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32. 夏服マジック

32. 夏服マジック




 あたしは今。精神がおかしくなっている。今までの人生で一度たりとも気にしたことはなかったのに……。そうだ。小説演劇同好会に入って、百合小説ばかり読んでいるからだ。


 ああ、頭が痛くなってきた。あたし、どうなっちゃったんだろう? 自分の頭の中で起きていることが理解できない。


 そう……制服の夏服。今日から衣替えだ。ただ、ブレザーを脱ぐだけ。なのに、そのブレザーを脱いだら、何かが変わってしまうような気がする。


 夏服に透ける下着。あたしの脳内は多分思春期の男子。クラスメイトの男子たちと思考が同じだろう。好きな人のが見たい。可愛い子のが見たい。直接じゃない、透けるのがまたいいんだよ。あたしは結愛先パイのが見たい。そんな衝動にかられる。


 そしてあたしの目の前にはサキちゃんがいる。ほー。サキちゃんは健康的な白か。うん。いいね。サキちゃんらしい色だよ。


「なに凛花?目が怖いけど?殺し屋みたいな目してるんだけど?」


「いやいや、なんでもないよ」


 いけない。顔に出てたか。気をつけないと。


「そういえばさ、この前小鳥遊先輩の家に行った時も思ったんだけど、最近水瀬さんって少し変わったよね?」


「衣吹ちゃんが?」


「うん。水瀬さんって大人しいイメージだったんだけど、最近は明るくて楽しそう。凛花といる時なんて特に。」


 えっ!?そうなのかなぁ?確かに最近よく一緒に遊ぶようになったし、衣吹ちゃんといて楽しいのは確かだけど……。


 でも……なんでだろう。なんだか胸の奥がモヤモヤするのは……。衣吹ちゃん。たまに結愛先パイみたいな感じがあるんだよね……。もしかしてあたしっていじられやすい?


「ねぇ。サキちゃん。あたしっていじられキャラなのかな?」


「凛花と春菜はそうかもね。」


 サキちゃんは笑いながら言った。そうか。あたしと春菜ちゃんはそういうポジションなのか……。


 でも……もし衣吹ちゃんが結愛先パイみたいになったらどうしよう。うーん……想像出来ない。けど……あんな可愛い子に迫られるのも悪くない。ってダメダメ!変なことばかり考えちゃう!


 そして学校が終わり部活がないので、真っ直ぐ家に帰る。もうすぐ中間テストだしな……勉強しないとな……。週末は結愛先パイは用事があるみたいだし。週末は時間があるし。いっぱい勉強しないと!!





 そして週末。今日明日で徹底的に勉強するぞ!そう思って朝早くから起きて机に向かうが一向に勉強する気がおきない。むしろどんどん眠くなる。ダメだ……。集中力が続かない。仕方がないから気分転換をしようと思いスマホを手に取る。


 するとタイミング良く電話が鳴る。衣吹ちゃんからだ。あたしはすぐに電話に出る。


「もしもし?」


 《あれ?これ繋がってる?あっもしもし。》


「うん。どうかしたの?」


 《凛花ちゃん電話に出るの早すぎ。ビックリしちゃった。あのさ今日と明日暇かなって思って……。良かったら私の家でテスト勉強しない?旅行に行って両親がいないの。私1人で寂しいし……》


 そうか確かに1人は寂しいよね。どっちにしてもあたし1人じゃ勉強できなそうだし、衣吹ちゃん頭いいし。これは逆にラッキーなのでは?とりあえず返事をしなくちゃ……。


「あ、あたしもちょうど勉強したいと思ってたんだ。いいよ!一緒にやろっか。」


 《ありがとう。それじゃ10時に駅前集合で大丈夫?》


「うん。全然オッケーだよ!お泊まりの準備して行くね!」


 よしよし。これで勉強できるぞ。あたしは一旦電話を切り、ベッドの上にダイブしてゴロゴロしながら喜びに浸っていた。


 10時になり駅に行くと既に衣吹ちゃんがいた。今日の衣吹ちゃんは淡い水色のワンピースに白のカーディガンという服装だ。かわいいなぁと思いながら見つめていると、それに気づいたのかこちらを向いて笑顔になる。


「凛花ちゃん。凄い10時ぴったり!」


 いつもよりテンションが高い気がする。まぁいいか。とりあえず行こっと。電車に乗り目的の駅で降りる。そこからバスに乗って30分ほどで着く。


 衣吹ちゃんて。結構遠いところから来てるんだな……。あっ。そうか衣吹ちゃんは中学生の時は不登校だったんだっけ。近くの高校は行きにくいか。


「着いたよ凛花ちゃん」


「わーここが衣吹ちゃんの家かー。広いね……。あたしの家とは全然違う。」


「そんなことないよ。とりあえずあがって。」


「お邪魔しま~す」


 部屋に入るとまず目に入ってくるのは女子力のありそうなインテリア。ぬいぐるみとかもあるし。あとは本棚に小説やライトノベルが大量にある。


「意外に小説いっぱいあるんだね?あたしと同じくらいあるよ。」


「言ったでしょ?はまっちゃって。結構読んでるの。」


 衣吹ちゃんはちょっと照れくさそうに言う。あたしは勉強道具を取り出してテーブルに置く。衣吹ちゃんも教科書やノートを取り出す。分からないところは衣吹ちゃんに聞きながら勉強する。ふむ。教え方上手いな。分かりやすいし。


「衣吹ちゃんって教えるの上手いね?」


「そ、そうかな?ありがとう。」


 衣吹ちゃんは顔を赤らめていた。そんなこんなで2時間が経ち、休憩することになった。


「なんかごめんね。凛花ちゃん。無理に誘っちゃって。」


「そんな事ないよ。勉強もできたし。あたし1人じゃ遊んじゃいそうだしさ。」


「それなら良かった……。やっぱり誘って良かったなぁ。」


「ん?なんか言った?」


 あたしは少し気になって聞いてみたけど、衣吹ちゃんは首を横に振った。そんな様子を見てあたしは気づく。衣吹ちゃんの服、胸元空きすぎじゃない?さっきからチラチラ見えてるんだけど……。うぅ……目のやり場に困る。でも見ちゃうあたしがいる。衣吹ちゃんは可愛いピンクと。

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