「何でだよ……」
俺の頭の中に、ハトノショの声が蘇る。
『そうですけど……。私は今が……。今がとても楽しいんです……』
『山田マモルさんには私の気持ちなんて分からないですよ!』
どことなく、悲しげに言った表情が、蘇る。
「何なんだよ……」
何があったんだよ……アイツに……。
「教えてほしいゲロか?」
振り返ると、ゲーミングチェアに座ったカエルが居た。カエルはもう、装備品を全て外している。
その傍らではリオル・ダ・マオウフニャフニャが腕を組んで立っている。
「……おまえ知ってんのか? ハトノショのこと」
「知ってるゲロ」
「じゃあ何であんなことしたのか教えてくれ」
「ボクが言って良いゲロか?」
は? と俺は聞き返す。
「ハトノショに会って、彼女に直接聞かなくて良いゲロか? 彼女の気持ちを覗き込むようなことをしても良いゲロか?」
「……それは……」
俺が迷っていると、
「そういうことは自分で確かめた方が良いんじゃないかな?」
と、リオル・ダ・マオウフニャフニャが口を開いた。
「もっとも、キミの良心が痛まなければ話は別だが」
フッと、リオル・ダ・マオウフニャフニャはキザに笑った。
「俺は……」
俺は……と続ける。
「……自分で確かめたい。あとさ……予感なんだけど……。今回でダメだったら、俺、多分もう現実世界で生きていけないと思う……。つーかもう、諦めてここで生きてくわ」
「諦めるって言葉は無かったんじゃないゲロ?」
「るせえ! もう吹っ切れたってやつだよ。これでダメだったら裏ボスでも何でも倒してやらあ! バカみてーに強いログボも貰ってるしな! そん時はおまえら協力しろよ! 腐れ縁ってやつだ!」
カエルとリオル・ダ・マオウフニャフニャは顔を見合わせて、笑った。
「因みに十三回目のログボは何だよ? それ使えば裏ボスなんて楽勝だろ」
「あ~、十三回目のログボは薬草ゲロ」
なんでここで急激にグレードダウンすんの?
「終盤で宝箱開けたら中身が薬草だっていうのはRPGでは良くあることゲロ」
知らねえよ。
「不味そうだったけどケッコー美味しかったゲロよ?」
だからなんでテメーいただいてんだっつーの。結局ログボ全部オマエが貰ってんじゃねーか。
「ふむ、確かになかなか美味だったなアレは」
おまえも食ったんかいいいいいいいいいいいいいいいいいい。
「ちっ……。相変わらず好き勝手しやがって……。まあいいや、じゃあやってくれ」
「現実世界に帰るゲロか?」
「ああ。頼む」
パッと、舞台は現実世界に戻った。間もなく、スマホにメールが届く。
『山田マモルさん。例の公園で待ってます』
ハトノショからだった。
あんなことを言った理由を、彼女に直接聞こう。
そして……これでまた転生したら、諦めよう。
諦めて異世界で生きていこう。
これでラストにしよう。
そう決めていた。