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第102話 カチコミ開始


「えっと、実はメガネくんの魂を取り戻しに来まして……」


「ああメガネくんって、早乙女さおとめくんの? 魂なんて無くても大丈夫じゃない?」


 大丈夫じゃないと思いますが?


「だ、大丈夫じゃないですよ。岩田先生、心当たりとかあったりしませんか?」


「そうねえ……。まあ確かにこのメイド喫茶になら『入荷』しててもおかしくないでしょうけど……」


 ホントはおかしいんだけどね魂とか入荷してたら。

 でもこれが普通だと思ってきてる自分が居て恐いんだけど。

 感覚がマヒってきてるんだけど。


「ついさっき『千手観音』が入荷してきたくらいかしらね」


 金剛力士像(母ちゃん)がシバいた千手観音もう入荷してるよ。

 新商品の入荷早いな。


「あと、もう一人の『ユウポン』が新人さんとして入ってきたことくらいかな」


「新人さんが? 岩田先生と同じ『ユウポン』になるんですか?」


「ええ。おかげさまで『ポンポンコンビ』を組めるようになったから助かるわ」


 ポンポンコンビ……?

 ああ二人ともユウポンだからってことね。


「その人のお陰で『メガネ可』にもなったし」


「え、メガネ可って何ですか?」


「だから、その新人のユウポンさんのお陰で、私が眼鏡をかけられるようになったのよ」


 言いつつ、岩田先生は自分の左胸に付いた『ユウポン(メガネ可)』の名札を目線で差した。


 ……ヤバいよ何言ってんのか全然分かんねー。


(……いやちょっと待てよ……)


 そーいや俺……。

 岩田先生の名前が優実ゆうみってことを思い出す前から『ユウポン』に何かを感じてたんだよね……。


 そして、そのユウポンさんのお陰で岩田先生は眼鏡をかけられるようになった、と……。


 だから岩田先生は『ユウポン(メガネ可)』という名札を着けている、と……。


 ……………………。


 だ、ダメだ……。

 分からん……何かが掴めそうなのに……。

 この胸の引っかかりの正体が分からん……。


 もう真実はすぐそこにある感じしてんだけど分かんねええええええええええ。


 誰か名探偵呼んできてくんない。出来れば眼鏡をかけた小さな子どもの。


 メガネだけにってか? やかましいわ☆

 とか一人ツッコミしてる場合じゃないんよこっちは。


『お待たせしたわ!』


 と、店内放送が入った。

 こ、このやかましい声は……。

 ま、まさか……。


『清キラ高校一年、生徒会副会長の加藤かとう律子りつこよ! 待たせたわね城ヶ崎じょうがさきくん!』


 やっぱオマエかいぃ。

 てかどうやって忍び込んだあああああああああああああああああああああああ。


 完全に店の内部に入り込んでるよね。店の操舵室に居るよね。

 忍者かテメーは。


『ニンニン!』


 ニンニンってなに? やっぱそういうこと?


『これがイギリス流忍法の力よ!』


 ここでまたイギリス流忍法? 【狸寝入りの術】だけじゃなかったの?


「あら、加藤さんも来たのね」


 岩田先生は至極冷静に言った。


 なんでこんなフツーでいられるの? お店がジャックされてますよ?


 他の客もメイドさんも全く気にしてないの何なの?


「あの~岩田先生? アイツ止めに行かなくても良いんですか?」


「大丈夫大丈夫。ここメイド喫茶【極楽浄土】だからね。あんなの日常茶飯事よ」


 そーなの?


「この前は大仏様が殴り込みに来たし」


 どうなってんですかそれは? どう処理したんですかそれを?


「大仏はマリアさんがラブリンビームを放って粉々にしたし」


 あの恐ろしいビームか。喰らったらパンダさんにあらゆる角度から殴打されたりするビームか。マリアさんスゲーな。


「加藤さんなんて可愛いくらいよ。見届けようじゃないの」


 ね? と岩田先生は微笑んだのだった。


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