16. Story.2 ~【青い春の風】~④
あれからあたしは走って家に帰った。そして今は午前1時。布団に潜っている。なんであんなことしてしまったのか……。もう少しでキスをしてしまうところだった。あたしは小鳥遊先パイが好きなの!?小鳥遊先パイは女の子だよ!?これってあたしの今の気持ちなの!?それとも【青い春の風】の真野夏海の気持ち!?
明日会うのがすごく気まずい……。しかもお泊まりだし。どうしよう……。そんなことを考えていたら、あたしのスマホが鳴る。
電話だ!相手は……小鳥遊先パイ? あーもう!出たくないよぉ……。でも出ないともっと気まずくなるよね……。仕方ない。覚悟を決めて出ることする。
プルルルルルー♪
「もしもし……。」
《もしもし。凛花?良かった電話に出てくれて。》
「はい……。あの、ごめんなさい……。いきなりあんなことをしてしまって……」
《いいのよ。気にしないで。まさか凛花から来ると思わなかったからビックリしたわ。》
そう言ってクスッと笑う声が聞こえる。それから少し話をしたあと、小鳥遊先パイは突然こんなことを言い出した。
《ねぇ凛花。明日の事なんだけど……延期しましょうか。なんか凛花の気持ちが不安定みたいだし。》
「えっ!?大丈夫です!それに延期なんて嫌です!あたし……小鳥遊先パイに会いたい……。」
《凛花……。本当に良いのね?後悔しても知らないわよ?》
その言葉を聞いて、胸の奥がキュゥっと苦しくなった。それはきっとこの前と同じ感情だろう。そして小鳥遊先パイの言葉を聞いた瞬間、あたしは自分の想いを口にしていた。
だってこれは恋なんだもん……。私の気持ちなのか、【青い春の風】の真野夏海の気持ちなのか分からないけど、あたしは小鳥遊先パイと一緒にいたい。
《じゃあ明日の朝7時に駅前集合でいいかしら?》
「はい。」
《ふふっ。じゃあまた明日ね。おやすみ凛花。》
その言葉で電話は切れた。そしてあたしも眠りについた。次の日。約束の時間より30分早く着いたあたしは、ベンチに座って本を読んで待つことにしている。今日は土曜日だから人が多いなぁ。
そんなことを考えていると、あたしの視界に影ができる。あっ!来たかな?と思い顔を上げるとそこには見慣れた人物が立っていた。その人物はあたしを見て優しく微笑む。
「おはよう凛花。待たせたかしら?さぁ行きましょ!」
小鳥遊先パイはあたしに手を差し出す。あたしは嬉しそうな表情をして手を握る。その手を握り返すようにギュッと握る。小鳥遊先パイの手の温もりを感じる。それだけなのに凄く幸せを感じた。
小鳥遊先パイと2人で街を歩く。今まで感じたことの無い幸せな時間が流れる。そして気がつくと小鳥遊先パイの家に着いていた。
「さて。今日は凛花の好きなもの作ってあげるわよ?何がいいかしらね?」
「なんでもいいですよ。」
「あらそう?なら凛花はリビングで待っていてちょうだい。適当に作るから。先にお風呂にでも入っていて。」
そう言われて私は脱衣所に向かう。そして服を脱いで湯船に浸かる。うぅ……緊張するな……。昨日の夜はドキドキしてそこまで寝れなかったんだよなぁ……。でも今の小鳥遊先パイとの時間は凄く楽しい。
「よし!いつまでもウジウジ考えててもしょうがない!今は楽しまないと!」
自分にそう言い聞かせて湯船から出る。タオルで体を拭いて新しい服を着る。髪を乾かしながら鏡を見る。髪長いなぁ。今度切ろうかな。
「凛花~出来たわよ~」
そう呼ばれてリビングに行くと美味しそうな料理が並んでいた。どれもこれも美味しそう!!
「いただきます!!」
2人でご飯を食べる。すっごく美味しい!!
「小鳥遊先パイ。めちゃくちゃ美味しいです!」
「良かったわ。喜んで貰えて。」
そう言うと小鳥遊先パイは嬉しそうに笑う。その笑顔が可愛いくてキュンとする。食べ終わって食器の後片付けをしている時、小鳥遊先パイは急に立ち止まった。そしてゆっくりと口を開く。
「ねぇ凛花。聞いて欲しいことがあるの。」
真剣な顔をした小鳥遊先パイ。なんだろう?と思っていると突然後ろから抱きしめられた。え!?どういうこと?頭が混乱している。
「あのね凛花。私あなたが好きよ。」
そう耳元で囁かれると、体中に電流が走ったような感覚になる。その言葉を聞いた瞬間、あたしは無意識のうちに返事をしていた。
「あ、あたしも小鳥遊先パイのことが好きです……」
そう言った後、小鳥遊先パイはあたしの顎を持って自分の方に向けるとキスをした。触れるだけの優しいキス。唇が離れたあと、小鳥遊先パイが話し出す。
「明日まで待てないわね?【青い春の風】を始めましょうか。凛花。先に布団に行ってて?もちろん服は脱いでおいてね?」
「えっ!?あの……小鳥遊先パイ……?」
「大丈夫。怖がらないで……。私に任せてくれれば良いんだから。」
そう言って小鳥遊先パイは寝室に入って行った。えぇ!?どうしよう……。小鳥遊先パイがあんなこと言うなんて……! あたしは覚悟を決めてパジャマを脱ぐ。そして下着姿になってベッドに入る。心臓の音がうるさいくらいに鳴っている。
ガチャッとドアが開く。そして小鳥遊先パイが入ってくる。
そして小鳥遊先パイもあたしと同じように裸になった。小鳥遊先パイは電気を消して、あたしの隣に横たわる。そして優しく抱き寄せた。