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61. 優しい手

61. 優しい手




 シャワーの音が部屋にも聞こえてくる。あたしはベッドに腰掛けている。さっきからずっと、胸がドキドキしてる。お風呂場からドライヤーを使う音と、鼻歌が聞こえてきた。


 そう……今あたしは結愛先パイとラブホテルにいる。なぜか帰らずここに寄ったのだ。結愛先パイに『水瀬衣吹とも行ったんだから別に問題ないわよね?』って言われてしまい、断れなかった。でもあたしのワガママで一緒にいてくれるのだから文句は言えない。


 ダメだ……喉が乾いた。あたしは冷蔵庫を開ける。するとそこには飲み物の他にいわゆる『大人のオモチャ』が販売されていた。


 ……うぅ~!こんなの見ちゃダメだよぉ……。


 その時、バスタオルを巻いて髪を拭きながら結愛先パイが出てきた。タイミング悪すぎ!


「あら?凛花使いたいの?買おうか?」


「いりません!」


 結愛先パイはクスッと笑う。そしてあたしの隣に座ってきた。


「本当に?私も使ったことないから少し興味あるんだけど?」


「使うってどうせあたしにですよね!?」


「もちろんよ。私は凛花の手の方がいいもの?凛花もそうなのかしら?」


「それは……その……」


 あたしは顔を真っ赤にする。結愛先パイはまた悪い顔をしている。本当にこの人は……。でも確かに、結愛先パイには敵わないと思うけど、あたしだって気持ちいいことは嫌いじゃない。それに、結愛先パイとならオモチャ使っても……。


 って!?何考えてんのあたし!?ダメじゃん!!そんなの!絶対!ダメ!


「あたし!シャワー浴びてきます!」


 あたしは慌てて浴室に向かった。結局あたしは逃げてしまった。あのままだと流されてしまいそうな気がしたから。……なんであんなこと考えたんだろう……。浴室を出て体を拭く。鏡を見ると顔が赤い。まだドキドキする。心臓の鼓動がうるさい。


 結愛先パイとは初めてじゃないのに……場所が違うだけでこんなにも緊張してしまうなんて。あたしは深呼吸をする。そして戻る。すると結愛先パイはあたしを引っ張りベッドに押し倒す。


「えっ!?ちょっと結愛先パ……んむっ!?」


 結愛先パイはいきなりキスしてきた。あたしは何も考えられなくなる。息ができない。苦しいはずなのに頭がぼーっとしてくる。しばらくして唇をやっと離してくれた。結愛先パイの顔を見る。いつもより色っぽい表情をしている。目が合う。その瞬間ドキッとした。結愛先パイの目が獲物を狙うような目つきになる。


「凛花……今日は我慢できないわ……お願いがあるの?あなたの初めてがほしいわ。いいかしら?」


「えっ……はい。優しくしてくださいね……結愛先パイ……」


 ついにか……今まで結愛先パイはいつも触れてはくるけど……。だから今回が初めてだと思う。期待半分不安半分だ。あたしの返事を聞いた結愛先パイはとても嬉しそうだ。そして耳元で囁かれる。


「大丈夫。優しくするから」


 あたしの体はビクッとなる。結愛先パイの声がすごくセクシーだったからだ。そして結愛先パイは首筋に舌を這わせてくる。あたしの体中に電流が流れる感覚に陥る。そしてその指が触れてくる。


 怖い……。怖くてたまらない。でもそれ以上に嬉しいと思っている自分がいる。結愛先パイの攻め方は優しかった。ゆっくりゆっくりと時間をかけて、あたしのことを気持ちよくしてくれる。


「結愛……先パイ……」


「それじゃ……いくわね?」


 そしてとうとうその時が来た。結愛先パイの指が初めてあたしの中に……。



 ☆★☆★☆★



 そしていつの間にか眠りについていた。朝起きると隣には裸の結愛先パイがいた。どうやらあたしは抱き枕のように抱きしめられていたようだ。


 そしてあたしは昨夜のことを思い出す。


 ……ああぁ~!思いっきり思い出してしまった!なんかすごいこと言っちゃった気がする!うぅ~!どうしよう!どうすればいいの! あたしの頭は混乱していた。とりあえず起きてシーツを確認すると少し赤くなっている。


「あら?おはよう凛花。どうかしたのかしら?急に顔を赤くしたりして。」


「いやその……えぇっと……」


「ふふっ。可愛かったわよ?自分から動いちゃって?初めてであれはヤバイわ」


「言わないで結愛先パイ!」


 そう言って頭を撫でられる。なんだか恥ずかしい。それから服を着る。というか浴衣姿で朝歩いていたら……お泊まり確定のような気がするけど、大丈夫かな?


 そしてそのまま結愛先パイの家に帰ることにする。道中はずっと手を繋いで歩いている。その手から結愛先パイの温もりを感じる。あたしは幸せだなって思う。


「明後日から学校かぁ……。」


「そういえば、あなた宿題終わってるの?」


「もちろんですよ!結愛先パイこそどうなんですか?」


「私は終わったわよ?私を誰だと思ってるの?」


 あたし達は笑いながら歩く。こんな毎日が続けばいいなと思った。でもきっといつかそれも終わる日が来るかもしれない……。だから今は結愛先パイと一緒にいたいって思った。

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