(……げっ)
教頭の声に反応して、丸坊主と金髪オールバックはこちらを向いた。二人が確実にボクを認知したのが分かった。
「あ、あの~」ボクは丸坊主と金髪オールバックをチラッと見てから、教頭に言う。「どうかしましたか?」
「実はですね。この新幹線に『本物の』極悪非道六神獣及び魔王が居るという情報がありまして」
確かに目と鼻の先に居ますが何する気ですか? もしかしてまた銃撃戦でもする気?
「え、ええっと、居たとしたら……どうするおつもりで?」
ボクは金髪オールバックと丸坊主をチラチラ見ながら教頭に言った。
「なあに。ただ血祭りにあげようかと思いまして」
サラッと恐いこと言わないでくれますか?
『ガクガクガクガクガク……』金髪オールバックは全身を震わせる。
ほらああああ。本物の極悪非道六神獣及び魔王の金髪オールバックの人が震えだしてるし――、
『タッタッタッタッタ……』
と、丸坊主は金髪オールバックを置いて颯爽と前の車両に逃げて行ったのだった。
(え、えええええええええええええええええ?)
意外と俊足で丸坊主の人が去っていったんだけど。
綺麗に仲間見捨てたんだけど。
「我が
ヤバいヤバいヤバい。このままじゃ血祭りが始まるって。
あの人フジヨシくんを叩いたことしかないから。
良い人だから。めっちゃ良い人だから。
「ムッ! この殺気は!」
と、教頭は震える金髪オールバックの方に鋭く視線を移した。
ヤバいよこれ、教頭もしかして気づいた?
「前の方角から『奴』の気配がします!」
「え、あの、奴って何ですか?」
ボクは恐る恐る聞いた。
「もちろん本物の極悪非道六神獣及び魔王の気配、ですよ! 向こうの方角に居ると私の中のコスモが言っています!」
コスモってなんですか?
「うーん、しかし今日はコスモのレーダーが不安定だ……。いつもなら誰が何処にいるのかを座標で教えてくれるのですが」
ごめんなさいそのまま壊れていてくださいコスモさん。
「む! この方角……もしかしたら北海道に居るのかもしれません!」
コスモレーダーぶっ壊れすぎでしょ。使いもんになってないよ。
いやまあいいけどね、もうそのまま北海道行ってください。
「おのれ極悪非道六神獣及び魔王! ワタシのコスモレーダーを狂わせるとは、ふざけた真似をををををを!」
それはホントに極悪非道六神獣及び魔王のせいなんですか? 最初からポンコツなだけじゃねコスモレーダー。
「失礼! メガネくん、ワタシはこれからグリーン車でくつろいできます!」
このタイミングで? もしかして探すのめんどくなりました?
「覚悟していてください極悪非道六神獣及び魔王……。いつか色んな角度からワタシの鉄拳をお見舞いしてあげます……」
言いつつ、教頭はグリーン車の方に消えていった。