18. お泊まり勉強会
あたしが【青い春の風】を演じてから一週間がたった。もうすぐGWだ。そう考えたらこの花咲学園に入学して、もう1ヶ月が立つのか……。そして分かったことがある。
あたしは、やっぱり過度に小説のキャラクターに感情移入してしまうようだ。あれから冷静に考えてみたけど、やはり、あたしが結愛先パイの事を恋愛感情として好きな訳がない。あたしは百合小説を読んだあと、自分自身の体験のように錯覚してしまう……。
だからこれ以上、百合小説を小説演劇同好会でやっていくと……。うーん。もしかして結愛先パイも同じなのかな……。そんなことを考えていると隣の席の水瀬さんが話しかけてくる。
「凛花ちゃん。また悩み事?最近多いね」
水瀬さんは心配そうな表情で見つめてきた。
「うん……まぁ色々とね……」
「そっか……そう言えばこの前相談した件なんだけど。結局お断りすることにしたの。一応凛花ちゃんには言っておこうかなと思って。」
水瀬さんはそうあたしに言う。相談した件って女の子の先輩に告白された件だよね?そうか……断ったんだ。やっぱり女の子同士の恋愛は成り立たないのかな……。すると春菜ちゃんとサキちゃんがやってくる。
「助けて~凛花ちゃん~!」
「どうしたの春菜ちゃん?」
「来週の小テスト、赤点だとGWに補習なんだって~!私、昔から国語苦手なの!お願い助けて!」
助けてと言われてもさ……どうしようもないよ……。春菜ちゃんは涙目になって必死に訴えかけてくる。確かに今回の小テストは難しいらしいけど……。
「でもなんであたしなの?もっと頭いい人いるでしょ?」
「ほら!だって凛花ちゃんは小説めちゃくちゃ読んでるから!そういう国語的なの得意だと思って!」
まぁ…嫌いではないけど。なんかそれ褒められてない気がする……。
「今週末さ。みんなでお泊まり勉強会しようと思ってさ。凛花もいいよね?あっ水瀬さんもどう?水瀬さん頭いいじゃん!」
「私もいいの?それじゃせっかくだから、いこうかな。」
「あのさサキちゃん。それ勉強会なんだよね?ただの女子会の間違いじゃないよね?」
まぁ楽しそうだしいいか。それにしても水瀬さんも来るのか……。意外だな。だって水瀬さんって完璧超人だしさ。
「あっ。一応結愛先パイに確認してもいい?部活はないと思うけど……。」
あたしはそう言うとスマホを取り出す。ふと3人を見ると目を丸くしてあたしを見ている。
「……なに?」
「結愛先輩って?いつから名前で呼ぶようになったの凛花?」
「ついこの前まで小鳥遊先輩って言ってたのに。そう言えば凛花ちゃん小鳥遊先輩のお家にお泊まりもしたことあるんだよね?」
「えっ!?いや…もう1ヶ月立つしさ!別に深い意味とかないよ!?お泊まりは部活の活動の一環だからさ!」
3人は疑うような視線で見てくる。本当に変な意味はない。ただ……あたしと結愛先パイが小説演劇同好会でやっていることが知れたらヤバいけど。そんな様子を見ていた水瀬さんが話す。
「小鳥遊先輩って確か成績優秀者だったよね?よく掲示板に名前載ってるし、すごいよね。」
「えっ!?そうなの!?」
「いやいや。凛花。あんた自分の部活の先輩のことも知らないの?」
「凛花ちゃん!小鳥遊先輩にお願いしてよ!」
知らなかった。結愛先パイって頭いいんだ。ちょっとびっくりかも。その後はなぜか知らないけど話が盛り上がり、一人暮らしの結愛先パイの家でお泊まり勉強会をする予定になってしまった。
放課後。あたしは結愛先パイに聞いてみることにする。
「週末私の家で勉強会?別に構わないわよ?」
「えっ!お泊まりですよ!?しかもあたし含めて4人も!迷惑じゃ……。」
「布団ならあると思うし、第一あなたもお泊まりしてるじゃない?大勢のほうが楽しいわよ。大歓迎よ私は。」
確かに……言われてみればそうだけど。なんか……な。
そして週末になり、あたし達は結愛先パイの家に向かうことになった。あたし達は電車に乗り、目的の駅に着く。そこから歩いて10分ぐらいで結愛先パイの住んでいるマンションに着いた。結構大きいマンションだ。エントランスに入り、結愛先パイの部屋番号を押して呼び出しをする。
「えっと……2050……」
「すごい大きなマンションだね?ここで一人暮らしかぁ。」
「うん。家賃とか大丈夫なのかな?やっぱり親の援助は必要だと思うんだけど……。」
「お金持ちなんだね。小鳥遊先輩って。」
あたし達が話していると、結愛先パイが出てくる。
「あら?こんにちは。今日はよろしくね?」
「お邪魔します。こちらこそお世話になります。」
「小鳥遊先輩こんにちはです!」
「お邪魔しまーす!」
みんなが挨拶すると結愛先パイが微笑む。
「あら?凛花入らないの?」
「1つ言っておきますけど。あたしと結愛先パイの小説演劇同好会の活動のこと絶対言わないでくださいね!あんなことバレたら大変だし……。」
「あんなこと?ああ…凛花が意外に声を大きく荒げちゃうこととか?」
「言わないでください!恥ずかしいな……。」
あたしは顔を真っ赤にして答えると、結愛先パイが笑う。こうしてあたしはみんなと謎のお泊まり勉強会を開くことになったのだった。