「な、何ですって!? 3日後にお見合いですか!?」
「そんな! あまりに突然ではありませんか!」
アンジェリカの部屋にヘレナとニアの声が響き渡る。
「そうなの。お見合いなんて……まだ私、10歳なのに……」
お見合いの話に不安気な表情を浮かべるアンジェリカ。その様子にヘレナが声をかけた。
「アンジェリカ様、お見合いといってもそんなに不安になることはありません。まずは新しいお友達を作るような感じでいけばいいと思いますよ。それに貴族ともなれば、生まれてすぐに婚約者がいる場合だってあり得ますから。周りのお友達に婚約者がいる人はいませんか?」
そこでアンジェリカは少し考えてみた。
「……そう言えば、何人かいるわ」
「やっぱりいらっしゃるのですね? つまり、同じような経験をしているのはアンジェリカ様だけでは無いということです。どうですか? 少しは安心出来ましたか?」
「そうね。ヘレナの言う通りかも。ありがとう」
アンジェリカはニコリと笑う。
「3日後にお見合いとなると、色々準備を始めなければなりませんね。まずは当日着るドレスを決めなければ。今クローゼットの中にあるドレスで、お見合いに合うようなドレスがあるか、探さなければなりませんね」
ニアが意気込みを見せる。
「もし良いドレスが見つからなければ、すぐに仕立屋を呼んで……駄目だわ。それでは間に合わないわ。こちらから仕立屋に出向かないと。最短で仕上げてくれる仕立屋はあったかしら? いいえ、まずはクローゼットのドレスを見るのが先ね。ニア、すぐにドレスを全て出すわよ」
「はい、ヘレナ様!」
そして2人は、最もアンジェリカが愛らしく見えるドレスを探し始めるのだった――
****
――3日後
アンジェリカと令息セルヴィとの見合いの日がやってきた。
「アンジェリカ様、とても素敵でいらっしゃいますよ。きっとお相手のセルヴィ様もアンジェリカ様の愛らしい姿を見て、気に入って下さることでしょう」
ライトゴールドの長い髪にブラシを入れながらヘレナが話しかけてくる。
今日のアンジェリカの着ているドレスは、淡いピンク色のドレスだった。胸元と裾にたっぷりのフリルをあしらい、髪には同じ色のリボンをつけている。
「本当にヘレナはそう思う? セルヴィ様は私を気に入って下さるかしら?」
鏡の前に座るアンジェリカが不安げに尋ねた。
「ええ、勿論ですとも。フフフ、いよいよアンジェリカ様も恋に興味を持つ年齢になったのですね」
ヘレナは笑うが、アンジェリカからは意外な台詞が出てきた。
「だってセラヴィ様に気に入って頂けなければ、お父様に怒られてしまうから」
「え?」
ブラシで髪をといていたヘレナの手が止まる。
「アンジェリカ様……」
「私、お父様に役立つ娘だって思われたいの。その為にはセラヴィ様に気に入られなければならないのよ」
アンジェリカの必死の様子が伝わり、ヘレナは胸が締め付けられそうになった。
「大丈夫です、アンジェリカ様。笑顔で接すればきっとセラヴィ様に好いて貰えるはずです。この私が保証いたします」
鏡越しに、ヘレナはアンジェリカを見つめる。
「……笑顔でいればいいのね? 分かったわ、ヘレナ。私、頑張るわ」
アンジェリカは鏡の中で笑った――