ハロー。TS転生おじさんです。
神様とか白い空間とかそういうのは全く無く転生してしまったので、チートとかも特にありません。悲しいね。そもそも死んだかどうかもあやふやだから、転生か憑依かもよくわからないんだけどね。とりあえず転生ってことにして話を進めるけども、転生した事実に気が付いたのはだいたい4歳ぐらいの頃。それからはずっと女の子をやらせてもらっています。
転生したのは現代日本、だけど異世界。というのも、文字とか都道府県名とか年号とかに知らないものが多くあったから多分パラレルワールド的なアレなんじゃないかな。ネット掲示板で流行ってた異世界系都市伝説みたいだなあって最初は思ったよ。
そういうわけで、国語や社会にはちょっと苦戦しつつも子供の学習力と生前の知識で小学校は無双できた。さすがに小学校は楽勝ですよ。大人を舐めるな。今の中学もとりあえずは大丈夫。高校は全然自信ないけど。
異世界とはいえだいぶ近い世界らしく、文明レベルや大まかな歴史に違いはない。若者はスマホっぽい情報端末で動画サイトやSNSにかぶりつくし、世界大戦は2回起こって日本は負けた。下手に似てるせいでよく学校のテストでは前の世界の歴史と混同したりはしたけども、まあ全然違うよりかは順応しやすかったと思う。
この世界と生前の世界が違うのは2つ。1つはさっきも言った通り、文字や固有名詞などでいろいろ細かい違いがあるところ。日本で一番高い山は
そしてもう1つは……本当に、本当に意味が分からないんだけど。
この世界には魔法少女がいる。そして自分の悩みも、それに関わるものだった。
▽
悲鳴、そして逃げ惑う人々。残念ながらこの異世界日本において、このような光景はさほど珍しくもない。どこにでもあるものであった。
日本の首都である京代都、その某区。そこでは、長い
「我はトイレットペーパー怪人! 貴重な紙資源を無為に消費する貴様ら人類に、鉄槌を下しに来た!」
"怪人"と呼ばれる存在。それは、自分がこの世界にちょうど転生するかしないかというタイミングでこの世界に現れたらしい。
最初にこの世界に現れたのは"鐘の怪人"と呼ばれている。彼は日本の
この"怪人"に対して世界各国はすぐさま軍事的な対応を始めた。しかし、その結果は芳しいものではなかった。銃器・火薬の類が一切効かなかったためである。それだけでなく、軍隊が使うような兵器から単なる打撃に至るまで、一般的に攻撃たりうるほとんどの手段が意味をなさなかった。
唯一効果があったのは、「怪人に物理攻撃は効かないが物理的な干渉は効く」という性質を生かしたいわゆる"封じ込め"であった。つまり、大量のセメントを怪人の上に落とし、固め、埋めたのだ。これは非常に有効な対策であったが、都市部では使いづらいなど大きい制約もあり気軽に使えるものではなかった。それが使えない場合は、重機などを使って怪人を無理やり人類の生活圏から追い出すなどの次善策がとられた。
「どうした人間よ! このまま無抵抗を貫くというのなら、一帯を更地にし植林をしてくれよう!」
『急いでください、由良。周囲に魔法少女はあなたしかいません。このままでは民間人も危ない』
「ああもう、わかってるから。インドア派には、長距離走はきついんだって……」
しかし、追い出すだけでは無力化には至らない。人類が悩んでいる間にも怪人は破壊を続ける。時には、民間人が巻き込まれ死者が出る場合もあった。そして怪人が暴れてしばらくしてから現れたのが、"妖精"、そして"魔法少女"だった。
"妖精"はさまざまな姿を取る。あるものは宝石があしらわれたステッキ、またあるものは自由に動くクマのぬいぐるみ。それらの目的は、適性の高い少女を魔法少女にして怪人と戦わせること。
曰く、怪人には魔法でしか対抗できない。
曰く、魔法を扱えるのは適性の高い少女のみ。
曰く、人類の応援や希望が少女に魔法をくれる。
もちろん、最初はさまざまな議論が噴き上がったそうだ。何故少女だけなのか? 責任能力すら無い人間を死地に向かわせるべきではないのではないか? 自衛軍は、軍隊は何をしているのか?
しかし、それら疑問や反感を一掃するぐらいに彼女ら、魔法少女は圧倒的だった。
本当に一瞬であった。最初の魔法少女、【
しかし、【
そして、かくいう自分もその魔法少女の1人である。
「はぁ……はぁ……げっほ! ようやく……おぇ……たどり着いた」
『やはり運動は常日頃からした方が良いと思いますよ、由良』
「せめて自力で移動してくれない?」
『申し訳ありませんが、本ですので。自力では移動できません』
逃げる人々をかき分け、流れに逆らい逆らって長い紙……いや、トイレットペーパーを纏う怪人と対峙する。魔法少女でも、怖いものは怖い。【
自分も例にもれず、そこまで強くはない。
「ようやく魔法少女が来たかと思えば……随分とひ弱そうだ。我も随分甘く見られたものだな」
「うるさい。ちゃっちゃと変身するぞ、
『仰せのままに、
怪人は病的なまでに真っ白な巨人であり、頭の代わりに巨大なトイレットペーパーが首に嵌まっていた。トイレットペーパー怪人などとふざけたネーミングと見た目をしているが、怪人に弱い奴など1人もいない。油断すれば、こちらがやられる。
なぜか魔法少女は怪人の周囲でしか変身できない。怪人も変身途中の魔法少女を攻撃しない。どうして攻撃しないのか、それともできないのかわからないため、自分は変身中は常に内心ビビっている。
だが、やるしかない。
「文字の禍いが降りかかる」
自分の妖精、
「幻の音が眼を隠す」
五線譜を思い起こさせるモノクロ・ストライプが斜めにかかっている奇妙なドレスが服の上から生成されゆく。
「この力は敵を狂わすため」
最後に、名状しがたい怪物の装飾があしらわれた
「戦う私は【
そう、私の悩みとは……どうして魔法少女なのに、こんな陰鬱とした魔法を授かってしまったのだろうということだ。