67. 春菜ちゃんと放課後デート
あたしは春菜ちゃんと共に街を歩いている。今日は部活が休みだから帰ろうかと思っていたところ、春菜ちゃんに『凛花ちゃん暇?』と言われたのでこうして一緒に放課後デート的なものをしているのだ。
「久しぶりだね。凛花ちゃんと遊ぶの」
「そうだね。最近は部活とか忙しかったからね」
それにしても……。
隣にいる春菜ちゃんをチラッと見る。彼女はニコニコと楽しげな笑みを浮かべている。そんな彼女の姿を見ているだけで心が癒されるような気がした。
やっぱり可愛いよなぁ。春菜ちゃんは本当に今どきのJKって感じだ。明るくておしゃれでおまけに性格も良くて友達想い。結愛先パイや衣吹ちゃん、あとサキちゃんとは違ったタイプだけどすごく良い子なのは間違いないと思う。
そんなことを考えていると春菜ちゃんと目が合う。
「ん?私の顔に何かついてる?」
一瞬キョトンとした表情を見せる彼女だったがすぐにいつも通りの明るい笑顔に戻った。
あー……かわいい。思わずドキッとして目を逸らしてしまう。何だろうこの気持ち……。今までこんなことなかったんだけどなぁ。
そしてしばらく歩くと洋服屋さんの前に着いた。どうやらここに入るみたいだ。中に入ると色とりどりの服が並んでいる。
女の子向けのお店だけあって可愛らしいデザインのものが多い。春菜ちゃんと一緒に店内を見て回っているとふとあるものが目に入った。
「ねぇ凛花ちゃん見て!めっちゃかわいくない!?」
そう言って春菜ちゃんが指差す先にあったのは今年の秋コーデ特集と書かれたポップだった。そこにはチェック柄のロングスカートにリボンがついたブラウスを着たマネキンが写っている。そのどれもがとても似合っていて可愛いかった。
「確かにいいかも……」
「おー。ついに凛花ちゃんもおしゃれに目覚めたか!」
「ちっ違うよ!ただちょっと気になっただけだし……」
あたしの言葉を聞いた春菜ちゃんはニヤッとする。でもちょっと値段が高いかなぁ。高校生のお小遣いじゃなかなか手が出せない金額である。
「でも高くて買えないよね。可愛いけどさ……」
「じゃあ同じようなやつをもっと安いお店探そう!」
「えっ!?いや悪いよ!」
慌てて言うと春菜ちゃんはニコッとして言った。
「遠慮しないでいいよ。私のセンスに任せなさい!」
そう言って春菜ちゃんに引っ張られていく。確かに春菜ちゃんはセンスあるし、甘えちゃおうかな。
そのままお店を出て何件か回った後、あたしたちは最初のお店で見たような可愛い服を見つけた。今度はセール品ということもあって手が出しやすい価格になっていた。早速試着してみることにする。
うわぁ〜……。鏡を見るとそこには自分の姿が映っていた。普段はあまり意識しなかったけどこうやって見ると意外と悪くないんじゃないかと思ったり思わなかったりする。
「どっ……どうかな?」
「めっちゃ大人っぽいじゃん凛花ちゃん!アクセとかコスメとかも選んじゃお!絶対似合うから!!」
それから春菜ちゃんのアドバイスを受けながら買い物をした。こういうことをするの初めてだから新鮮で楽しかったな。
そして帰りに本屋に寄ることにする。最近は小説読んでないし。すると春菜ちゃんが何か思いついたようにポンっと手を叩いた。
「そうだ!せっかくだから私も本読もうかな。凛花ちゃんのおすすめが知りたい!」
「あたしのおすすめ?それじゃ……これなんかいいんじゃないかな?短めの作品で恋愛小説だって」
「じゃあ、あらすじ見よ!」
読書感想文の効果が現れていてあたしは少し嬉しくなる。春菜ちゃんとその小説のあらすじを読んでみることにする。
【隣で輝き咲く一輪花:あらすじ】
太陽のように輝く笑顔で、あなたは私を照らしてくれた。だから私は――あなたを守りたいと思ったんだ。
あなたはどんな時でも輝いていて……そんなあなたに、いつしか私は恋をした。臆病で、泣き虫な私が、この想いを伝えられる日が来るのかは分からないけど……いつか私もあなたの隣で輝き咲く一輪花になれたら……
これは、私があなたと過ごす日々の中で見つけた"愛しい"という感情の物語。
なんかすごい……良い話だなぁ。あらすじだけ読んだだけで面白そうなのが伝わってくる。
春菜ちゃんの方を見る。目をキラキラさせていてまるで子供みたいにワクワクしているようだった。どうやら気に入ったみたいだ。
「じゃあこれ買っちゃお!」
「うん。いいと思うよ。あたしも買おうっと」
本を買ってあたしと春菜ちゃんは家に帰ることにする。
「楽しかったね。凛花ちゃんありがと付き合ってくれて!この本頑張って読むからね!」
そう言って可愛い笑顔をくれる春菜ちゃん。なぜか春菜ちゃんにお礼を言われる……。
あたしの方こそありがとうなんだけど。すごく楽しい時間だったし。でもそこが春奈ちゃんの良いところであり魅力でもあるのかもしれない。本当に可愛くて良い子だよ春菜ちゃんは。