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22. 水瀬さんとお出かけ

22. 水瀬さんとお出かけ




 世間はGW。あたしたちはあの禁断の勉強会の成果なのか無事に補習を回避した。泣きながら喜ぶ春菜ちゃんは可愛かったな。点数は36点だったけど……。


 このGW中は小説演劇同好会は休みだ。結愛先パイのご両親が帰ってくるみたいなので、あたしもしばらく結愛先パイとは会えない。


 でも。いい機会だ。結愛先パイと離れることで自分の気持ちを確認しよう。もちろん結愛先パイの事は好きだ。でもそれは恋愛感情じゃない……はず。


 そしてあんなことをしてしまうのは意識や身体がまだ【日向に咲き誇る】の日咲凛花、【青い春の風】の真野夏海になっているから……だと思う。


 あたしはあんなにエッチな子じゃない。今までそういう事したいと思ったことなんてないんだから。……そう今までは。そんなことを考えているとスマホが鳴る。画面を見ると水瀬さんからだ。


 《もしもーし! 凛花ちゃん今大丈夫?》


「うん。平気。部屋でゴロゴロしてただけだし」


 《今日予定ある?もし、良かったら私と一緒に買い物に行かない?》


「うん!行く行く!お小遣いもらったし!」


 やったぁ。水瀬さんとお出かけだ。待ち合わせ場所は駅前になった。駅前に着くと水瀬さんが先に待っていた。あたしを見つけたのか手を振ってくれる。ここからでも分かる。可愛いは健在だね。


「あっ凛花ちゃん!こっちだよ!」


「水瀬さん!待った?」


「ううん。タイミング同じ。私も今来たところだから。」


 水瀬さんの元に駆け寄る。うわぁ。水瀬さんは白のワンピースの上にカーディガンを羽織っていて清楚な雰囲気だ。それに髪も下ろしていて大人っぽくて素敵。思わず見惚れてしまう。まさに癒し系女子という感じで似合っている。


 すると、あたしの顔を見てクスッと笑う。えっ!?何その笑顔!超絶可愛いんですけどぉ!こんな顔されたらあたしまで恥ずかしくなってきちゃったじゃん。


「凛花ちゃん?どうしたの?」


「いや、何でも無いよ!それより早く行こうよ!」


「ふふっ。そうだね。」


 すると水瀬さんは歩き出す。あたしもその横に並んで歩く。まず最初に訪れたのはランジェリーショップだった。どうやら下着を買いに来たらしい。


「最近サイズが合わなくなっちゃったからさ。凛花ちゃん。選んで欲しいな。」


「えっ?あたしが?でも水瀬さんのサイズ知らないし……?」


「Dだよ。今までCで少しキツかったから。」


「D!?水瀬さん毎日牛乳飲んでる!?そして鶏肉食べてるの!?それとも腕立て伏せしてる!?」


 あたしはネットで見た知識を水瀬さんにぶつける。水瀬さんは微笑みながら『何もしてないよ』って言った。あたしは……Bなんですけど。理不尽だ。神様の不公平だ。


 とりあえず適当に選んで、試着室の前で待っていると水瀬さんがカーテン越しにあたしを呼ぶ。


 そこにはピンクのレースが付いたブラジャーを着けた水瀬さんがいた。胸元にはリボンがついている。これはエロすぎる……。


「どうかな凛花ちゃん?」


「それは少し攻めすぎじゃ?あたしはリボンが可愛くて好きだけどさ……普段使い出来なそうだけど……。」


「うぅん。凛花ちゃんが好きなら……うん。これ買ってくるね!」


「えっ水瀬さん?」


 結局水瀬さんはシンプルな水色のものとその下着を会計をして帰ってきた。次は雑貨屋さんに行く。そこでマグカップを買った。シンプルなデザインで、結愛先パイが好きそうなやつだ。その後カフェに行って休憩をすることにする。


「そのマグカップ。小鳥遊先輩に?」


「あー。まぁ一応いつもお世話になってるし。でも結愛先パイお金持ちだから、こんな安いやつ、いらないかも知れないけどさ。」


「そんなことないと思うけどな。プレゼントならすごく喜ぶと思うよ。私ならすごく嬉しいし」


 そんな会話をしながら時間が過ぎていく。水瀬さんとは話はしたことあるけど、こうやって一緒に出掛けたことはないから、ちょっと新鮮だ。


 でも、水瀬さんといるとなんだか落ち着く。ずっと前から友達のような感覚だ。楽しい時間は過ぎるのが早いと言うけど、本当だ。もうすぐ終わっちゃう。


 最後に寄ったのは、駅前にある大きな公園だ。ベンチに座って空を見上げると、夕焼けに染まっている。隣に座る水瀬さんを見る。水瀬さんもこちらを見ていた。目が合う。


「今日は楽しかった。ありがとね凛花ちゃん。」


「うん。」


「ねぇ凛花ちゃん。……手繋いでもいいかな?」


「へぇっ?ど、どうして?いいけど……」


 水瀬さんの手があたしの手に触れる。あったかい。それに柔らかい。ドキドキする。水瀬さんが口を開く。


「凛花ちゃん。お願い……あるんだけど……」


「お願い?」


「私の事……名前で呼んでほしいな。私だけ水瀬さんだし」


「あっ……えっと……衣吹ちゃん?」


 あたしが名前を呼ぶと衣吹ちゃんは嬉しそうに笑った。その笑顔はすごく可愛い。それからしばらく、あたしたちは手を繋いだまま、他愛もない話をしてから家に帰るのだった。

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