44. 夏色の海
あたしは今、夏休みの最中。そして海に来ている。ああ海っていいよね。開放感があるし。みんなの水着も可愛いし!……もちろん変な意味じゃないから。
「サキちゃんの水着可愛らしいじゃん!そんなの選ぶんだね!すごい意外。」
「こっこれは凛花が……」
「私は似合ってると思うし可愛いと思うな?」
「水瀬さんまで……ありがと。」
サキちゃんは顔を赤くして俯く。うん。可愛い。あたしたちは早速海に入ることにした。砂浜は結構熱い。少し歩いて波打ち際まで行く。海水の温度はちょうどいい。気持ち良いなぁ。
あたしはそっと足を水に浸ける。冷たい……。その瞬間足から腰、そして胸元に冷たさが伝わる。ふと隣を見ると、衣吹ちゃんが同じように足を水に浸けていた。
「冷たい。けど気持ちがいいね凛花ちゃん」
「うん。そうだね。」
二人で暫くの間黙ったまま海を眺める。風で水面が揺れて太陽の光が反射する。キラキラしていてとても綺麗だ。その景色を堪能していると、後ろの方からサキちゃんがあたしと衣吹ちゃんを呼ぶ。
「凛花ー!水瀬さんー!こっちでビーチバレーしよう!」
そう言って手招きをするサキちゃんのところへ行こうとした時だった。バシャッ いきなり水が顔にかかる。何事かと思って振り向くと、そこには笑みを浮かべた衣吹ちゃんがいた。
「凛花ちゃん。冷たい?」
悪戯っ子のように笑う衣吹ちゃんはとても可愛くて、つい見惚れてしまった。
「もう……やめてよぉ~衣吹ちゃん」
「えへへ~ごめんごめん」
そんなことを話しながらサキちゃんたちと合流する。あたしたちはしばらく遊んだ後、お昼ご飯を食べるために海の家に行く。
「あ~海の家の焼きそば美味しい~。海で遊んだあとは特に美味しい!」
「春菜は海に入ってないじゃん。」
「そういう事言わないでよサキちゃん!私だって泳げれば入るよ!」
相変わらず仲の良い二人を見て思わず微笑んでしまう。
「そう言えば水瀬さんは運動神経いいんだね?泳ぎ方も綺麗だったし。」
「そんなことないよ。麻宮さんの方が泳げるでしょ?」
「いや私はバスケット部だから。水瀬さんは美術部でしょ。すごいよね。勉強も運動もできて」
確かにサキちゃんの言う通りだ。衣吹ちゃんは泳ぎ方も綺麗だし、速いし。あれだけのものがついていながら水の抵抗を感じないなんて……。ふむ。……ってあたしは何考えてるんだろう。すると、隣の席に座っていた衣吹ちゃんが話しかけてくる。
「凛花ちゃんのかき氷ってレモン味?」
「あっうん。そうだよ。食べる?」
「いいの?それじゃ一口もらおうかな。私のイチゴ味も食べていいよ。」
そう言って衣吹ちゃんはあたしのかき氷をスプーンですくう。それをそのまま口に運んだ。
間接キスだ……。
衣吹ちゃんの唇が触れたところに目がいってしまう。心臓が激しく鼓動する。こんなにもドキドキするのはきっと夏の暑さのせいではないと思う。意識しちゃダメなのに!!
でも……気になるものは仕方がないじゃない! あたしは自分のかき氷を一口すくう。そしてそのまま口に入れた。……甘い。レモンだけど甘く感じる。うぅ……無理だ……衣吹ちゃんを意識しまっている。
午後からはまたみんな思いっきり遊ぶ。砂のお城を作ったり、スイカ割りしたりしてすごく楽しかった。特に砂のお城作りは衣吹ちゃんが美術部のスキルを活かしてとても素晴らしいものを作ってくれた。完成した時は感動したなぁ。
スイカ割りは、まぁあたしと春菜ちゃんは最後まで割ること出来なかったけどさ……。
そうこうしているうちに時間は過ぎていく。楽しい時間はすぐに過ぎると言うけれど、まさにその通りだと思う。今日一日、本当に楽しくてずっとこの時間が続けば良いのにと思ったくらいだ。
そして夜になった。今は夕飯を食べ終わって部屋にいる。
「じゃーん!トランプやろ!」
「本当にトランプ好きだね春菜は。」
「またババ抜きやるの日下部さん?」
「いやいや。私も成長しているのです。というわけで大富豪だよ!」
成長して大富豪。というかトランプに成長とかは謎なんだけどさ……。春菜ちゃんは楽しそうにしているからいいか。
「ルール説明します!まず最初にカードを配ってそれから順番にカードを出していくの。それで最後に一番強い人が勝ち!簡単でしょ?」
「春菜、説明下手すぎ。全然わからないんだけど。まぁ大富豪ならルール知ってるからいいけどさ。」
「大富豪かぁ。衣吹ちゃん強そう。」
「大富豪に強いとか弱いとかないよ凛花ちゃん。相手の手札とか、場に出たカードとかを考えて出せばいいんだし。」
それが出来たら苦労しないんだけどさ。それはもう頭のいい人の考え方だよ。衣吹ちゃん……。