「ところでマモル、また懲りなく現実世界に帰るのかゲロ?」
「あたりめーだろ」
「理由を聞いても良いケロ?」
「やっと原因が分かったんだよ。俺が転生する」
「あー、ハトノショが書いてる小説とリンクしてるから止めに行くゲロね」
……ちょっと待て……。
なんで知ってんのコイツ?
「……えっと、何で知ってんの?」
「ボクは何でも知ってるゲロ」
「……因みにいつから知ってた?」
「そんなの最初の転生の時からゲロ」
じゃあ言えやあああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ。
なにコイツううう?
何で言ってくんないの?
何でそんな重要なこと黙ってたの?
「そういうのは自分で発見するものゲロ。それが人生っつってね☆」
黙れ蒸し焼きにするぞテメエ。
「じゃあ……現実世界に帰してくれ……」
俺は何とか怒りを抑えて言った。
「分かったゲロ」
パッと、舞台は現実世界に戻った。
またハトノショと連絡を取る所からやり直しか。
……と思った矢先、スマホにメールが届いた。
『ハトノショです! 山田マモルさんですよね?』
ハトノショの捨てアドからメールが来た。
『はい、山田マモルです。何でそれを?』
『実はさっき、急に記憶が蘇ったんです』
『記憶?』
『山田マモルさんと掲示板でやりとりして、公園で待ち合わせて、私の家に行くまでの記憶を、です』
マジか。ついにハトノショの記憶を受け継ぐことになったか。
(待てよ……もしかして日付も進んでたりしないよな……)
俺は日付を見た。三月二十四日だ。それはいつもと同じだった。日付は進まず、記憶だけ引き継いでいるらしい。
これはかなり大きな『進展』ではなかろうか。
『また今から例の公園で会おう』
俺が送ると、『はい!』とハトノショから返事が来た。
「山田マモルさん!」
公園に行くと、間もなくハトノショがやってきた。
「よお。色々言いたいことはあるけど、まず聞いて良いか?」
「大丈夫です。もう書きためてる転生はありません!」
「ホントか? また家に着いた時に『実は』とか言うなよ?」
「だ、大丈夫です」ハトノショは目を逸らした。
「え、なに? 何で目逸らすの? なにかやましいことでもある?」
「べべべべべべ別に十三回目の転生を書いてる途中だなんて言ってませんしぃ」
まんま吐露してんじゃねーか。
「ちょっと待ったちょっと待った! マジで? じゃあもう転生すること確定してる?」
「あ、いえ! まだ途中なんですよ! だからそれを上手く捻じ曲げてください!」
上手く捻じ曲げる、ね。あのバカみてーな転生の仕方の舵を変える自信無いけど。
「……分かった……やってみる……」
再びハトノショが住む一軒家に着いた。が、まだ油断は出来ない。
「おい、中に入る前に転生するなんてことないよな?」
「あっ、それなら大丈夫です」
それならって何? 引っかかるんだけど。
「ただ、次の転生もいつ起きるか分からないというか……」
じゃあ入る前に転生する可能性もあるじゃねーかバカたれ。全然大丈夫じゃねーだろ。
「ちょっと待ったちょっと待った! じゃあ早く入るぞ!」
「ええー? でも男子をホイホイ部屋に連れ込むと軽い女だと思われそうな気が……」
「この期に及んでそれえええ? 今そんな場合じゃねーだろうが!」
「変なことしないですか?」
「しないしないしない! いいから早く部屋に入れてくれ! 早く物語を捻じ曲げなきゃ転生しちゃうって!」
「わ、分かりました。じゃあ変なことしようとしたら転生させるので」
遠回しに殺すって言ってる? いやまあいいけどね、どーせそんなことしないし。
「ここが私の部屋です」
ハトノショの部屋には本棚がたくさんあった。小説がビッシリ詰め込まれている。
テレビにはゲーム機が接続されていたが、何故か埃を被っていた。勉強机の上には、ノートパソコンが一台置かれている。
「よし、じゃあその物語を見せてくれ」
「はい」
ハトノショは勉強机に座って、パソコンを立ち上げた。そして書いている途中の小説を見せてくれた。
「これです」
俺が十三回目の転生する寸前のシーンは、
『山田マモルは酸素を吸った。山田マモルは知る由もないだろう。その時に吸った酸素の中に【死に至る病】が混入していて、遠くない未来に自分が転生してしま』
ここまで書いてあったのだった。
(え、ええええええええええええええええええええええ?)
もうどうしようもねーじゃねーかあああああああああ。
何なのこれ? 何でこうもバカみてーに転生のバリエーション思いつくの?
しかも今回はかなり不可避だろ。どーすんの?