「よし、次こそ」
作戦その②
ネットの掲示板で相談してみる。
俺はスマホで書き込んでみることに。
うーん、掲示板のペンネームは『マッモ』にするか。
マッモ『相談があります! 東京在住の、春から高校生になる者です! さいきん異世界転生しすぎて困っています! どうすれば回避できると思いますか?』
なんか書き込んでる途中に気づいたんだけど、かなりヤベー投稿だなこれ。
まあ、誰かしらアイディアを出してくれるはず――、
T大生『まずはその脳みそを診てもらいましょう(病院のサイトURL添付)』
まあそうだよな、そうなるよな。
匿名希望の覇王『そのまま異世界で幸せになれば良いと思うよ。異世界転生できるものならな(怒)』
なんかワリとマジで怒ってる人が居るんだけど。
ああああ『大変ですよね、お互い頑張りましょう』
テキトーな名前でテキトーな返事をするな。
怒られ侍『せ、せせせせせ拙者も異世界転生して困ってるでござる!』
おまえはなにキャラを演じている。
宇宙の波動を受け取りし者『ファンファンファンファンファンファンファンファン』
なんかヤベー奴きた。
副管理人『なんだろう……。嘘つくの止めてもらっていいですか?』
論破王も来たんだけど。
「ダメだ……。話にならん……」
俺への返信が落ち着いた時だった。
ハトノショ『私も、書いてる小説の主人公が頑なに異世界転生して困ってるんです』
俺は何故か不思議なことに、その書き込みが気になった。
その書き込みをした『ハトノショ』という人物に吸い寄せられていた。
「何だろう……」
説明できない吸引力が、その書き込みにはあった。
俺はその人に個別でメッセージを送ろうとしていた。
その時だった。
「ようこそゲロ」
いつの間にか、舞台があの泉に切り替わっていた。
(え、えええええええええええええええええええ?)
あれええええええ? 俺まだ何もされてないんだけど?
え、どういうこと? もはや存在するだけで転生するようになった?
「説明しようかゲロ?」
カエルは言った。カエルは何故かゲーミングチェアの上に乗っている。
「今回、マモルは『光の生命体』に進化を遂げる途中で細胞が全て破壊されて転生したゲロ」
どういうこと? 理解が追い付かないんだけど。別に光の生命体になんか進化を遂げようとしてないんだけど。
つーかおまえの乗ってるゲーミングチェア俺が貰うはずのログボだろ。
「あ、あのー、カエルさん?」
「何ですかゲロ?」
いや何ですかゲロじゃなくて。
「そのゲーミングチェア、俺がここに来て九回目に貰ったログボだよな?」
「ん? あー、そうですゲロ」
「なんでカエルさんが乗ってるのかな~なんて」
「だってマモルには必要無いゲロ?」
いやまあそうなんだけど。なんか腹立つのよ勝手に使われたら使われたで。
「細かいことは気にすんなゲロ~」
カエルはゲーミングチェアに乗りながらクルクル回転する。なんか腹立つ、要らないけど腹立つ。
「あ、そうだ」俺は閃いた。「転生しない方法、この世界の人に聞きに行けば良いんじゃね?」
「それはオススメしないゲロ」
「……え、何で?」
「この泉のエリアから出たら永久にこの世界に留まることになるゲロ」
マジで? つーかそんな重要なこと何で今まで黙ってたの?
「因みにリオル・ダ・マオウフニャフニャは攻略手順を間違えて終盤の町に行っちゃったゲロ」
だから聞いてませんし。
「あとマモル。今回で十回目の転生だから、ログインボーナスで鋼の剣が貰えるゲロ」
要らないんだけど。
「武器の性能的にはリオル・ダ・マオウフニャフニャより強くなれるゲロ。アイツはまだ鉄の剣を装備してるゲロ」
どうでも良いんだけど。
「届いたゲロ」
パッと、空中に剣が現れて地面に落ちた。
「さあ受け取るゲロ」
「あ、いや、この世界で生きてくつもりないから要らな――」
「じゃあボクが装備するゲロ」
俺の言葉を遮って、カエルは腰に鋼の剣を装備したのだった。
(え、ええええええええええええ?)
なんでテメーが装備すんの? しかもこっちの返事完全に聞く前だったよね?
最初から奪うつもりだった?
「マモルは凄いゲロ。こんな序盤でゲーミングチェアと鋼の剣を持ってるなんて」
いやどれもオマエが身に着けてんだろが。
「次の十一回目のログボは光の鎧だゲロ」
光の鎧って何?
「光の鎧を装備すると、戦闘中、ターン終了ごとにHPが回復するゲロ」
なにその強い効果。完全に終盤の性能だよね。
「これでボクもターンごとに回復できるようになるゲロ」
なんでもう装備する気マンマンなんだこのクソガエル。俺まだ転生してないよね?
「マモルの転生を先取りっつってね☆」
串刺しにするぞテメエ。
「ボクがリオル・ダ・マオウフニャフニャの代わりにラスボス倒しに行っちゃおうかなあ~」
何処へでも行け。
「……じゃあ現実世界に戻してくれ」
「懲りないゲロね」
「男にはやらなきゃいけないことがあるんだよ。たとえその確率がゼロに近くてもな」
「全然かっこよくないゲロ」
やかましゃ。
「じゃあ送るゲロ」
パッと舞台は現実世界へ。