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94. 初めての旅行(中編)

94. 初めての旅行(中編)




 温泉旅行を楽しんでいる、あたしと結愛先パイは最後の目的の工芸館に歩いていく。ここは旅館からも近いので少し遅くなっても安心だ。工芸館に着くと受付で入館料を払う。そして、あたし達は館内に入っていった。中に入ると陶芸品やガラス細工などが飾られていた。


 この工芸館の目玉は、なんと言っても陶芸体験コーナーだろう。お皿やコップなどを作ることができる。今の時期は春菜ちゃんに聞いた期間限定のスノードーム作りが人気らしい。そんな陶芸体験のコーナーには結構な数の人が集まっていた。


 でも、その大半が若い女性だった。まあ……そうなるよね。早速あたしと結愛先パイはスノードームを作ることにする。


「結愛先パイ。頑張って作りましょう!」


「そうね。作るならしっかりと作らないとね。」


 結愛先パイは少し張り切ってくれている。良かった。これで上手く作れるといいけど……。それから1時間後。ようやくスノードームが完成した。どうだろうか?あたしが作ったスノードームは……。うん!いい感じに仕上がってると思う。結愛先パイをイメージして落ち着いた色でまとめてみたのだ。一方、結愛先パイの方はというと……。


 とても綺麗なスノードームが完成していた。青い中に雪が舞っているような幻想的な雰囲気を出している。中にいるペンギンのマスコットも可愛い。これまた凄く素敵である。


「結愛先パイって器用ですね!」


「ありがとう。凛花も上手じゃない。とても可愛くて素敵なスノードームだと思うわよ?」


「えへへ。嬉しいです。ありがとうございます。その……これ……結愛先パイにプレゼント。」


「えっ……?」


「誕生日プレゼント用意出来なかったから……。こんなので結愛先パイは気に入らないかもしれないけど……。」


 結愛先パイは驚いていたが、すぐに笑顔になってくれた。そして、優しく微笑んでくれる。


「ありがとう凛花。私はあなたと温泉旅行に来れただけでも嬉しいのに。大切に飾らせてもらうわね。本当にありがとう。凛花。」


 良かった。結愛先パイは喜んでくれているようだ。あたしは心の底からホッとする。そして、2人でスノードームを見つめながらしばらく過ごす。結局あたしは結愛先パイが作ったスノードームをもらったんだけどね……。


 そして旅館に戻り、用意してある部屋着に着替えると夕食の時間になる。今日は新鮮な魚介を使った料理がメインのようだ。


「わぁ……美味しそう……。」


「これはなかなかね……。」


 2人とも思わず感嘆の声をあげる。見た目も鮮やかで食欲を刺激する匂いがする。そして、早速食べ始める。


「ん~!!美味しい!!」


「あら。本当だわ。」


 魚の刺身はとても新鮮で口の中で溶けていくようだった。お造りだけじゃなくて煮物なども絶品でご飯が進む。そして食事もデザートを残すのみになったころ、あたしがお願いしていたあれが届く。


「えっ……?これは?」


「結愛先パイ。1日早いですけど誕生日おめでとうございます!色々準備出来なかったけど、ケーキ用意したので食べてください。」


「ありがとう凛花。まさかケーキを用意してくれるなんて思わなかったわ。わざわざ私のためにここまでしてくれるなんて……。」


 結愛先パイの目には少し光るものが見えた気がした。その後、食事を済ませると部屋に戻って入浴の準備をする。ここの大浴場も凄い豪華らしいけど、やっぱり部屋についている温泉に二人きりで入ることにする。


「それでは入りましょうか?結愛先パイ。」


「そうね。入りましょうか。」


 お互いに浴衣を脱いでいく。結愛先パイのスタイルはかなり良くて羨ましいくらいだ。まぁいつも見てるんだけどさ……。結愛先パイの身体を見たら興奮してきてしまった。


 結愛先パイはタオルで前を隠している。あたしは恥ずかしかったけど、思い切って結愛先パイの前で裸になることにした。すると結愛先パイが少し頬を赤くしながらこちらを見てくる。


「あなた。少しは恥じらいをもったら?」


「えっ!?あ……はい!ごめんなさい!」


「ふふっ。冗談よ。」


 そのまま二人で温泉に入る。今日一日色んな所に行った疲れが一気に吹き飛ぶくらい気持ちいい。大自然に囲まれた場所だから空気も澄んでいるし、空には無数の星が見える。


「ねぇ凛花?いい友達を持ったわねあなた。」


「えっ?」


「色々教えてもらったんでしょ?あなたが一人で考えられるとは思わないもの。」


 バレてる……。でもみんなに聞いたからここまで結愛先パイを喜ばすことができた。本当に感謝しかないよ。その時結愛先パイがあたしの肩にもたれてくる。


「結愛先パイ?」


「でも。あなたが私のために一生懸命考えてくれたことが一番嬉しいわ。ありがとう凛花。」


 あたし達はそれからしばらく湯船に浸かりながら色々な話をした。こうして、結愛先パイと2人で過ごす時間は過ぎていったのでした。

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