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42. 隠せないかも

42. 隠せないかも




 夏休み初日。あたしは今、駅前にいる。うう……暑い。今日は真夏日になるってテレビで言ってたっけ。それにしても駅前には人が大勢いるなぁ。夏休みだからいつもより多いかも。


 ちなみに今はサキちゃんと待ち合わせをしている。昨日の夜連絡があって水着を買いたいからついてきてほしいらしい。まぁあたしも買おうと思ってたしちょうど良かった。あたしが暑さにやられているとサキちゃんがやってくる。


「ごめん遅くなって。凛花大丈夫?」


「ダメ~。暑すぎ。」


 サキちゃんの格好はピンクのワンピース。うん可愛い。けど……サキちゃんがこういう可愛らしい格好してるのは意外。


「なら先にお茶しようか。私遅れちゃったからお詫びに奢るよ。」


「うん!お茶しに行こう!」


 やったー!さすがサキちゃん。気前が良いね。あたしたちは駅の近くにあった喫茶店に入ることにした。店内に入ると涼しくて気持ちいい。席に座って注文をする。あたしはメロンソーダを頼んだ。しばらくすると飲み物が届く。


 早速一口飲むと爽やかな味でとても美味しい。サキちゃんも飲み始める。あ、この店雰囲気良いな。落ち着いた感じだし気に入った。あとで春菜ちゃんとか衣吹ちゃんとも来よう。


「凛花。付き合ってくれてありがとね。私あまり服とかそういうのに興味なくてさ。意見とかほしいかなって。」


 いや……だとしたら人選ミスだよサキちゃん……。あたしも別にお洒落に気を使っているわけじゃないし。そういうのは春菜ちゃんだと思うんだけど。一応結愛先パイに会う日はあたしなりに精一杯のお洒落をしているけどさ……。


「でも意外だなぁ。サキちゃんがそんな可愛らしいワンピース着るなんて?」


「え!似合ってない?確かにちょっと子供っぽいかなって思ったんだけど……」


「違うよ!逆!凄く似合っていると思うよ!ただ少し驚いただけ。ほらサキちゃんって可愛いらしい格好より動きやすい格好しそうって思ってたからさ!」


「それ褒めてるのかなぁ。まぁいいけどさ。」


 飲み物を飲み終え、喫茶店を出てあたしたちはショッピングモールに向かって歩き始める。そしてモールに着くとあたしたちはまず服屋に向かった。店内に入ると涼しくて気持ちいい。早速水着コーナーに向かう。


「サキちゃんはどういうのがいいの?ビキニとか好き?」


「ん~私は露出が少ない方が良いかな。あと動きやすいのが良い。あんまり派手すぎるのは苦手なんだよね。」


「ならこれはどうかな。結構シンプルだけどサキちゃんって可愛いのも似合うみたいだし。」


 あたしが選んだのは白を基調としたワンピースタイプの水着だった。これなら肌が見えないし、露出も少ないから良いんじゃないだろうか。


「うん。じゃあこれにするよ。試着してみるね。」


 そう言うとサキちゃんは試着室に入っていった。しばらくしてカーテンが開かれる。おお……これがサキちゃんの水着姿か。やっぱり意外。


「どう?凛花。変じゃないかな。」


「うん!すっごく似合っているよ!可愛くて綺麗で魅力的だと思う!」


「そこまで言われると疑うんだけど?」


「なんで疑うの?本当のことなのに~」


 サキちゃんは頬を赤く染めている。照れているのか嬉しかったのかわからないけどとりあえず可愛い。


「じゃあこれにしようかな。せっかく凛花が選んでくれたし。」


「次はあたしの選ぶの手伝って。」


 あたしはサキちゃんと一緒に店内を回っていくつか見繕った。その中であたしが一番気に入ったのはこれ。淡い水色をしたビキニタイプ。肩紐やスカート部分のフリルが特徴的で、かなりセクシーな雰囲気がある。雰囲気ね雰囲気。


 試着したら良さそうだったので、あたしはこれを買うことにした。その後は、適当に雑貨などを見て回った。楽しい時間はあっという間に過ぎていく。いつの間にか夕方になっていた。


 帰り道。あたしとサキちゃんは並んで歩いている。夕陽に染まる空はとても綺麗だ。


「この時間になるとだいぶ涼しくなるね。」


「うん。そうだね。海に行くの楽しみ!結愛先パイが来れないのは残念だけどさ。」


「……ねぇ凛花。ちょっと聞きたいんだけどさ……。」


 サキちゃんの声色が急に変わる。何かあったのだろうか。あたしは足を止めた。そしてサキちゃんの方を見る。サキちゃんは真剣な表情をしていた。一体何があったのだろう。あたしは緊張しながらサキちゃんの言葉を待つ。数秒後、サキちゃんが口を開いた。


「凛花って……小鳥遊先輩のこと好きなの?」


「えっ!?なんで!?」


「なんとなく。」


 あたしは驚きを隠せないでいた。まさかバレるなんて思わなかったから。結愛先パイの事を好きなことは誰にも言っていないはず。どうして……どうしてわかったんだろう……。頭が真っ白になりながら必死で言い訳を考える。ダメだ。何も思いつかない。あたしは無意識に言ってしまう。


「うん……好き。」


 すると、あたしのその言葉を聞いてサキちゃんは笑いながらこう言った。


「そっか良かった。仲良くなれたんだね。」


「へっ?」


「前に凛花、小鳥遊先輩の事で悩んでたからさ。でもこの前の勉強会の時は仲良さそうで、そうじゃないかなぁって思ったんだけど、一応聞いてみた。」


 あー。そんなこともあったっけ。そういう事ね……。ってあたし……隠し事出来ないよこれじゃ……。


 こうして、あたしは自分の押しの弱さを痛感するのでした。

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