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第39話 タイミングの悪い教頭(sideM)


(……げっ)


 教頭の声に反応して、丸坊主と金髪オールバックはこちらを向いた。二人が確実にボクを認知したのが分かった。


「あ、あの~」ボクは丸坊主と金髪オールバックをチラッと見てから、教頭に言う。「どうかしましたか?」


「実はですね。この新幹線に『本物の』極悪非道六神獣及び魔王が居るという情報がありまして」


 確かに目と鼻の先に居ますが何する気ですか? もしかしてまた銃撃戦でもする気?


「え、ええっと、居たとしたら……どうするおつもりで?」


 ボクは金髪オールバックと丸坊主をチラチラ見ながら教頭に言った。


「なあに。ただ血祭りにあげようかと思いまして」


 サラッと恐いこと言わないでくれますか?


『ガクガクガクガクガク……』金髪オールバックは全身を震わせる。


 ほらああああ。本物の極悪非道六神獣及び魔王の金髪オールバックの人が震えだしてるし――、


『タッタッタッタッタ……』


 と、丸坊主は金髪オールバックを置いて颯爽と前の車両に逃げて行ったのだった。


(え、えええええええええええええええええ?)


 意外と俊足で丸坊主の人が去っていったんだけど。

 綺麗に仲間見捨てたんだけど。


「我がきよキラの生徒に危害を及ぼしかねませんからね。見つけ次第、元グリーンベレーでもあるワタシがボコボコにしておこうかと」


 ヤバいヤバいヤバい。このままじゃ血祭りが始まるって。

 あの人フジヨシくんを叩いたことしかないから。

 良い人だから。めっちゃ良い人だから。


「ムッ! この殺気は!」


 と、教頭は震える金髪オールバックの方に鋭く視線を移した。

 ヤバいよこれ、教頭もしかして気づいた?


「前の方角から『奴』の気配がします!」


「え、あの、奴って何ですか?」


 ボクは恐る恐る聞いた。


「もちろん本物の極悪非道六神獣及び魔王の気配、ですよ! 向こうの方角に居ると私の中のコスモが言っています!」


 コスモってなんですか?


「うーん、しかし今日はコスモのレーダーが不安定だ……。いつもなら誰が何処にいるのかを座標で教えてくれるのですが」


 ごめんなさいそのまま壊れていてくださいコスモさん。


「む! この方角……もしかしたら北海道に居るのかもしれません!」


 コスモレーダーぶっ壊れすぎでしょ。使いもんになってないよ。

いやまあいいけどね、もうそのまま北海道行ってください。


「おのれ極悪非道六神獣及び魔王! ワタシのコスモレーダーを狂わせるとは、ふざけた真似をををををを!」


 それはホントに極悪非道六神獣及び魔王のせいなんですか? 最初からポンコツなだけじゃねコスモレーダー。


「失礼! メガネくん、ワタシはこれからグリーン車でくつろいできます!」


 このタイミングで? もしかして探すのめんどくなりました?


「覚悟していてください極悪非道六神獣及び魔王……。いつか色んな角度からワタシの鉄拳をお見舞いしてあげます……」


 言いつつ、教頭はグリーン車の方に消えていった。


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