34. Anotherstory.2 ~【月明かりの秘密の魔法】~②
衣吹ちゃんがあたしを抱きしめる力が強くなる。また顔が近づいてきて、今度は舌を入れてきた。くちゅくちゅという音が聞こえる。頭がぼーっとしてくる。でも不思議と嫌じゃなかった。むしろ気持ちよくて心地よかった。しばらくして衣吹ちゃんが顔を離す。
「気持ちいい……こんなに幸せな気分になるんだね。」
そう言って笑った衣吹ちゃんを見て、思わず見惚れてしまった。可愛い笑顔だった。胸がきゅんとなる感覚があった。
「ねぇ凛花ちゃん。もっとしたいな……。ダメかな?」
「えっ……あっ……」
もう何が何やらわからない。ただ一つ分かることはこのまま流されてしまいたいということだけだった。
「凛花ちゃんお願いがあるの」
「お願い?」
「目を瞑ってほしいな……その……私我慢できなくて……」
恥ずかしそうな声で言われる。あたしも凄く恥ずかしい。言われた通りに目を閉じる。衣擦れのような音と衣吹ちゃんの息づかいと妖艶な声だけが聞こえてくる。
「やっぱり恥ずかしい……声でちゃう。凛花ちゃん。お願いもう一度キスして。口を塞いで」
「衣吹ちゃん……」
しばらくすると唇に触れる柔らかい感触。それからすぐに口の中に何か入ってくる。それが衣吹ちゃんの舌だと気づくまで時間はかからなかった。
どれくらい時間が経っただろう。ふと我に帰ると横には息を荒げた衣吹ちゃんがいた。上気していてとても色っぽい。
衣吹ちゃんみたいな女の子でも1人でするんだ……なんていうかいけないことを考えているような気がする。
「ごめん凛花ちゃん。幻滅した?」
「え?いや、驚いたけど……別に大丈夫だよ?普通だよね!そういうこともあるよ!」
正直なところ驚いていた。結愛先パイ以外に乱れた人を実際に見たことはなかったからだ。それにしても凄かったなぁ。あんな声出すんだ……。目を瞑っていたから、想像の衣吹ちゃんを思い出すとまたドキドキしてきた。
「ありがとう。……ごめんね。変なことしちゃって。今日の事は忘れてくれると嬉しいな。」
「う、うん。わかったよ。」
「ちょっとシャワー浴びてくるね。寝ちゃっててもいいよ」
忘れられないと思うけど……。衣吹ちゃんは立ち上がると浴室に向かっていった。
衣吹ちゃんのベッドに残されたあたし。いつもの衣吹ちゃんの甘い匂いとさっきのが入り雑じって頭がくらくらする。そして無意識に自分の身体に手が伸びていた。
「……みんなしてるんだもんね。仕方ないよね。」
言い訳のように呟きながら下着の中へと手を入れる。さっきまでの事が聴覚と嗅覚で脳に焼き付いている。そこは少し湿っていた。指を動かす度に水音がなる。それだけで頭の奥が痺れるようだった。
そうだ……別に男の子だけがしている訳じゃない……。
衣吹ちゃんがシャワーから戻るまで、あたしはいつの間にか声を我慢しながら、さっきの衣吹ちゃんを思い出しながら夢中になって初めての自慰をしていた。
結局あたしも『汗をかいた』と理由をつけてシャワーを浴びさせてもらった。でもきっと臭いで分かっちゃうかもしれない……。自分の臭いって分からないって良く聞くし。恥ずかしさはあるけど、少し大人になった気がした。衣吹ちゃんは気づいていて何も言わなかったのか、自分の臭いが嫌だったのか部屋に戻ると窓を開けていた。
心地よい風が吹いている。でも、さっきまでの月明かりはなく夜空に浮かぶ月は雲で隠れていた。そしてそのあとは丁度いい疲労感に襲われて、衣吹ちゃんと少し会話をしていつの間にか眠っていた。
次の日の朝。あたしが目を覚ますと身体の左側には柔らかい感触と甘い匂い。そう衣吹ちゃんが抱きついていた。幸せそうに眠っている。昨日の事を思い出すだけで顔が熱くなる。
そのままあたしと衣吹ちゃんは何事もなかったかのように、テスト勉強を始めていく。今日は数学を教えてもらっている。難しい問題を解いている時の衣吹ちゃんは本当に楽しそうだった。
昨日のは夢だったのかな……まるで魔法にかけられたようだった。