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第34話 学校に来たら2人が変でした  (おまけ)

 どうも宝田たからだ光輝こうきです。月曜日の昼、俺はいつものように教室にいます。

 普通に授業を受けて、サッカーのことを考えて、暇を見つけては昼寝をする。

 そんな学校生活を送っています。


 ――いや、送ってました。


「ねぇゆう?なんで顔合わせてくれないの?」

「……あんま学校で話しかけるな?」

「なんでよ。あっ、もしかしてまた1人で抱え込んで……」


 遊の後ろに立つ俺のことなんて見えてないのだろうか。

 言葉を紡ぐ西原にしはらさんは、椅子に座ったまま大きく腕を広げ、なにを思ったのか白崎しらざきを抱え込もうとする。


「ちょっ!ち、違う!抱え込んでなんていない!」


 さすれば当然の反応を見せる白崎は顔の前で手を振り、そして西原さんの肩を抑えた。


「……ほんと?私には悩んでるように見えるけど……」

「いやまぁ悩んでるけど……それとこれとは違うくて――ってやめろ!力を強めるんじゃない!」

「だって悩んでるって!」

「だから違うって!」


 多分西原さんが強引に抱きつこうとしているのだろう。2人の顔を見れば何となく分かる。

 てかこんな光景を1日中見ていれば嫌でも分かってしまうのも当然のこと。


 そんな俺はシラけた目を2人に向け、朝練が終わって教室で突っ伏していた時のことを思い出す。


 というのも、今朝から2人はこんな感じだったのだ。

 金曜に見た2人とは考えられないほどに距離が近く、本当に白崎か?と疑ってしまうほどに表情豊かになった白崎が教室に入ってきた。


 最初こそは疲れで見えた幻覚かな?なんてことも思ったのだが、休み時間が来る度に話し込む2人。

 そしてふとしたタイミングで抱きつこうとする西原さん。


 今になってやっと顔を逸らし始めた白崎なのだが、なにがなんでも遅すぎる。

 もう昼だぞ?もうみんなにシラけた目を向けられる頃だぞ?というか俺はもう向けてるし。


「な、何だよその目。てか見てるなら助けろ」

「……お前本当に白崎か?」

「どこをどう見ても白崎だろ。てか助けろ」

「…………俺に対して冷たくね?」

「誰に対しても変わらん。てかいい加減助けろ?」


 動こうとしない俺に対して顰蹙の目を向けてくる白崎だが、そっくりそのまま返してやりたい。


 てか俺が助けない理由はお隣のお嬢さんがすっごい首を横に振ってるからなんですけどね?ちゃんと彼女のことを見てやってくださいよ。


 そんな言葉を細めた目で訴えかけてやると、なぜか伝わったらしく、俺から西原さんへと視線を向けてくれた。


 さすれば当然というかなんというか……白崎の表情が緩くなった。


「花音のせいかよ!」

「だって約束したじゃん!」

「だーかーらー!違うって!」


 ……うん。本当になにがあった?

 多分この休日になにかあったのだろうが……全く持って検討つかん。


 だってあの冷淡が第一印象の白崎の表情が溶けたんだぞ?それも女っ気がなかった。なのにも関わらず、今では西原さんとイチャコラと……。


 まーじでなにがあった?学校でも2人は仲良さそうじゃなかったし、ファミレスでも会話すらなかった。

 なのにこの1日2日で距離が急激に……?いやわかんね〜。


 心のなかでは能天気に考える俺だが、きっと目の方には光が宿っていないのだろう。

 そのことが分かってしまうほどに、俺は今、この2人の関係性を疑っている。


「だから何だよその目」

「いや……うん。お幸せにな」

「おい待て。なんか勘違いしてるぞ?お幸せになって何だよ」

「誤摩化さなくてもいいよ。俺は察しの良い男だからさ」

「いや違う。全く察しが良くない男だ」


 どんなに白崎が誤魔化そうが、隠そうともしない西原さん。そしてこの距離感を見ればカップルだってことぐらい分かる。

 だから、もうこれ以上深掘りするのはやめよう。


 2人の関係性に疑いを抱いた所で答えが返ってくるわけでもないし、なんならもう答えはわかっている。それに、大親友である白崎が幸せならそれでいい。


「おい宝田。今絶対変なこと考えてるだろ」

「いや?変なことは考えてないぞ?」

「……ほんとか?」

「ほんとほんと」


 相変わらず西原さんの肩を抑える白崎が細めた目を向けてくる。が、なにもおかしなことを考えていない俺は当然の反応を返してやる。


「……ならいいんだが」


 若干疑いながらも、俺の顔に嘘が見当たらなかったのだろう。

 全身を一瞥した後、西原さんの方へと顔を向けた。


「んじゃ俺はこれで」


 多分、俺はここにいるべきではない。

 白崎と一緒に飯でも食おうと思ったのだが、西原さんと幸せになろうとしてるのなら邪魔はしない。

 親友として、白崎の恋路は見守っていたいからな。


 うんうんと自分意見に肯定しながら白崎の席から離れる俺は――


「――そういえばお弁当作ってきたんだけど……食べる?」


 少し自信なさげの声が背後から聞こえる。


「おっまじで?それは食べたい」


 そんな声とは裏腹に――いや、先ほどの嫌そうな姿とは裏腹の高揚感が入り交じる声が背中に届いた。


 ……うん、絶対成功するな。これ。


 なんて思考を頭の片隅で考える俺は、1人寂しくカバンから弁当袋を取り出して蓋を開け――


「おっ、生姜焼きじゃん。ラッキ〜」


 ――大好物の生姜焼きを齧るのだった。

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