○×高校の入学式当日。
俺は指定の教室に来ていた。
「よう」
窓際最後列の席に座っていたハトノショに、俺は声をかけた。
「あ、山田マモルさん……」
「同じクラスだな」俺は隣に座った。
「……はい!」
ハトノショは嬉しそうに言った。
「ねえねえ聞いた?」
女子二人組が噂話をしている。
「聞いた聞いた! チョーイケメンがこのクラスに居るんだって!」
「えー? 嘘ー? 誰誰?」
「まだ来てないっぽいね。ハーフなんだって!」
「えー? 嘘―? どーしよー? 口説かれたら」
「あんたにゃチャンス無いって」
「あんたにだって言われたくないんだけどー」
そんな調子で女子は談笑を続ける。
と、ここで。
「キャー!」
教室の入口の方に向かって、黄色い声が重なった。
今まさに、顔立ちがハッキリした美少年が入ってきたのだ。
「あの人かな?」ハトノショがひっそりと言った。
「だろーな」
その、金髪の美少年は、何故か真っすぐに俺の方に歩いてきた。
「初めまして、ヨロシク」
美少年は俺とハトノショに言うと、金髪をサラッと動かしながら隣に座った。
と、ここで、
「みんな座って座ってー!」
担任の女性教師が入ってきた。
「今から入学式の説明するから、とりあえずテキトーに席に座ってちょうだい」
それぞれ座りに行く中……。俺の前の席に、小柄な男子が着席。すると、その男子はこちらに振り向いて、
「初めまして」
と、笑みを咲かせた。
どこかで見たような顔だった。
どこか懐かしい顔だった。
「はーい、それじゃあ段取りを説明するからねー」
担任が注意事項を説明する中……。
美少年と前の男子が、一斉にこちらを向いて「マモル」と声を揃えた。
そして、
「これからもヨロシクな」と美少年。
「ヨロシクゲロ」と小柄な男子。
俺は……。
俺は……嬉しさでうずうずした口を、何とか食い止めてから、
「ああ、ヨロシクな」
静かに応えた。
おしまい。