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104. あたしにしか

104. あたしにしか




 そしてその日の夜。あたしはなかなか眠れなかったのでリビングに行き、ソファーに座ってぼーっとしている。すると、後ろから足音が聞こえてきたので振り返ると、そこには衣吹ちゃんがいた。


「眠れないの凛花ちゃん?」


「うん。なんか急に力が抜けちゃった感じ。」


「そっかぁ。日下部さんも麻宮さんも本当にいい人だね。」


「自慢の親友だよね。もちろん衣吹ちゃんも。」


 あたしが結愛先パイと付き合っていると知っても、偏見の目を向けずに応援すると言ってくれたし。そんな親友を持って幸せだよなぁって思う。


 すると、衣吹ちゃんは優しく微笑みながらこう言った。


「私は彼女がいいんだけどね?」


「衣吹ちゃん!?」


「ねぇ凛花ちゃん。ぎゅーってして?そのくらいならいいでしょ?」


「えっ……まあそれくらいなら……。」


 あたしは両手を広げてハグ待ちをしている衣吹ちゃんを抱きしめた。衣吹ちゃんの胸の感触が……。やばいよこれ!しばらく抱き合っていたけど、恥ずかしくなって離れる。


「顔赤いよ凛花ちゃん?もしかして私の胸さわりたくなった?いいよ凛花ちゃんなら。」


「からかわないでよ……。でも気持ちよかったかも……。」


「ふふっ、私は凛花ちゃんのこと大好きだからいつでも頼ってくれていいんだからね!」


 そう言って微笑む衣吹ちゃん。本当に結愛先パイに似てきたな……。こうしてあたしたちの夜は更けていったのであった。


 少し元気が出たかもしれない。みんなありがとう。



 そして月曜日。あたしは真白先パイにメッセージをもらい生徒会室に行く。あたしなんかやっちゃったかな?そんな不安を抱えながらも扉を開けると中には真白先パイしかいなかった。


「あっ凛花さん。すいませんお呼び立てしてしまって。そこへ座ってください。」


「はい……。」


 緊張しながら席に着く。今日は二人きりなんだ……。しかも学校で。いつもよりさらにドキドキしてきたよぉ。そんなことを考えているといきなり爆弾発言をされた。


「凛花さん。間違ってたら申し訳ないのですが。小鳥遊さんとお付き合いしているのですよね?」


「はい!?」


 真白先パイからまさかのカミングアウトを受けた。どうして知っているの!?


「あの……どこでそれを……。」


「どこでと言うより、お二人の仲の良さは友達のそれを越えています。見てればわかります。」


 うぅ……。でもやっぱりバレてるのかぁ。仕方がない。正直に打ち明けよう。ん?待てよ……?生徒会長の真白先パイが直々にあたしを呼び出す?もしかして退学とか!?風紀を乱すのは許しませんとか!?


「あたし……退学ですか……?」


「退学?いえ。私にはそんな権限はありませんよ。それに別に校則違反もしていないですし。それにお二人以外にも、この学校には隠して同性同士お付き合いしている方たちは少なからずいますから」


「良かったぁ……。じゃあ何の話なんでしょうか?」


 ほっとしたのと同時に疑問が生まれる。一体どんな話なのか想像できないのだ。すると、真白先パイがあたしに話す。


「小鳥遊さんのご両親はIT企業の有名な会社の社長さんです。今回小鳥遊さんが実家に帰ったのは、お見合いをするためです。そして……この学校をやめるのでしょう」


「えっ……?」


「私は担任の先生から、小鳥遊さんの中学生時代の事を初めから聞いています。クラスでは良く見てあげてほしいと言われていました。」


「そうだったんですか……。」


 知らなかった。結愛先パイはお金持ちだってことくらいは知っていたけど、そこまでとは思ってなかったよ……。それなら……もう結愛先パイは……。あたしのこと……。


「凛花さん。小鳥遊さんは繊細で純粋な人です。でも過去の出来事から人と関わるのが苦手で恐怖を感じていた。でも……あなたと一緒にいる小鳥遊さんはいつも楽しそうな表情をしていました。私はあなた方二人の事を応援しています。だから小鳥遊さんにも幸せになってほしいと思っています。」


「真白先パイ……」


「小鳥遊さんを幸せにしてあげてください。これは凛花さんにしかできないことです。」


 あたしにしかできないこと。それはわかっている。だけどあたしは結愛先パイを幸せにする自信が無いんだよ……。あたしなんかでいいのかなって思ってしまう。


 そんなことを思っていたら、真白先パイが立ち上がりあたしの横に来て頭を撫でながらこう言った。


「凛花さんが1番輝ける場所は小鳥遊さんの側ですよ? それは小鳥遊さんも同じです。」


 その言葉を聞いた瞬間、何かが吹っ切れた気がした。そうだよ。あたしができることって……。


 あたしは勢いよく立ち上がる。


 あたしは結愛先パイのことを誰よりも好きなんだもん! だから…… 絶対にあたしが結愛先パイを幸せにする! そしてあたしは決意をした。結愛先パイを絶対に連れて帰る! 今度こそ離れないって決めたから。


「凛花さん。これ。小鳥遊さんのご実家の住所です。」


「ありがとうございます真白先パイ!あたし頑張ります!この想いだけは伝えてきますから!」


 こうしてあたしは結愛先パイの実家に向かうことになった。必ず連れ戻してみせる!結愛先パイはあたしがいないとダメなんだから!

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