1. プロローグ
小説。文字だけでストーリーを伝え、面白さや感動を与えるもの。漫画で絵をつけることで、より視覚的に感情を伝えられるのはもちろんだが、何よりも素晴らしいのはストーリーそのものだろう。
そのストーリーももちろん大事だ。しかし、それよりももっと大事なことがある。それは、読者に物語を通して何かを伝えること。つまり、読者が物語の中に入ってきて、自分で考え、行動し、心を動かせるような仕掛けがあることだ。
それがないと、ただの絵空事になってしまう。読者にとって、物語の世界に入ることこそが読書の目的なのだから、それができない物語は退屈なだけだ。そして、もし作者がそのことに気づかずにいるなら、とても残念なことだと思う。
そして小説には様々なジャンルがある。ラブコメ、ミステリー、ファンタジーなど、書き方によって色々な形になるものだ。その中でも特に人気なのは恋愛物だろう。
でもあたしは、そういう作品はあんまり好きじゃない。というか、嫌いかもしれない。いや、はっきり言ってしまえば大嫌いだ。
恋愛物は、主人公とヒロインの間に障害があればあるほど盛り上がる。主人公が障害を乗り越えて愛を貫く様を描くことが主題となるからだ。
だけどあたしは思うのだ。そんなに障害が必要なのか? 本当に必要なのか? 障害がある方が燃えるってことは、結局主人公のことをそれほど真剣に想っていないんじゃないかと思う。
逆に障害のない恋愛ものはどうだろうか。本当の気持ちを言えず、自分の本音を押し殺して、表面的な関係だけを維持し続ける。お互い傷つかないように言葉を選んで、相手の望む姿を演じ続ける。
そうやって作られた偽物の幸せの中で、主人公は果たして幸せなんだろうか? 少なくともあたしには、全然ハッピーじゃないように思える。
だから本当に小説の恋愛は成り立つのだろうか。という疑問しかない。でも、そんな作品があるなら、とても素晴らしいことだと思う。