59. 夏祭り
夏祭り当日。あたしは浴衣に着替えて結愛先パイを迎えにいく。お風呂に入って髪を乾かし、準備万端で待ち合わせ場所に向かうと、そこには結愛先パイの姿があった。
「すいません。遅くなっちゃいました。」
「時間通りよ。そんなに待ってないから。」
「そうですか?なら良かったです。」
それからあたしたちは一緒に祭りの会場に向かって歩き出した。
「やっぱり……緊張するわね。外で凛花と会うのは。」
「えっ?そうですか?あたしは嬉しいですけど。」
「そりゃ私だって嬉しいけど。周りの目がね……慣れるまでは凛花に迷惑かけると思うけど、よろしくね?」
結愛先パイは少し顔を赤らめて俯く。その表情はとても可愛らしい。そんな顔をされると凄く照れるんですけど……。色々話しながら夏祭りの会場に着く。まずはみんなと合流しないと。
会場にはもう既にたくさんの人がいて、屋台もたくさん出ていた。あたしたちが会場に入ると、すぐにみんなを見つけた。
「あっこっちこっち!凛花!小鳥遊先輩!」
「ごめん。遅くなっちゃった。」
「そんなことないよ。それにしても小鳥遊先輩すごくキレイ!」
「ふふっ。ありがとう日下部さん。それより私まで来て良かったのかしら?」
「全然問題ないですよ!みんなでたのしんじゃお!まずは屋台を回ろう!」
春菜ちゃんはすごく楽しそうだな……。春菜ちゃんはサキちゃんの手を引っ張って前に行ってしまう。
「日下部さんは元気だね。凛花ちゃん浴衣似合ってるね?良かった。いいの選べて。」
「衣吹ちゃんも似合ってるよ。」
「ありがとね。あっ小鳥遊先輩も似合ってますよ。」
「なにそれ?とってつけたような言い方は?別にお世辞は入らないわ。」
なんか雰囲気が悪い?気まずい感じになってる?とりあえず二人の間に割って入る。
「まぁまぁ!あたしたちも行きましょう。結愛先パイ、衣吹ちゃん!」
それからあたしたちは屋台を見て回った。射的をしたり金魚すくいしたり綿あめ食べたり。楽しい時間はあっという間に過ぎていった。そして花火の時間になり、みんなで河川敷に移動する。
「うぅ~暑い……」
「こらこら。下着見えちゃうよ春菜?手であおがないの。」
夜とはいえまだまだ暑いもんね。汗かいてきちゃったよ。でも、隣にいる結愛先パイは涼しい顔してる。
「暗いですね……はぐれないようにしないと。」
「なら私と手を繋ぐ?」
衣吹ちゃんはあたしにそう言ってきた。どうしようかな……迷っていると、今度は結愛先パイの方から手を繋いできた。えっ!?急に握られてびっくりしたんだけど……。
「こら!凛花を誘惑するんじゃないわよ。油断も隙もないわね、あなた。」
「小鳥遊先輩が早く繋がないからですよ?ちゃんと見てあげないと私がとっちゃいますよ?」
結愛先パイと衣吹ちゃんがあたしをとりあってる……。ちょっと待って!これじゃあ余計暑くなるじゃんか!とりあえず二人を止めないと。結局三人で手を繋ぎながら歩くことになった。あたしは真ん中でまるで両親の間にいる子どもみたいだ。
「ねぇ凛花。これだけ暗いと燃えるわね?野外だし?してみる?」
「してみる?って何がですか!?」
結愛先パイ、何が燃えるんですか?何を想像しているんですか?するといきなり衣吹ちゃんがあたしに抱きついてきた。そのせいでバランスが崩れて倒れそうになる。なんとか体勢を立て直す。危なかった。こんなところで転んだりしたら怪我するよね。……柔らかいし衣吹ちゃんの匂いがしてドキドキする。
「ごめん。凛花ちゃん。他のお客さんに押されちゃって……。」
「ううん。あたしは大丈夫。」
「あなた。わざとらしいわよ?」
「違います!私は本当に押されて。それに凛花ちゃんならそんなことしなくてもいつでも抱きつけますから。どうせ拒めないと思うし。」
衣吹ちゃん……言い方……。でも、確かにそうかも……。