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第11話 完璧な作戦と、衝突と、転生と……

「分かった! これみたいに小説の主人公を交代すりゃいいんだ!」


「主人公を?」


「ああ。山田マモルはこれっきりにして、他の主人公にフォーカスを移すんだよ!」


「なるほど! あ、でも主人公を変えると、今度はその人が転生するようになっちゃいますよ。交代した人と同姓同名の人が転生することになるかも……」


「……じゃあ同姓同名が居なきゃ大丈夫なのか?」


「た、たぶん」


 つまり余程、変な名前じゃなきゃ――、


 って、居たあああああああああああああああああ!

 知ってるわ。俺知ってるわそういう名前の奴!


「ヤバいヤバいヤバい! 完全に来たわ! 舞い降りたわ偶然の神が! この世の中に存在しない名前にすりゃ良いんだろ?」


「は、はい。でも居ますかね?」


「任せろ! 俺はもう思いついてるぞ!」


 そう、俺は思いついている。

 というか知ってる。

 この世に存在しないほど変な名前を。


 それはリオル・ダ・マオウフニャフニャだあああああああああああああ!


 これは来た! 

 その主人公に交代すれば、この転生物語は終わる。

 勝ちパターン来た!


「覚えきれないだろーから書いとくぞ」


 俺はノートの切れ端に『リオル・ダ・マオウフニャフニャ』と書いた。


「これ。この名前の主人公にしてくれ」


「凄い! こんなの普通は思いつかないですよ!」


「そ、そーか?」


「そのバカみたいなアイディアはどうやって思いつくんですか?」


 あなたに言われたくないんですけど。そのままそっくりお返ししてやろうか?


「……ま、まあ、そんなことは良いからその名前で始めてくれ」


「分かりました!」


 ゲームを中断し、ハトノショは小説を書き始めた。

 これで俺の転生物語は終わ――、


『山田マモルは息を吸った。何やら嫌なモノを吸ったような感じがす――』


 人の話聞いてたあああああああああああああああああ?


「待った待った待った! 何してんの? 何してんの?」


 俺はハトノショの腕を掴んで続きを物理的に止めた。


「や、止めて下さい!」ハトノショは俺の手を振り払う。


「それこっちのセリフ! 何でまた俺を主人公にしてんの? リオル・ダ・マオウフニャフニャに代えるって話だろーが! しかももう既に不穏な感じするんだけど! これ確実に転生させにいってるよね? どんだけパターン思いつくんだ! 人類から古代文明守ってる殺戮マシンかテメーは!」


「私はこの転生物語を止めたくないんです!」


「何でだよ! このままだと一生ループして高校生になれねーぞ!」


「良いんですよ、それで……」


 ハトノショがあまりにも物憂げに言ったので、俺の勢いは沈下した。


「……何でだよ……。おまえだって頑張って勉強して高校に合格したんだろ?」


「そうですけど……。私は今が……。今がとても楽しいんです……」


「……どういうことだよ?」


「山田マモルさんには……」


 ハトノショは続ける。


「山田マモルさんには私の気持ちなんて分からないですよ!」


 勢いよく言うと、ハトノショは物凄く速いタイピングで続きを書いた。


『山田マモルは息を吸った。何やら嫌なモノを吸ったような感じがする。そう、吸った酸素の中には、有毒物質【獄炎から生まれし静かな猛毒】が入っていたのだ。その名の通り、有害物質を吸ってしまった山田マモルは、静かに心臓の活動を止めていた』


 パッと、舞台が現実世界から異世界の泉に移り変わった。


「ようこそゲロ」


 また、ここからやり直しだ。


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