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88. お誘い

88. お誘い




 あたしは小説演劇同好会の部室を出てそのまま結愛先パイのあとについていく。いったいどこにいくのだろう?文化部の人たちも帰る準備をしている。廊下を歩いて階段をおりて、そのまま目的の部屋に行く。


「着いたわ。入るわよ凛花。」


「えっ!?ここって……」


 結愛先パイはそのまま扉を開ける。すると中には帰る準備をしていた天道生徒会長の姿がある。そう……ここは生徒会室だ。


「小鳥遊さんに新堂さん。どうかしましたか?私は帰るところなのですが?」


「天道真白。あなた週末予定あいているかしら?」


「週末ですか?特に用事はありませんが……?」


「なら。あなたもハロウィンパーティーに参加しなさい。凛花がどうしても文化祭の時のお礼をしたいみたいだから。」


「えっ!?あたし!?」


 なぜかあたしがお礼をしたいことになっているんだけど……。まぁ間違ってないけど。結愛先パイも素直じゃないな。そこも可愛いんだけどさ……。


「お誘いは嬉しいのですが、ハロウィンパーティーは仮装もするのですよね?私はあまりそういうのは……。」


 そう言いかけた天道生徒会長に結愛先パイは自分のスマホの画面を見せる。


「じゃあこれは何かしら?」


「なっなんであなたがその写真を!?」


「優秀な新聞記者が私にくれたの。」


 その画像はあの文化祭の顔を赤らめながら頑張るメイド服姿の天道生徒会長だった。あたしは送ってないから、結愛先パイ直接春菜ちゃんからもらったな……?


「どうしたの?顔が赤いわよ?風邪でも引いたのかしら?」


「こ、これは違います!違うんです!」


「なら参加してくれるかしら?」


「うぅ……。わかりました……。参加させていただきます……。」


 なんだこのやり取り……。結愛先パイはやっぱり結愛先パイだな。


「あの。でも私はその衣装とかがないのですが……?」


「安心して。私が用意してあげるわ。ミニスカポリスとかでいい?正義ってあなたに似合いそうよね?」


「ミニスカ!?いえ……その短いのは……恥ずかしいです。」


「メイド服も大概短いと思うけど?わがままなのね天道真白って。まぁ考えとくわ。」


 結愛先パイが天道生徒会長に意地悪して楽しんでる……。というより、本当にミニスカートの衣装を用意するつもりなのかな……?こうして天道生徒会長の参加が決まった。


 そして帰り道。あたしは結愛先パイと駅まで一緒に帰ることにする。


「結愛先パイも素直じゃないですね。自分でお礼をしたいからって誘えばいいのに。」


「そんなんじゃないわよ。あなただって天道真白にお礼をしたいのは変わりないわよね?」


「いや……それはそうですけど……」


 結愛先パイと言い合っても言いくるめられるだけだからその辺にしておく。それにしても、まさか天道生徒会長まで巻き込むとは思ってなかったな。結愛先パイはあまり人といるの好きじゃないのに。結愛先パイも変わったのかもしれないな。


 あたしは駅で結愛先パイと別れて帰宅することにした。今日は色々あって疲れたな……。


 そして次の日。あたしは日直なので早めに学校にいく。今月も花壇の水やりはあたしのクラスの担当だ。そういえばあの時あたりから衣吹ちゃんと仲良くなった気がする。まぁまさかあたしのことを好きだとは思ってなかったけどさ……。


 水やりをしていると後ろから声をかけられる。振り返るとそこには春菜ちゃんの姿があった。もうそろそろ寒くなってきたからか、いつもの制服の上にコートを着ていた。その手にはコンビニ袋を持っている。


「おはよう凛花ちゃん。」


「あれ春菜ちゃん早いね?」


「凛花ちゃんにお礼をしたくてさ。こんなので申し訳ないんだけどさ」


 すると春菜ちゃんはコンビニ袋から温かい飲み物をあたしに渡してくれる。


「これ。ココアだけどよかったら飲んでよ。」


「えっ!?いいの?」


「うん。凛花ちゃんのおかげで私また助かっちゃったしさ。」


「春菜ちゃんの本番はこれからでしょ?」


 すると春菜ちゃんは『そうだったぁ』と言って嬉しそうに笑ってくれる。その笑顔がとても可愛かった。そのあと、日直の仕事を終えて教室に戻ると衣吹ちゃんが私に話してくる。


「おはよう凛花ちゃん。凛花ちゃんは何の仮装するの?」


「あたしは黒猫かな。にゃんにゃんって」


「……それ私のこと誘ってる?困るよ……。でも可愛い~。絶対似合うよ。楽しみにしてるね。」


 誘っていないけど……結愛先パイと同じこと言ってくるな衣吹ちゃんは。良く考えたら似てるところ多いんだよな……結愛先パイと衣吹ちゃんって。もしかして前世で姉妹だった?……だから惑わされちゃうのかな私……。

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