3. テンプレとフラグと時々チート(?)
小説演劇同好会という、少し訳のわからない部活動をやる羽目になってしまったあたし。しかも『小説』をやるというのがまたいまいち分からない。でも冷静に考えたらまだ入部届けをだしていない。まだ間に合う。今ならまだ…… しかし、そんな考えは甘かったようだ。
あたしは小説演劇同好会の扉を勢いよく開ける。そこには小鳥遊先パイの姿があった。
「小鳥遊先パイ!お話があります!」
「あら?凛花。私もよ。入部届けを出しておいたから書かなくて大丈夫よ。」
「はぁ!?なんでそんな勝手なことを!?」
待て待て。まだ入部するとは言ってないよね?勝手に書かないでくれますかね?とりあえず取り下げをしないと。
「あたしは小説演劇同好会には入りません。」
「ダメよ。私はあなたに身を持って体験してもらう恋愛物をもう選んでいるから。」
そう言いながら小鳥遊先パイは承認をもらった入部届けを見せてくる。この先パイ……意外と強引なんだけど。それにしても本当に変な部活に入ったなぁ……。仕方がない。こうなったらやけくそだ。あたしは小鳥遊先パイに言い放つ。
「なら勝負しましょう!あたしが勝ったらすぐにその入部届けを取り下げしてもらいますから!」
「いいわよ。そんなテンプレみたいな展開、割りと好きよ私。なら、その代わり私が勝ったら、私に付き合ってもらうからね?約束よ?とか言っておこうかしらね。」
えっ?付き合う?それってデート的なあれですか?まあ別にあたしは構わないけどさ……。なんか恥ずかしいんだけど。顔赤くなってないかな……。
こうして、あたしと小鳥遊先パイの入部をかけた勝負が始まった。
体育館に向かい『卓球』で勝負することにする。私は中学生の時は卓球部だったから。ずるいとかは言ってられない。まずはこの勝負に勝つことが優先事項なのだから。
「じゃあ始めましょうか。」
「その前に小鳥遊先パイって卓球得意なんですか?」
「いいえ?正直やったことはないわね。」
ふふ。なら楽勝でしょ。負けるわけにはいかない。
◇◇◇
小鳥遊先パイはラケットと卓球台を片付けている。私は1人隅っこで体育座りをしている。完敗だ……おかしい。あんなに自信満々だったのに……。なぜ負けたのか分からない。こんなはずではなかったのに……。
「私の勝ちね」
「うぅ……嘘つきましたね!やったことないって言ったじゃないですか!」
「ないわよ。この小説のおかげじゃない?」
そう言いながら一冊の小説を手渡される。タイトルは『恋して卓球!』だ。
「あまりラブコメは読まないんだけど、その主人公の女の子になりきっただけだから」
なりきるって……そんなチート能力みたいなことできるんですか?あたしなんてただ必死になってただけなのに……。なんだか悔しいなぁ……。
「まぁ約束は約束だから。あなたは今日から小説演劇同好会のメンバーよ」
「……はい。」
こうしてあたしは小説演劇同好会に入ることになってしまったのだった。