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17. Story.2 ~【青い春の風】~⑤

17. Story.2 ~【青い春の風】~⑤




【小説:青い春の風】

 初めての夜。私たちはただの文芸部の部長と後輩の関係から、親友そして……必要な存在に変わっていく。女の子同士の恋愛。世間はまだ偏見の目があるだろうか?それでも私は萌を愛してしまった。この気持ちをどうすればいいのかわからない。


 私はずっと前から萌が好きだった。いつも明るくて、どんな時も笑顔を絶やさない彼女に心惹かれた。そしてそれが恋愛感情だと気づくのには時間はかからなかった。彼女は私にとって一番大切な人で、誰よりも愛おしい存在。だからこの恋は叶わなくても構わないと思っていた。


 ある日彼女が言ったのだ。


「私……部長の事、好きなのかもしれないです。」


 私はその時心臓が飛び出るんじゃないかと思うくらい驚いた。まさか彼女の方からそんな事を言うなんて思ってもなかったからだ。でもすぐに冷静になって私はこう答えた。きっと彼女は私の事を友達として好きになったんだろうって思った。


 だから、2人で決めた。その気持ちが何なのか知るために次の春まで付き合ってみようって……。


 -小説実演-

 あたしは今暗闇の中、裸のまま小鳥遊先パイと抱きあっている。柔らかい感触と熱が伝わってくる。すごいドキドキしてしまっている。小鳥遊先パイの裸は見たことあるのに……。そして小鳥遊先パイからあのワンシーンを始めていく。


「ドキドキしちゃいますね、夏海先輩?」


「あ……。そうだね。本当に私でいいの?」


「はい。でもこれが最後。もう約束の春が来る。私と夏海先輩の関係はこれが最後なんです。」


「萌……」


 小説の桐山萌を演じている、小鳥遊先パイはすごく優しい声でささやくように言う。小鳥遊先パイの顔を見ると今までで一番優しく微笑んでいた。その表情を見た瞬間あたしの中の何かが崩れる音がした。それはあたしにくれた表情なの?それとも真野夏海に?


 そしてあたしたちはゆっくりと唇を重ねた。少しの間キスをしていたけど小鳥遊先パイの方から離れていった。


 すると小鳥遊先パイがまた耳元で囁く。


 小鳥遊先パイの声を聞くたびに胸がきゅんとする。そして小鳥遊先パイはあたしの身体に手を伸ばしてきた。そしてそのまま小鳥遊先パイの手があたしの身体にふれた。その途端、身体中に電気が流れたような感覚になる。


 あたしは思わず声が出てしまいそうになるので恥ずかしくて手で口を覆った。しかし小鳥遊先パイはその手をどけてあたしの首筋を舐め始める。首筋から全身にゾクッとした快感が広がる。


「夏海先輩ダメですよ。ちゃんと感じてください。ほらもっと感じさせてあげますよ。」


 そう言って小鳥遊先パイは再びあたしの身体を触る。さっきよりも強い刺激が襲ってくる。


「ああ!……だめぇ!」


「ふふっ。可愛いですね夏海先輩。もっともっとしてあげますから。」


 小鳥遊先パイの優しい声があたしの頭の中を溶かしていく。まるで魔法にかけられているみたいに……。


 あたしと小鳥遊先パイは【青い春の風】を演じていく。その間、あたしは初めての感覚に恥ずかしさも忘れて声を出していた。



☆★☆★☆★



 あたしは暗い天井を放心状態で見ている。何も考えられない。ただボーっとしているだけ。呼吸もおぼつかない、ただ気持ちの良い疲労感だけがある。


 気持ち良かったなぁ……。


 小鳥遊先パイはあたしの頭を撫でてくれる。小鳥遊先パイの手はとても温かくて心地よかった。


 あたしは無意識のうちに小鳥遊先パイに寄りかかっていた。小鳥遊先パイは何も言わずにあたしを支えてくれていた。


 しばらくすると、小鳥遊先パイが静かに口を開いた。


 小鳥遊先パイの声が聞こえてくる。


 小鳥遊先パイの言葉が耳に入ってくると、少しずつだけど気持ちが落ち着いてくる。まだ頭がぼーとしているけど、だんだん意識がはっきりしてきた。


「凛花。大丈夫?」


「あっ。はい大丈夫です。」


「お風呂入ってきなさい。私は直接触ってないけど、あれだけ喘いでたから……濡れちゃってるでしょ?」


 確かに小鳥遊先パイの言う通りだ。下半身に初めての違和感を感じている。ちょっと下着が湿っている気がする。


 あたしはそのまま立ち上がると、お風呂場に向かう。あたしはお湯に浸かりながら考える。どうして小鳥遊先パイはあんな演技ができるんだろう?


 あたしの事……


 本当に好きなのかな……。


 もしそうなら嬉しいけど……。


 でも、もしも小鳥遊先パイが本当はあたしの事好きじゃなかったとしても……。あたしは小鳥遊先パイの事が好き。この気持ちはきっと……。寝室に戻ると小鳥遊先パイはもう寝る準備をしていた。


「あの小鳥遊先パイ。お願いがあるんですけど……。」


「お願い?何かしら?」


「その……一緒に寝たいなぁとか思いまして。やっぱり嫌ですよね?」


「ううん。いいわよ。一緒に寝ましょっか。」


 そう言って小鳥遊先パイは奥にずれてくれた。やった! あたしはいそいそと小鳥遊先パイの隣に入る。


「明日。あたし映画みたいです。一緒に行きませんか?ほら【青い春の風】はフライングして今日やっちゃったし。」


「映画かぁ。あまり外は好きじゃないの。それならDVDを借りてくるのではダメかしら?」


「はいそれでいいです。その……ゆ……結愛先パイ?」


 あたしが名前で呼ぶと小鳥遊先パイの顔が真っ赤になる。可愛い……。そんな顔するんだ。あたしは少し嬉しくなる。お互いに照れているのか会話もないまま時間が過ぎていき、そして気がつくとあたしは眠っていたのだった。

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