89. 真白先パイ
そして週末。ハロウィンパーティー当日を迎える。あたしは家の近くの大きなスーパーに天道生徒会長を迎えにいく。実はあたしと天道生徒会長は家が近いことがこの前判明したんだよね。だから一緒に結愛先パイの家に行くことになっている。まぁお菓子を買うついでもあるんだけど。
「あっ天道生徒会長!」
「おはようございます新堂さん。今日はわざわざ申し訳ありません。」
「いえいえ。天道生徒会長の私服可愛いですね?」
「そっそうでしょうか?普通だと思いますが……。」
天道生徒会長は少し照れているのか顔を赤くしている。あたしより一つ年上なのにとても可愛らしい。そのまま買い物をして結愛先パイの家に向かうことにする。結構お菓子買っちゃったかも……。そんな時天道生徒会長がため息をつく。
「はぁ……。」
「なんか無理矢理誘ってすいません。」
「いえ。誘われるのはすごく嬉しいのですが。小鳥遊さんが私になんの衣装を用意してるのかが不安で……。」
大丈夫ですよ。と言えない自分がいる。さすがに結愛先パイでもそこまでしない……と思いたい。
「あと私のことは真白と呼んでいただいていいですよ。生徒会長をつけるのは面倒でしょうし。今は学校ではありませんし」
「じゃあ……真白先パイ!あたしは凛花でいいですよ」
「分かりました。凛花さん。それじゃ小鳥遊さんの家に行きましょう。」
なんかすごく仲良くなった気がする。真白先パイも普通の女の子だもんね。生徒会長してるから、こっちも堅苦しく意識しちゃってたよね。
それからあたし達は電車に乗って無事に結愛先パイの家にたどり着くことができた。インターホンを押すとすぐに結愛先パイが出てくる。
「いらっしゃい。もうみんな来てるわよ」
「お邪魔します。」
真白先パイに続いてあたしも中に入る。リビングにはもうみんなが着替えをして待っていた。春菜ちゃんはオレンジ色を基調としたドレスにジャックオランタンの大きめのバッジをつけていて、サキちゃんは可愛い赤ずきんちゃん。衣吹ちゃんは胸を少し強調した感じの魔女の格好をしていた。みんな可愛い!
「それじゃ私たちも着替えましょう。凛花、天道真白こっちの部屋に来て。用意してあるから。」
「あの……小鳥遊さん。私信じてますよ?」
「なんのことかしらね?」
うん。分かってる。でもちょっとだけ覚悟してほしいかな……。だって結愛先パイだし……。
あたしたちは部屋に入り衣装に着替える。あたしは黒猫の衣装。耳としっぽ。それに黒いマント。なかなかいい感じなんじゃないかな?ちなみに真白先パイは……。
「これは修道服ですか?」
「ええ。真面目なあなたに似合うと思って。本当はレースクイーンとかでも良かったんだけど泣かれたら困るし。」
「結愛先パイはドラキュラだから対比が良くていいですね!真白先パイ!」
「はい良かったです。凛花さんも黒猫可愛いですよ。」
そのやり取りを聞いていた結愛先パイがいきなり壁を叩く。ドンッ!!! ひぃっ!?びっくりさせないでほしいんですけど!!そして結愛先パイは静かに言う。
「真白先パイ……?凛花さん……?ふーん。ずいぶん仲がいいのね?」
「結愛先パイこれは……。」
「今日来る途中にそう呼ぶことにしたんです。」
真白先パイが答えてくれる。結愛先パイはなぜか不機嫌になる。どうしよう。こんなに怒ると思わなかった。とりあえず謝ろうと思ったその時だった。結愛先パイがあたしの耳もとで囁く。
「また浮気したのね?あとでいっぱいお仕置きしてあげるから。声がでなくなるほどすごいのしてあげるわね?」
ゾクっと背中に寒気を感じる。お仕置きって!?あたし何されるの!?しかも二人きりになった時にやるつもりだよねこれ絶対。
「ほら早く準備して。パーティー始めるわよ!」
それから結愛先パイと真白先パイと衣吹ちゃんはキッチンで料理の準備をする。あたしと春菜ちゃんは部屋の飾り付け。サキちゃんはお菓子を用意してくれていた。
キッチンがなんで結愛先パイと仲の悪い衣吹ちゃんと真白先パイあのなのか分からないけど……きっと適材適所だから仕方ないと思う。しばらくしてみんなでテーブルを囲む。結愛先パイが乾杯の音頭をとる。
こうしてハロウィンパーティーが始まる。
結愛先パイの家でのパーティーが始まった。結愛先パイは飲み物を飲みながらみんなに話しかける。さっきまで怒ってたのに急にニコニコしだした。なんか怖いんですけど……。
「さぁみんなどんどん食べてね。まだまだたくさんあるから」
「あの結愛先パイ……その……。」
「あら?どうしたの凛花?何か言いたいことでもあるのかしら?」
「いえ……。」
怒ってる……。結愛先パイがめっちゃこっち見てる。うぅっ……。でもせっかくの楽しい雰囲気壊したくないし……。仕方ないよね。諦めよう。あたしはそのままハロウィンパーティーを楽しむのでした。