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93. 初めての旅行(前編)

93. 初めての旅行(前編)




 温泉旅行当日。あたしは駅前で結愛先パイと待ち合わせしている。大丈夫みんなのおかげでデートプランは完璧だ。今日のために新調した洋服を着て、少しだけメイクもしてみた。髪型だっていつものじゃなくてちゃんとセットしてみたりなんかして……って、そんなことより今は結愛先パイが先決! 時計を見るともう約束の時間まであと五分しかない。ヤバい急がないとっ。


 駅前に着くとすでに結愛先パイの姿がある。とりあえず間に合った……。


「お待たせしました結愛先パイ!」


「おはよう凛花。あら?可愛くしてきたの?急いで髪がボサボサになったのは残念だけど。」


「えっ!?」


 あたしは頭を押さえる。結愛先パイはあたしのその姿を見て微笑んでいる。うぅ。最悪……。これだから髪の毛をいじるのは嫌なんだよね……。でも今から直す時間はない。仕方ない。このまま行くしかないか……。


「それじゃ行きましょうか。」


「はい……」


 こうしてあたしたちは電車に乗って目的地に向かった。


「わぁ~。凄い景色ですねー。」


 窓の外に広がる絶景に思わず声を上げる。この辺りは山に囲まれていて海や湖など自然豊かなスポットが多いらしい。今回はその中でも特に綺麗な景色が見られる場所に行く予定になっている。


「温泉楽しみですね!結愛先パイ!」


「部屋に温泉があるのね。これなら気兼ねなく入れそうね。ふふっ。二人きりで。」


 ……あっ。そっか……。結愛先パイの言葉にドキッとする。顔が熱くなるのを感じる。ダメだダメだ。まだ早いよあたし。このままじゃいつも通り結愛先パイのペースになっちゃう!今日はあたしがリードしないと!


 それからしばらく電車に揺られ目的の駅に着いた。そこからバスに乗りかえて更に移動する。そして着いた先は……。目の前には壮大な光景が広がっていた。澄んだ青い空の下に青々と茂った緑が広がる。まるで絵画のような美しさだった。


 隣にいる結愛先パイの方を見る。すると結愛先パイも同じタイミングでこっちを見たようで目が合う。お互いに笑顔になる。そして結愛先パイが手を繋ぐ。


「えっ?」


「今日は誰も見てないわよ?それにわたしと凛花は付き合っているんだもの。ダメ?」


 そう言ってくる結愛先パイはすごく可愛かった。そのまま景色を見ながらゆっくりと旅館に向かって歩き始める。手を繋いだままゆっくり歩くだけでこんなにも幸せな気持ちになれるなんて知らなかった。


「晴れて良かったわね。歩くだけでも風が気持ちいいわ」


「本当ですね!空気が美味しいです!」


「ふふっ。それは何よりね。さあ、もう少し歩けば着くみたいよ。」


「はい!」


 旅館に着くとすぐにチェックインをして部屋に向かう。


「わぁ……綺麗なお部屋ですね~」


「良い眺めね。それに景色も最高じゃない?」


「はい!凄く素敵です!」


 窓から見える景色を見てテンションが上がる。来てよかった!


「さて。荷物を置いたので凛花ちゃんのデートプランを始めましょう!結愛先パイ!」


「ふふっ。楽しみね」


 あたしはまずは春菜ちゃんから聞いたおすすめの観光地を回ることにする。まずはここから近いところだと……ここかな? あたしはスマホを取り出して地図アプリを開く。そして結愛先パイと一緒に画面を見つめながら目的地を目指す。


 しばらくして目的地に到着する。そこは展望台になっていて、遠くの景色を一望できる場所だ。高台にあるその場所からは街並みはもちろんのこと山々も一望でき、とても見晴らしが良い。


「うわぁ~!すごい!凄くキレイですよ結愛先パイ!」


「えぇ。本当に綺麗ね。この景色を凛花と見れて幸せよ」


 そう言って優しく微笑む結愛先パイはとても美しかった。そんな風に言われるとあたしも嬉しくなってつい口元が緩んでしまう。


 それからしばらくの間あたしたちは景色を楽しんだ後、今度は近くの観光スポットを巡ることにした。ここは美術館があってなかなか有名な場所らしい。せっかくなので行ってみることにした。中に入ると様々な作品が展示されていた。そのどれもが美しい絵で見る人を魅了する力を持っているようだった。


 そのあとはサキちゃんに教えてもらった蕎麦屋さんに向かう。


「結愛先パイ。そこはそば粉を使った手打ちうどんが美味しいみたいですよ。」


「へぇ。私は蕎麦とかうどんとか好きだから楽しみだわ。」


 それからあたしたちは、おすすめのそば粉を使った手打ちうどんを食べる。その後は近くにある神社に行って参拝をする。


「結構回れたわね?」


「あの……結愛先パイ?もう一ヶ所行きたいところあるんですけど。疲れてます?」


「平気よ。凛花と一緒なら疲れることないわ。それに最後は温泉があるじゃない。」


 結愛先パイの言葉にまたドキドキしてしまう。私は本当に結愛先パイのことが大好きなんだ。

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