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第4章 15 寝覚めの悪い朝 2

 額に冷たい何かを感じ、アンジェリカは目を覚ました。


「うぅ~ん……」


ゆっくり目を開けると、心配そうにのぞき込むヘレナと目が合う。


「ヘレナ……?」


「あ……申し訳ございません。起こしてしまいましたか? 顔が熱かったので冷たいタオルを額にお乗せしたのですが……」


「ううん、大丈夫。ありがとう、とても気持ちがいいわ……」


「具合はいかがですか?」


「そうね……喉が痛いわ」


眠りに就いた時は、喉の痛みを感じなかったが、今はズキズキと痛んでいる。


「やはり本格的な風邪を引いてしまったようですね。後でお医者様を呼びましょう」


「そんな、お医者様なんて大げさだわ。寝ていれば大丈夫よ」


「いいえ、そういうわけには参りません。風邪はこじらせると大変ですから。よろしいですね?」


「……分かったわ。ヘレナの言う通りにする」


「ところでアンジェリカ様。昨夜から何もお召し上がりになっておりませんが、お腹は空いておりませんか?」


尋ねられるも、少しも食欲は無かった。


「空いていないわ。何もいらない」


「まぁ、そうなのですか? でもそれではいけません。もうお昼を過ぎていますし、エルに話して何か作って貰いましょう。どんなものなら食べられそうですか?」


「そうね……」


アンジェリカは少しの間考えた。


「甘くて温かい物なら食べられそうだわ」


「甘くて温かい食べ物ですね? 分かりました。すぐに厨房に伝えてきますからお待ちください」


ヘレナは頷くと、急ぎ足で部屋を出て行った。


(ヘレナ……ありがとう)


アンジェリカは心の中でヘレナにお礼を述べた——



****


 エルが用意してくれた食事は温かいパンプディングだった。


「どうぞ。アンジェリカ様」


ヘレナはベッドテーブルを用意すると、アンジェリカの前に置いた。


「まぁ……美味しそう」


先程迄食欲が無かったが、甘い香りがアンジェリカの食欲を誘う。


「どうぞ、召し上がってください」


「ええ」


早速スプーンを手に取り、パンプディングをすくって口に運ぶ。


「……甘くて柔らかい。とても美味しいわ」


美味しい食事を口にすると、不思議と幸せな気持ちが込み上げてくる。先程迄暗い気持ちだったのが少しだけ浮上したようだ。


「それは良かったです。アップルシナモンティーもありますよ」


ヘレナは用意していたティーポットをカップに注ぐ。途端に室内にリンゴとシナモンの香りが漂ってきた。


「飲み物も、とても美味しそうね。後でエルにお礼を言っておいてもらえる?」


「ええ。勿論です。でも今日は食事を召し上がれて良かったです。皆心配していましたから」


「そうだったの? それは悪いことをしてしまったわ」


「皆、アンジェリカ様のことが好きなので心配するのは当然です。それだけ大切に思っているのですよ?」


自信を無くしているアンジェリカを元気づける為、いかに周囲から好かれているのかを強調するヘレナ。


「皆……? それって本当の話なの?」


「ええ、勿論本当です。なのでしっかり食事をして風邪を治しましょう。今、ニアがお医者様に連絡を入れに行っていますから」


「ええ、分かったわ」


アンジェリカは笑顔で頷くと、食事を再開した――




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