これは夢なのだろうか……。
真っ暗闇の中で、誰の話し声が聞こえてくる。
「マモルは凄いゲロ」
カエルの声だった。
「ふむ、確かに」
今度はリオル・ダ・マオウフニャフニャの声。
二人が話しているようだ。
「現実から目を背けずに生きていこうとする姿勢は見習いたいゲロね」
「ボクたちとは違って、な。異世界の方が楽だし、楽しいだろうに」
「どうしてマモルは異世界で生きていこうとしなかったゲロかね?」
「強いからだろ」
「強い、ゲロか?」
「ああ、ボクたちと違って、心が強いんだ」
間が空いた。
「現実の方が思い通りにいかないことばかりなのに、彼は向こうを選んだ」
「うん、それが凄いゲロ。そっか、強いから、ゲロね……。マモルならきっと、どんなに嫌なことがあっても、どんなに辛いことがあっても、乗り越えていけるゲロ」
「羨ましいね、彼が」
「うん……。ボクもマモルのような人と友達になれてたら、こっち側に留まることなかったゲロ……」
「今更後悔か?」
「うーん、そうかもゲロ」
二人の笑い声が聞こえた。
「……マモルのような人が居たら、きっと、近くに居る人たちも現実が楽しいゲロ」
「その『近くの人』になりたい、と?」
「そうゲロ。リオル・ダ・マオウフニャフニャはどうゲロ?」
「……うん、ボクも彼の近くに居たかった……かな?」
間が空く。
「一度、お願いしてみないかゲロ?」
「誰に?」
「うーん、神様ゲロかな?」
「神様か……」
「ボクたちにもう一度、チャンスをくれないか頼んでみようゲロ」
「ダメだったら?」
「ダメだった時のことなんか考えたらマモルに笑われるゲロ」
「かもな」
二人は爆笑。
「じゃあ、お願いしてみるゲロ?」
「ああ、やってみよう!」
フッ……と、二人の声が止んだ。
気づけば、俺はベッドの上で目を開けていた。
「……何だっけ……」
鮮明に聞こえていたはずの、誰かの声を、俺は忘れていた。
でも不思議と、どこかで会ったことのある二人の声だったということは覚えている。