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25. Story.3 ~【恋花クローバー】~③

25. Story.3 ~【恋花クローバー】~③




 放課後デート中(?)のあたしと衣吹ちゃん。そういえば最近衣吹ちゃんと一緒にいることが増えたかも。仲良くなれてるのは嬉しいことだよね。あたしはそんなことを思いながら隣を歩く衣吹ちゃんを見る。


 衣吹ちゃんはとても楽しそうな笑顔で歩いていた。その笑顔を見ていると、こっちまで楽しくなってくるよ! だからね、ちょっとだけ……ほんの少しだけ悪戯心が芽生えちゃったんだ。


「それでね……って?凛花ちゃん聞いてる?」


 だって、こんなに可愛い顔してるんだよ? 悪戯したくなるじゃん! あたしは立ち止まると、衣吹ちゃんに向かって手を伸ばした。そしてそのまま彼女の頬に触れる。柔らかさの中に弾力があってとても触り心地が良い。それに、すべすべしていてずっと触れていたくなっちゃう。


「えぇ凛花ちゃん?」


「すべすべしてる。やっぱり可愛い顔してるな衣吹ちゃんは。」


 突然頬に触れられた衣吹ちゃんは目を丸くしながらあたしの方を見た。……あぁもうっ! この表情も可愛すぎるよぉ~!! あたしはその感情を抑えきれなくて思わず抱きついてしまった。


「ひゃっ!」


「むぎゅぅ……」


「ちょっ!?凛花ちゃんどうしたの急にぃ!!」


「あ。ごめん衣吹ちゃん!なんか可愛すぎて我慢できなかった……。」


 やってしまった……。まずい。衣吹ちゃんから離れて苦笑いを浮かべると、衣吹ちゃんは顔を赤く染めて俯いてしまう。


 ヤバい。あたしは今、百合小説の【恋花クローバー】を読んでいる途中だった……。思わず感情が抑えられなくなっちゃった。うぅ……どうしよう。絶対変だと思われたよね衣吹ちゃんに……。


「可愛い……か。そっか……なら仕方ないね。」


「え?」


 すると、衣吹ちゃんは小さく呟いて微笑みかけてきた。あれ?怒らないのかな?……でもなんだろう。衣吹ちゃんの顔が赤いような気がするんだけど。気のせいかな? まぁとりあえず良かった。許してくれたみたいだし一件落着ってことで良いよね。うん、大丈夫そうだ。


 そして帰る前に、この前と同じく駅前にある大きな公園に行く。しばらくベンチに座って話しをしていると衣吹ちゃんがあたしに聞いてくる。


「ねぇ凛花ちゃん。私の事どう思う?」


「えっ……どうって?」


「凛花ちゃんが男性だったら私の事好きになるかなぁって。どうかな?」


「そりゃ好きになるよ!衣吹ちゃんは可愛いし、頭はいいし、胸だってあるでしょ?絶対好きになるよ!」


 そりゃ即答レベルの話だよ。周りの男どもが放っておくはずないし、現に衣吹ちゃんは告白もされてるしね!


「じゃあ……。今の凛花ちゃんなら?」


「えっ……?」


「私の事……好き?それとも……友達にしか見えない?」


「あの……衣吹ちゃん?」


 すると衣吹ちゃんはさっきのお返しなのか私に抱きついてくる。何が起きたのか分からず頭が真っ白になったけど、すぐに我に返って衣吹ちゃんの事を押し返す。しかし彼女は離れようとしない。むしろさらに強く抱きしめてくる。一体どういうことなんだろ……。しばらくして、衣吹ちゃんは静かに口を開いた。


「ドキドキした?凛花ちゃん?」


「衣吹ちゃん???」


「最近ね。実は百合小説を読んでるんだ。この前凛花ちゃんが読んでた【青い春の風】を読んでから、はまっちゃって。」


 ビックリしたんですけど……。まさか衣吹ちゃんがそういう系の小説を読むなんて思わなかったよ。しかもあたしが読んだ後だから余計に恥ずかしいし。


「だからね。少し試してみたくなったの。ごめんね凛花ちゃん。」


「もう。本当にビックリしたよ……。」


「ごめんごめん。でも女の子同士も悪くないね?偏見とかはまだあるけど、そこに本当の愛情があれば恋愛はできるよね。」


 そう言うと衣吹ちゃんは立ち上がる。確かにその通りだけど……。でも少し分かったかもしれない。あたしは衣吹ちゃんに悪戯したくなった。それは衣吹ちゃんが可愛くて仕方なかったから。もし結愛先パイも同じ気持ちなら……。ううん。考えるのはやめよう。だってあたしは今、【恋花クローバー】の朝霧華乃の気持ちが知れて幸せだから。



 そして数日後。今日は待ちに待った日曜日。あたしは朝早く起きて、昨日のうちに準備していた服を身に纏う。そして鏡の前で自分の姿を確認する。うん。可愛い!さすがあたし!完璧だ。さっそく出かけるとしますかね~。あたしの足取りは軽い。だって今日は結愛先パイを驚かすんだから!

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