58. プリン
あたしと結愛先パイはあの後家に戻り、衣吹ちゃんに謝罪と感謝を伝えた。結愛先パイは凄く申し訳なさそうにしていた。後で聞いたんだけど結愛先パイに頬を叩かれてやり返したって聞いた時は驚いたけど……。意外に衣吹ちゃんは強い子だ。本当にありがとう。
そしてあたしは今、その衣吹ちゃんとお茶をしに喫茶店にいる。その時の謝罪とお礼って訳じゃないけど、あたしもきちんと断れなかったのが悪いしね。
「小鳥遊先輩も夏祭り来てくれることになったんだね。良かったね凛花ちゃん。」
「うん。でも……大丈夫かな……」
「さすがに外で変なこととかしなければ大丈夫じゃない?」
「いや、そうじゃなくて……その……衣吹ちゃんが?嫌じゃない?」
あたしの問い掛けに対して衣吹ちゃんは少し考えてから答えた。
「うーん……凛花ちゃんと小鳥遊先輩が一緒にいるのはあまりいい気分じゃないけど、凛花ちゃんが幸せなら私も嬉しい気持ちになるの。だから答えは分からないかな?」
「衣吹ちゃん……。」
「私のこと気にしてくれたんだね。ありがとう。凛花ちゃんのそういう優しいところ私好きだよ。」
「えへへ///」
衣吹ちゃんの言葉を聞いて嬉しくてつい笑みがこぼれる。やっぱり衣吹ちゃんは天使だなぁ。それから暫くして飲み物が届いたので飲みながら話を続ける。
「ねぇ、衣吹ちゃん。もし衣吹ちゃんが誰かと一緒にいたいと思った時、衣吹ちゃんならどうする?あたし結愛先パイの事をよく知らないから……。」
「おお……急に恋する女子だね凛花ちゃん。それ私に聞いちゃうの?少し嫉妬しちゃうなぁ。ひどいなぁ凛花ちゃんは」
「そだよね……ごめん」
「ふふ。冗談だよ。そうだね……まずはその人のことをよく知ろうとするかな?簡単に言うと趣味とか好きな食べ物とか嫌いなものとか。後は相手の性格とか色々かな。」
うーん。結愛先パイが教えてくれるだろうか……?というか結愛先パイのこと全然知らないかも……。まあこれから知っていけばいっか!
◇◇◇
そして次の日。夏祭りを明日に控え、あたしは結愛先パイの家にいる。結愛先パイに明日着ていく浴衣を見てほしいとお願いされたからだ。
「凛花……どうかしら?しばらく着ていなかったから。変じゃないかしら?」
「凄い似合ってますよ!美人さんです!」
「本当?それなら良かったわ。」
結愛先パイの浴衣は黒地に赤で椿が描かれているもの。帯は濃い紫で蝶結びになっている。所々に白百合の花が刺繍されており、上品さが感じられる。髪はアップにして纏められているため大人っぽい印象を受ける。普段とは違う雰囲気の結愛先パイはとても綺麗だった。
ふぅ……ヤバい。無性に可愛がりたい衝動に駆られる。結愛先パイ……それはノーブラですか?下着のラインが見えない……まさか下も???
「ん?どうしたの凛花?鼻息荒いわよ?」
「いえっ!?何でもないですよ!!」
危なかった……。もう少しで理性を失うところだった。あたしのその発言に結愛先パイはいつもの悪い顔をしてあたしに言う。
「ふーん。さすがに外に出るときは身に付けるわよ?あなた……私の身体見てたでしょ?本当にイヤらしいんだから凛花は。」
「ごめんなさい。つい見ちゃいました。」
「素直なのは良いことだけれど……ほどほどにしときなさいよね。それにしても……もうちょっと褒めてくれても良くないかしら?」
そう言って結愛先パイは頬を膨らませる。その姿もまた可愛くて抱きしめたくなるがぐっと堪える。
「すみません。結愛先パイがあまりにもお美しかったもので……。」
「あら、ありがとう。凛花に言われると照れてしまうわね。でも……私はあなたのそういう正直なところが好きよ。」
結愛先パイは昨日の件から、なんか凄く可愛くなったような気がする。あたしに甘えてきてくれる。今までこんな事無かったのに……。それがとても嬉しく感じる。この幸せが続くといいなと思う。
「あの結愛先パイ。」
「何かしら?」
「好きな食べ物と嫌いな食べ物教えてください!」
「私の?そうね……好きな食べ物はプリン、嫌いな食べ物は特に無いわね。」
結愛先パイはプリンが好きなのか。頑張って作れるようにしよう!でもまずは料理をしないとね……そう考えると結愛先パイは自炊してるし、凄い……。そんな人にあたしのプリンを食べてもらうのは気が引ける……そんなことを考えていると結愛先パイが言ってくる。
「もしかしてプリン作ってくれるの?」
「え!?あっいやその……あたし……料理とかあまりしたことないし……でも作れたらいいな……って思ったりして……。」
「ふーん。そうなのね。期待して待っているわね?」
うわぁ。プレッシャーだ……。でも結愛先パイが喜んでくれるなら頑張ろうかな。