「どうやら俺はチート主人公のようなんでね。殺すことはほぼ不可能だ。しかも戦闘不能にさせることすら高難易度だ。けどテメーも十分クソチートな強さじゃねーか。不死身じゃねーくせになんて頑丈さだよまったく」
皮肉に言い返す一方、内心俺はどうしたものかと考えてる。1500%解除しても全然追い詰めてねーし。まだこんなに差があるのかよ……。
こうなったらさらにリミッター解除するっきゃないよな。「過剰略奪」を数回やったことでリミッター解除に対する体の耐久度が上がったのは分かってるが、どこまで耐えられるか。
あとどれくらい限界を超えれば、奴を殺せる?
心配事は尽きないが、やるしかない、か。限界を何度も超えて、体壊してでも、チート発動して奴を超える!!
「脳のリミッター2000%解除」
体中に感じたこともない力が湧いてくる。筋肉や骨に異常はない。まだ大丈夫だ。
全身に武装硬化を纏わせて黒化した体でクラウチングスタートの体勢をとり、即座に駆ける。マッハ二桁に乗ろうかという速度のまま、「連繋稼働」を発動。
ザイートから少し離れたところ…ちょうど走り幅跳びの踏切板から砂場までの間隔で右足で踏み切って跳びあがる。
右足→右大腿→骨盤→左大腿→アキレス腱→足首→踵→最後に爪先へとパスして加速する。
空中で軽く捻って、左回転蹴りを奴の首部分に叩き込む!
“
ガァンとデカい衝撃音がしたが、ザイートは腕でギリギリ防いだため、奴の首は折れていなかった。が、だいぶ効いたみたいで、かなりのけ反らせている。
続けて肘に生やした推進機を爆走させて、超音速の右フックを繰り出す。ダイヤモンドの数倍は硬い拳は、ザイートの内臓を破壊せんとばかりに腹にめり込み、骨を砕いた。
だがザイートは倒れない。吐血しながらも、「武装硬化」した手刀で俺の首を刎ねて、さらに縦状に振り下ろして俺の体を両断した。
高速で腹を回復したザイートはそこからさらに無数の拳打を浴びせた。
「お前を、完全に止めるには、塵も残さず消すか、心を折ってやるか、それくらいするしかないようだな!俺とお前との力の差を、さらに思い知らせてやろう!」
そう言ったザイートの両手が黒い雷みたいなオーラを纏った鉤爪状と化した。
『死纏う
禍々しい魔力を纏った爪によるクロー技で、俺の体がさらに八つ裂きにされる。これ以上肉体を損傷させられるとマズイかもしれない。全身に意識を集中させて、体の一つ一つが動くようにして、ザイートから距離をとる。
「逃がさん!細切れにしてから炎で消し去ってくれるわ!」
すぐさまザイートが追うが予想済み。足止めさせるために、後ろの足を自爆させた。これは「魔力爆発」という技らしい。
「っ!?自決する時以外でその技を使う奴は初めてだ…!」
ザイートが怯んだ隙に、体に塵がすぐに集まり、五秒で首も再生されてどうにかピンチを凌いだ。
「やれやれ……今の能力値ではわずかに決定打に欠けるなぁ。仕方ない。こうなれば切り札を――」
切り札という言葉を聞いて、冷や汗が流れる(気がした)。アレを発現させたら、間違いなく今の俺など消される。
「やらせるかよおおおおおお!!!」
奴の強化を止めることだけを頭に刻んで、躊躇いなくリミッターを大幅に解除した。
「4000%!」
体中に変な音が走る感触がしたがどうでもいい。今この瞬間で、奴を殺さなければならない。それだけを思いながら俺は駆けた。
赤黒くなった両腕を刀に変貌させて、そこに風の刃を纏わせて、勢いよく振り下ろして黒い斬撃をとばした。
“
風を纏った鋭利な衝撃波がザイートの腕を切り裂いた。血が噴き出したが腕は切断されてはいない。
間髪入れずに刀を振るってザイートの胴体を滅多斬りにする。どんな物質をも容易く斬れる俺の刀を以てしても、ザイートの皮膚を裂くことはできても骨や中身を断つことはできないでいた。ホントにこいつチートな体してやがる!さすがは文字化けクラスの能力値だよクソぉ!
ザイートが俺をバラバラにしたように、俺も奴を切り刻もうとしたが失敗に終わった。リミッター4000%の解除でも、奴は殺せない。
「まだ足りないってのか!?ならまた限界超えるまでだぁ!」
狂気じみた声を上げて俺は脳のリミッターをさらに解除する。
「5000%ォ!!」
直後、莫大な力が全身に駆け巡った。同時に、視界が赤く染まった。目をこすると血が付いていた。どうやら頭から血が出まくっているようだ。強化したとはいえ、前回の許容範囲の約5倍解除もすれば、さすがに体が壊れるか。
だったら、俺が自壊する前に、目の前のラスボスを殺すまで!!
「ここで決める……!!」
俺はそう啖呵を切って、血まみれのまま黒いオーラを纏わせてザイートに攻撃を仕掛ける!