107. The last story ~【小説女優】凛花視点~
今日は土曜日。結愛先パイはあの一件からまた学校に戻ってきた。そして今まで住んでいた家から引っ越しをすることになった。あたしの家からも近くなるし、学校にも近い場所になった。
そして今日はその引っ越し。あたしはお手伝いをしている。もちろん春菜ちゃんやサキちゃん、衣吹ちゃん。あとは真白先パイも手伝いに来てくれている。
「これで最後です」
真白先パイが最後のダンボールを運び終えて、あたし達は引っ越しの手伝いが終わる。
「みんなありがとう。今から引っ越し蕎麦を作るわ。あまり広くないアパートだけどゆっくりしていて」
「なら小鳥遊先輩。私も手伝いますよ?」
「いいのよ衣吹。あなたも休んでいて。」
ん?衣吹?あたしの聞き間違いじゃないよね?なんで結愛先パイが衣吹ちゃんを名前で呼んでいるの!?怪しい……。
「あたしが手伝いますよ。結愛先パイ!」
「あなた料理できないじゃない?」
「大丈夫ですよ!あたしだって少しくらいできますよ!プリン作れますから!」
「作るのはお蕎麦なんだけど」
そう言ってあたしはキッチンに向かう。結愛先パイと衣吹ちゃんの間にまた何かあったんだ。あたしに隠れて。結愛先パイの浮気者!結愛先パイはいつもあたしが衣吹ちゃんと何かあると怒るくせに自分のほうが衣吹ちゃんとなんかあるじゃん!あたしが睨んでいると結愛先パイはそれに気がつく。
「なによその顔?」
「結愛先パイが悪いんだもん。」
すると春菜ちゃんが言う。
「あれあれ夫婦喧嘩ですか?妬けちゃうなぁ。」
「仲良くしてくださいよ?二人とも。」
サキちゃんまで……。もういいもん!結愛先パイなんか知らない。あたしは膨れる。結愛先パイは微笑みながらそのまま引っ越し蕎麦を作る。それからしばらくして引っ越し蕎麦を食べ始める。うん美味しい。
「小鳥遊さん。とりあえずひとつ言っておきたいのですが?」
「何かしら天道真白?」
「ここにいる。私たちはあなたと新堂さんの味方です。いつでも頼ってください。できる限りの協力はするので。」
「ええ。そうさせてもらうわ。」
なんだか結愛先パイが素直になった気がするけど……。まあ良いことかな。そしてみんなは帰る。あたしは結愛先パイと二人、新しい部屋にいる。前の家も良かったけど、ここも悪くない。
「凛花。色々ありがとね。」
「あたしは何もしてませんよ?あたしが結愛先パイと一緒にいたいんです。」
「私は……臆病でずるいの。凛花が勇気を出してみんなに事実を伝えて、私を迎えにきてくれた。でも私はまだ凛花のご両親に話す勇気がない……ごめんなさい。」
「結愛先パイ……。」
そうだった。結愛先パイは優しい人だ。だから自分のせいだと責める。本当はそんな事無いのに。きっとあたしが傷つくことを怖がっているんだろうな。
「言わなくてもいいんじゃないですか?」
「え?」
「言わなくていいんですよ。あたしは別に気にしないですから。それに今は一緒に居てくれるだけで十分幸せです。」
それでもいずれは話すときが来る。いつかはあたしの両親に。あたしの大切な家族に話さないといけない。
「そうね……。その時が来たらきちんと説明するわ。」
「はい。それじゃあたしも帰りますね」
「送っていくわ。途中まで」
あたしは結愛先パイが大好きだ。これからもずっとそばにいたいな。そう言えば最近、結愛先パイとはイチャイチャしていないような気がする……。無性に甘えたい……。
「どうかしたの凛花?」
「へ?いや別に……。」
「ふーん。てっきりイヤらしいこと考えていたのかと思ったけど?」
「ちっ違いますよ!ただ……」
結愛先パイはいつもの悪い顔をしてあたしに問い詰めてくる。
「ただ?」
「ちょっとだけ寂しかったなって思いまして……。結愛先パイが足りないっていうか……なんというか……」
「もう可愛いんだから。ほらおいで?」
「いいんですか?」
結愛先パイはあたしを抱き寄せて頭を撫でる。やっぱり落ち着く。結愛先パイの胸の中は暖かい。しばらく抱きしめられていると、結愛先パイはあたしを離す。もっとしてほしい……。足りないよ。
「結愛先パイ……もっと……」
「あなた帰るんじゃなかったの?私まだ部屋の片付けがあるんだけど。」
「うぅ……。意地悪ですね。」
「ふふっ。ならご両親に連絡しなさい。新しい布団狭いわよ?それでもいいの?」
あたしは結局そのまま結愛先パイの新しい部屋に泊まることにした。新しい布団は確かに狭かったけど、結愛先パイとくっついて寝ることが出来た。結愛先パイの温もりを感じながら眠りにつく。
これから先、あたしと結愛先パイは幸せになれるかは分からない。でもこの人と一緒ならどんなことでも乗り越えられる。あたしはそう信じている。
「ねぇ凛花?」
「なんですか結愛先パイ?」
「大好きよ。」
「はい。あたしもです。」
あたしと結愛先パイはちょっとの幸せを噛み締めながら、これからも変わらず過ごしていくのでした。