13. Story.2 ~【青い春の風】~①
あたしは家に帰り、寝る準備をして【青い春の風】と呼ばれるジャンル恋愛、百合小説を読むことにする……。またこの日がやってきたか……。
あらすじを読んだ限りではなんか切ない物語のようにも思えるけど……。でも百合恋愛なんだよね。別に百合恋愛を否定しているわけじゃないけどさ。まあ読んでみるかな。そうしてあたしは本を読み始める。
途中まで読んだ感想としては切なかった。なんだろうこの気持ち……。なんか悲しいような、嬉しいような複雑な気分だなぁ……。ふとスマホを見ると午前2時をまわっていた。
「やば!もう寝ないと!続きはあとにしよ!」
そしてそのまま眠りについた。次の日の朝、案の定いつもより遅く起きて、急いで学校に行く支度をする。学校に着いたらすぐに教室に向かい自分の席に着く。
「ギリギリセーフ!はぁ良かった……。」
「どうしたの凛花ちゃん?珍しいね時間ギリギリなんて?」
「夜更かしして小説読んでたから。」
いつものように隣の席の水瀬さんが話かけてくる。水瀬さんとは入学式の日の時も隣に座っていた。そして同じクラスになってすぐに仲良くなった。
ちなみに水瀬さんはクラスの男子から人気があるらしい。容姿端麗で成績優秀、運動神経抜群という小説に出てくるような完璧超人である。あたしとは比べ物にならないよね……。
「そうなんだ。何の小説読んでたの?」
「えっと……【青い春の風】って言う……内容が百合なんだけど。恋愛小説。まだ全部読んでないけど、ちょっと切なくていい感じだったよ。」
「へぇー私もその小説知ってるよ。最近本屋さんの目立つところに並んでるもんね。私も読んでみようかな?」
水瀬さんもそういうの興味あるの?と聞くのはやめよう。昨日のサキちゃんみたいになるかもだしね。それにしてもやっぱりみんなこういうの好きなのかな?あたしが偏見を持ってるだけなのかもしれないな……。
放課後。いつものようにあたしは小説演劇同好会の部室に行く。部室には既に小鳥遊先パイがいた。昨日の事があったのでなぜか安心する自分がいた。
「来たわね。そこに座って。【青い春の風】について話しましょう。」
小鳥遊先パイに促されてあたしは椅子に座った。すると小鳥遊先パイは早速口を開いた。
「まずは……配役よね?主人公の真野夏海。文芸部の部長。部員であり親友の桐山萌。」
「それならあたしが萌で小鳥遊先パイが夏海では?今の立場とそっくりですし。」
あたしがそう小鳥遊先パイに言うと、すごく驚いた表情を見せる。何か変なこと言ったっけ? そう思っていると小鳥遊先パイはすぐに冷静になりこう答えた。
「凛花。あなたもしかしてこの小説全部読んでいないでしょ?」
「はい。昨日読み始めたばかりなので……」
「だと思ったわ。萌をやりたいなんて変だと思ったのよ。とりあえず何も言わないけど。」
桐山萌……。一体どんなキャラクターなんだ?とりあえずあたしが読み終わってないので、話しは終了し明日改めて話すことになった。そして帰り道。途中までは小鳥遊先パイと帰ることにする。
「凛花。今日は泊まらないの?」
「え?泊まらないですよ。」
「そう。残念。いつでも泊まりに来ていいからね?私は1人暮らしだし。」
小鳥遊先パイがそう言ってくる。なんか悪い気がしてきた。もしかしたら純粋な気持ちで私と一緒にいることが好きなのかも……。それなら嬉しいかな。1人は寂しいしね。あたしは小鳥遊先パイと別れるまでそんなことを考えていた。
家に帰ってすぐにお風呂に入る。それからご飯を食べて宿題をして、ベッドに入って寝ようとするがなかなか寝付けなかった。昨日の夜はあまり寝られなかったから眠気はあるはずなのに寝れない。
まあこういう時は小説を読むに限る!そう思い【青い春の風】の続きを読むことにする。
後半に行くにつれて、夏海が萌にすごいプレイを要求されているシーンが多くなってきた。その度にあたしは興奮してしまい、少しの間悶々として目が冴えてしまった。これが小鳥遊先パイの言っていたやつか……。
確かにこれはすごいなぁ。
ん?待てよ?もしあたしが夏海をやるなら、あたしが小鳥遊先パイに……あんなことやこんなことを……!ダメだぁ~!想像したらドキドキが止まらない!!初めてなのに、あたしいきなりこんなの無理無理!!この前の【日向に咲き誇る】の比じゃないってば!何とか回避しなくては……。結局寝れたのは午前4時だった。
次の日の朝、いつもより遅く起きてしまい慌てて支度をする。そして学校に走って向かった。学校に着いたらすぐに教室に向かい自分の席に着く。朝から走ったせいか、かなり疲れているような感じがした。
「連続だね凛花ちゃん?また小説読んでたの?」
「あっうん。結局どっちも同じなんだ……。」
「同じ?」
水瀬さんが首をかしげる。そうあたしは夏海を選んでも萌を選んでも結局恥ずかしい思いをする。受けか責めかの違い。どちらも選べないという結論に至った。だって……あたし……まだ……処女だし……。
放課後。あたしはすぐに部室に向かう。部室には小鳥遊先パイがいて、本を読んでいた。
「小鳥遊先パイ!お話があります!」
「あら?何かしら?」
「あたしにはこの【青い春の風】は刺激が強すぎます!やめましょう!」
あたしがそう言うと、小鳥遊先パイが急に立ち上がりあたしの方に向かってくる。そして壁ドンをしてくる。いわゆる乙女ゲームとかでよくあるあれである。
そして小鳥遊先パイは耳元で囁くようにこう言った。
「ダーメ。自分でできないなら軽く練習しておく?いきなりだと怖いでしょ?」
「ひゃっ……!」
あたしは小鳥遊先パイの甘い声を聞いて体がゾクッとする感覚を覚える。まるで小悪魔のような小鳥遊先パイにあたしは完全に身体が硬直する。
「どう?これくらいで動けなくなるんじゃ本番ヤバいわよ?それとも私がしてあげようか?」
小鳥遊先パイの吐息が耳にかかって頭がクラクラする。
「だっ大丈夫です!」
あたしはなんとか小鳥遊先パイを押しのけて距離を取る。
「ふふっ。やっぱり可愛いわね凛花は。とりあえず、やらない選択肢はないわ。どっちか決めておくのね?私はどっちでも大丈夫だから」
すると小鳥遊先パイはニヤリと笑ってこう言った。うぅ……。あたしはどうすればいいんだろ? 誰か助けてー!