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11. ドキドキお泊まり会

11. ドキドキお泊まり会




 あたしは今、小鳥遊先パイの家のお風呂にいる。湯船に浸かりながら気持ちを沈めている。あたしが小鳥遊先パイの家に泊まりたかったのは、もっと小鳥遊先パイの事を色々知りたいから。もちろんイヤらしい意味じゃない。


「はぁ……なんですぐそういう事考えちゃうんだろ。あたし……エッチな子なのかな……」


 そう呟きながら自分の胸を触ってみる。確かにいつもよりドキドキはしている。でもこれは緊張しているからであって、あたしが小鳥遊先パイのことを好きとかそう言うことじゃないはず。


 好きとか……じゃ……。


 さっきの小鳥遊先パイの言葉を思い出す。『好き』この意味は一体なんだろう……。もしかして本当に?いやいやそんなはずないよね。でもあんな真剣に言われたらやっぱり意識しちゃうじゃん……。


 その時だった。突然ドアが開く音がした。振り返るとそこにはタオル一枚巻いただけの姿の小鳥遊先パイがいた。思わず声を上げる。


「え!?小鳥遊先パイ!?」


「あっごめんなさい。凛花の着替え忘れちゃったわ」


「いやいや、それはいいんですけど!何で入って来たんですか!?」


「別にいいじゃない。あなたの裸はこの前身体にキスマークつけるときに見たし。私のも見る?」


 そういう問題じゃないよ!あたしは湯船から勢いよく立ち上がると、突然立ちくらみがする。あー。のぼせちゃったかも……。そして意識を失ってしまった。





 気がつくとベッドの上に寝ていた。隣にはパジャマ姿の小鳥遊先パイがいる。ここはどこだっけ?そうだ。小鳥遊先パイの家だ。確かお風呂でのぼせて倒れてしまったんだった。


「あら。気がついた?まだ横になってなさい。まったくお風呂でのぼせるなんて。気をつけなさい、子供じゃないんだから。」


「すいません……。」


 はぁ情けない。高校生にもなって。ふと自分の身体を見る。身体についていたキスマークがうっすら赤みを帯びている。というかあたし裸!?慌てて布団の中に潜り込む。


「何もしてないわよ?意識のないあなたに色々してもつまらないし。」


「そんなこと聞いてません!それしてたら犯罪ですよ犯罪!」


 あたしは一気に恥ずかしくなる。意識があったら……いやいや!違う違う!


「ふふっ。そこに着替えを用意したから着替えたら?私は別に裸の凛花でもいいけど?そっちの方が手っ取り早いし?」


「着替えます!!」


「あら。残念。」


 手っ取り早いって何が!?小鳥遊先パイはあたしに何する気なの!?怖い!あたしもうお嫁に行けない!いやそもそも結婚しないけどね!! そう思いつつ用意された服に着替える。サイズはピッタリだった。小鳥遊先パイは時々お母さんみたいになるよね。


「良かった。私の中学生になったばかりの時の物だから着れるか心配だったけどぴったりね。」


「悪かったですね!どうせあたしは小さいですよ!」


 なんかムカつく。あたしだって成長期なんだからこれから大きくなるはず!多分!その時、小鳥遊先パイの顔つきが変わる。何かを考えているような表情をする。


「どうかしましたか小鳥遊先パイ?」


「凛花。やりたいの?」


「やるって何を!?あたしそんなエッチな子じゃないですから!」


「違うわよ。それ」


 小鳥遊先パイが指をさすほうを見ると、あたしがサキちゃんと一緒に買った【青い春の風】が見える。


「あっいやこれはその……。」


「凛花素晴らしいわ!やっぱりあなたは私と同志なのね?いいわ。次の演目はその【青い春の風】にしましょう!明日私も買ってくるわ!その作者さんは百合描写少なめだけど描かれた時のシーンはもう格別なのよね!」


 なぜか饒舌になり、1人でテンション爆上がり中の小鳥遊先パイ……。描かれた時のシーンはもう格別なのよね!とは?小鳥遊先パイがとりあえず落ち着くまで待つことにした。


 しばらくすると小鳥遊先パイは落ち着いたようで、あたしの隣に座った。少しの間沈黙の時間が流れる。あたしは気になっていたことを質問した。


「あの……小鳥遊先パイは嫌じゃないんですか?演技とはいえ、あたしと……あんなことするの?」


「あんなこと?何のこと?」


 この人わざととぼけてるよ!絶対わかってて言ってるよ!小鳥遊先パイは目を丸くしている。


「きっ……キスとかですよ!」


「あー。とかって?他は?」


 この人絶対楽しんでるよ!あたしは顔を真っ赤にして俯く。そして小鳥遊先パイは答える。


「そうね……私はあなたの事好きだから問題ないけど。でもいつもこう考えているわ。小説の登場人物ならどうなのかな?って。だから嫌じゃないかしらね?」


 えっ?今好きって言ったよね!?また言ったよね!?聞き間違いじゃないよね!?あたしは思わず顔を上げる。


「ふふっ。もう寝ましょ。明日も学校だしね。おやすみ凛花」


 そう言うと小鳥遊先パイは布団に入る。小鳥遊先パイからシャンプーの匂いが漂ってくる。結局あたしはドキドキして眠れなかった。

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