした金色の鬣を生やしたライオンの相貌で異様なオーラを放っている獣人。そいつは自身が国王だと名乗った。

 間違いないだろう。奴こそが獣人族の頂点に立つ国王、ガンツだ。


 「お前が、国王。この国でいちばんの奴…」


 アレンが前に出てガンツを睨みつける。


 「ほォう、これは驚いた。侵入者は半数以上が鬼族だとは聞いていたが、まさかあの金角鬼が混じっているとはなァ。ムカつく面してやがる……!」


 ガンツもアレンに敵意に満ちた目を向ける。


 「他に……鬼人に堕鬼、吸血鬼と……神鬼までいやがるのか。しかも全員ガキ……。

 こんな奴らにここまで侵略されてたのかよ。だらしない同胞どもだ。力を与えてやったのによォ」


 鬼族の種を全て言い当てたガンツは不機嫌そうに愚痴りだす。


 「力ってのは、モンストールの力のことを言ってるんだよな?テメーもそれを取り込んでいる。その瘴気と眼と体の色が証拠だ」


 ガンツの瞳は黄色く黒い眼球だ。肌の色はやや灰色で体のいたるところに細い線が走っている。

 まるっきり俺と似た体の特徴だ。


 「あァ?テメーは、人族のガキ……?いや、まて。テメーのその見た目。瘴気が出ていないとはいえ、俺や同胞たちとよく似てやがる?

 だが戦気が全く感じられない…?この姿、まるで“あの男”と同じ……っ」

 「………その、“あの男”って奴が、さっきから感じているの正体か。テメーら獣人族の中に、まだいるんだろ?」

 「何だと?テメーどうやって感知した?」

 「気配を感知したわけじゃねー。けど俺には分かるんだよ。気配とか臭いとか存在感とか隠せても、この俺の本能的な何かだけは察している。を…」


 アレンたちは俺とガンツが何の話をしているのか分からない様子だ。彼女たちに取り合う余裕は、今の俺にはない。何故なら……


 (この国に来てからけっこう経ったというのに、今さら気付いたぜ。同じだ、あの時と……。この不吉な感じというか、邪悪なものを何となく予感するこの感覚……っ)


 俺は辺りを見回すが、仲間たちと獣人ども以外の姿は当然ない。


 「テメーとよく似た存在だと?テメーが、あの男と同じ存在だというのか…!?戦気も何も感じないガキが?」


 ガンツが俺に近づいて訝しげな視線をとばす。


 「コウガ、いるの?他に、何かが…」

 「ああ。その正体もたぶん分かってる。こういうパターンだとやっぱり…」


 俺が「邪悪な何か」の正体について推測したその時、アレンたち鬼族と、目の前にいるガンツと周囲の獣人どもが血相を変えた。


 「うそ……この戦気、この気配って…っ」

 「オイオイ、もう出てくる気か…!?」


 アレンたちは顔を強張らせ、ガンツは顔をしかめる。


 「甲斐田君、あなたとアレンちゃんたちはいったい―――っ!?」

 「ただの人間のあんたらでもようやく気付けたか…。どうやら、ヤベー奴が出てくるようだぜ…」


 生前だったら俺の首筋には今、冷や汗が流れていたと思う。やがて、「邪悪な何か」の正体が………




 「凄いね。“気配遮断”を発動していた僕を感じるなんて」

 「―――っ!!」


 に突然現れた!

 咄嗟に「瞬神速」で1km近くまで移動してしまった。気を落ち着かせてからさっきいた場所へすぐ戻る。状況を確認すると…アレンたちも突如現れた存在……青紫色の長髪のやや痩躯体型のなりをした青年から十分な距離をとっている。


 「あい、つは……っ」


 服越しからでも分かる。俺とほぼ同じの肌の色、所々に走っている赤い線。そして、黒い瘴気。「人型のモンストール」こと、


 「魔人族……!!」


 世界を滅ぼそうと企んでいるロクでもない魔族こと、魔人族がやっぱり現れた。


 「初めまして、カイドウ王国の侵入者の皆さん。

 僕は魔人族のウィンダム。よろしくね」


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